上海合作組織天津峰会閉幕――「天津宣言」と新たな国際協力の潮流
上合組織天津峰会の概要と歴史的意義
2025年9月1日、中国の天津市で開催された上海合作组织(上合組織)天津峰会は、加盟国による第二十五次元首理事会と「上海合作組織+」拡大会議に世界各国の重要人物が参集した大規模イベントでした。習近平国家主席が議長を務め、ロシア、インドを含む二十数カ国の国家元首、国連及び独立国家共同体等の国際機関代表も参加しました。今回の峰会は2001年の上海開催以降、中国では5度目、規模としては過去最大級となりました。
2025年は第二次世界大戦勝利と国際連合設立から80周年という重要な節目に当たります。この天津峰会は、戦争の歴史的教訓と平和の価値を再確認し、各国の連携を深めるうえで特別な意味を持っています。
天津宣言――多極化と新型国際関係への道筋
- 加盟国は「国際秩序の多極化」「公正と平等」の推進を明言
- 地政学的対立の深刻化と世界的な安全保障リスクへの警鐘
- 国際貿易と金融市場の不確実性を背景に、包摂的な経済成長の重要性を強調
- 第二次世界大戦の教訓を銘記し、国連の役割と加盟各国の連携の必要性を再認識
天津宣言では、世界の政治・経済状況が大きな変化の途上にあること、国際社会の多極化が進みつつあること、多くの国々が主権と発展、互恵的な協力の拡大に新たな展望を見出していることが述べられました。また、地政学の不安定化、貿易や金融市場の混乱が安全保障・繁栄への障害になっていることも指摘されました。さらに、各国が「新型国際関係」のモデルを追求し、多様性の尊重、互利協力、法的平等を基盤とした関係性の構築を目指す姿勢が明確に示されました。
加盟国間の協力強化――エネルギー・デジタル分野など
- エネルギー分野での非差別的協力体制の拡充
- 持続可能なサプライチェーン強化、エネルギー産業のレジリエンス向上
- 電子商取引等デジタル領域で共同発展を促進、デジタル格差解消を目指す
- 「2026―2035年戦略」による中長期協力計画の始動
- ラオスの対話パートナー参加が承認され、組織としての包容性が拡大
今後10年間の包括的な成長戦略として、「2026―2035年発展戦略」が採択され、経済、エネルギー、インフラ、デジタル経済など幅広い分野で協力を深める方針が打ち出されました。また、加盟国は広範なエネルギー分野での連携、電子商取引基盤の拡充、サプライチェーンの回復力強化、グローバルなエネルギー市場の安定化に注力していくことを合意しました。特に、デジタル貿易分野では先進国と新興国とのデジタル格差解消の取り組みを重視しています。
さらに、今回の峰会でラオスを新たな対話パートナーとして認定し、上合組織のネットワークはより広がりのある包摂的なものとなりました。
世界のリーダーたちの戦略的対話――ロシア・インド・中国の協調
- ロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相が出席
- ロシア・インドの両大国が中国との協力を模索する姿勢
- 多様な価値観に基づく対話を通じて、域内と国際社会への責任ある貢献
今回の天津峰会にはロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相らが揃って出席したことで、大国間の「協調と競争」の最前線にも注目が集まりました。現在、ロシアとインドという世界有数の隣接大国が、地政学、経済、安全保障等で中国との連携強化を模索している姿も印象的です。これは現代国際政治において、多国間協議の枠組みが果たす役割の重要性を示しています。
ロシアやインドは、単なる地理的隣国という関係性だけでなく、エネルギーや経済協力、安全保障の域内安定においても中国との積極的な意思疎通と協働を目指しています。また、各国が自身の利益だけでなく、広範な地域の発展や国際社会への責任ある行動に重きを置いている点は、国際協調の新たな潮流と言えるでしょう。
「上海精神」と新型国際関係の理想――協力、信頼、多様性
- 「上海精神」に基づく相互信頼、平等、協商、文化多様性の尊重
- 世界の分断や対立ではなく、共存・協力の道を模索
- 「人類運命共同体」の実現に向けて次世代への責任強調
- 全方位・多層的協力の拡大に向けた組織の進化
上合組織はその創設以来、「上海精神」――相互信頼、互恵協力、文化多様性の尊重、平等と協調という原則を堅持してきました。加盟国は、それぞれの歴史や文化背景を踏まえつつ、グローバル規模での平和・安定・持続可能な発展を目指すための多層的な協力関係構築を続けています。
天津峰会はこうした「上海精神」がいかに現代的に展開されているかを示す場となりました。世界的な分断や対立が顕著な現在において、「人類運命共同体」という理念のもと、対話と協力による新型国際関係の模索が強く打ち出されたのです。さらに、持続的な安全・経済成長の確保、域内外の課題解決、新興国包摂拡大などを通じて、国際社会への責任ある貢献を一層明確にしました。
今後への展望――健全な協力からグローバルガバナンスへ
- 「天津宣言」や新戦略に基づき、多極化時代の国際秩序構築を牽引
- 多国間協議の枠組み深化と地域・世界への安定的貢献
- 新たな対話パートナーの拡大による包摂的な組織発展
- デジタル経済を中心とした先進分野での連携深化
上合組織は「天津宣言」や今後10年の戦略的取り組みを通して、アジア・ユーラシア地域ひいてはグローバルな安全保障・経済成長の新たなイニシアティブとなることを目指しています。国際社会の分断や競争の激化という現実に対し、対話・協力・包摂を基礎とする健全な発展モデルの拡大を牽引し、多極化時代のガバナンス体制の進化に向けてリーダーシップを発揮していく姿勢が鮮明です。
今後はラオスのような新たな対話パートナー国を迎え入れながら、多国間協調を軸としたより安定的な世界秩序づくりに貢献していくことが期待されています。デジタル・グリーン分野等の先端領域での協力は、全加盟国・参加国に新たな発展の機会をもたらします。天津峰会はその出発点として、未来に向けた明るい展望を示すものとなりました。
まとめ――天津峰会が照らす国際社会の未来像
- 「天津宣言」による新たな協力方針――多極化と持続可能な発展
- ロシア・インド・中国など主要国が域内外協調強化を明示
- 「上海精神」に基づき包摂性と多様性を尊重する国際関係モデルの構築
- 地域安定化とデジタル・エネルギー分野の協力深化による新しい可能性
本峰会は上合組織の発展志向と国際協調の未来像を強く打ち出すものとなりました。各国が相互理解と平等、協調による多層的な連携を築くことで、グローバルレベルでの安定と発展に貢献することが期待されています。今後も「天津宣言」や新戦略が指し示す道筋に沿い、国際社会に健全な秩序と持続的な成長をもたらすための対話と協力が続けられていくでしょう。