東京都議会で議論沸騰中!東京23区の火葬料金高騰と小池都知事の対策

はじめに

東京23区の火葬料金が近年、他の地域と比べて著しく高騰していることが大きな社会問題になっています。「他の自治体は無料なのに、なぜ東京23区だけこんなに高いのか?」という声が多くの市民や遺族、議会関係者から上がっています。2025年10月、東京都議会でも火葬料高騰が大きな議題となり、小池百合子都知事は国に法改正を要望する方針を明らかにしました。本記事では、この背景や理由、関係者の声、現場の状況、今後の対策について、わかりやすく、やさしい言葉で詳しく解説します。

東京23区の火葬料金、なぜこんなに高いの?

  • 現在の火葬料金の水準
    東京23区内での火葬料金は約9万円に上り、横浜市(約1万2000円)、さいたま市(約7000円)、大阪市(1万円)、さらに札幌市や前橋市のように無料という都市もあります。他の自治体と比べても、東京23区の料金は突出している状況です。
  • 高騰の大きな理由
    東京23区は全国的に見ても珍しく公営火葬場が非常に少ない(9カ所中2カ所のみ)。そのため7カ所が民間企業による運営となっています。全国の火葬場の約97%が公営である一方、東京23区は過去に民間業者が運営を継続できた経過措置によって民営中心の体制となってきました。
  • 民営火葬場の経営事情
    民営火葬場では「燃料費の高騰」「人件費増」「新規雇用や修繕のための積立金増加」などを受けて、近年料金が次々に値上げされています。特に主要民間運営会社である『東京博善』は、経費増加を理由に区民向け割引制度(区民葬)から脱退し、市民への負担が重くなっています。
  • 公営化難航の背景
    東京23区は人口が非常に集中しており、土地利用の制約や近隣住民の理解の難しさなどから、新たな公営火葬場の増設が極めて困難です。そのため、慢性的に民間依存が続き、高コスト構造が固定化されているのが現実です。

料金値上げのインパクトと遺族の声

  • 区民や遺族の負担増
    多死社会へと向かうなか、火葬は誰にとっても避けて通れない「人生最後の公共サービス」ですが、高額な料金は特に経済的な余裕のない高齢者や遺族への大きな負担になっています。70代の女性は「年金でやっていけない、死ぬにも死ねない」と実感を語り、子育て世代やシングル世帯にも重く響いています。
  • 「値切れない」特性と困惑
    火葬は必ず必要なものであり、他の選択肢がないため「値切るわけにはいかない」という現実に市民は苦しんでいます。「他は無料なのに…」という比較意識も強まり、不公平感が広がっています。

東京都議会と小池知事の動き

  • 議会での代表質問と全会一致の問題意識
    2025年9月末に行われた都議会の代表質問では、与野党問わず5人の都議全員がこの問題を取り上げ、「速やかな是正」を要望しました。自民党の小松大祐議員は「生活全般にわたる物価高騰のなか、火葬料金に対する市民の不安と不満が高まっている」と指摘。立憲民主党の竹井庸子議員も「多死社会で誰もが避けて通れない費用が高すぎる」と訴えました。
  • 小池百合子都知事の答弁と調査方針
    小池都知事は「安定的な火葬体制確保のため、区と連携し指導強化」、さらに「今後必要な法改正も含めて国に要望する」方針を表明。また、都内全ての火葬場で実態調査を実施する方針も示しました。
  • 国政への働きかけ
    都議会と区長会は厚生労働省や関係省庁へ積極的に実態を訴え、迅速な法改正による「公営火葬場の増設」や「民間施設への規制・補助強化」を求めています。

火葬インフラの現状と民営化の傷跡

  • 23区の火葬需要
    現在、東京都23区では年間約9万人が亡くなっており、1日でおよそ300人分の火葬が必要とされています。しかし2カ所しかない公営火葬場は、1日およそ65人分までしか対応できません。つまり残りの大多数が民間火葬場に頼らざるを得ない状況なのです。
  • 民間依存による価格高止まり
    経過措置として残っている民間火葬場は、新しい公営火葬場が増えない以上、競争原理が働きにくく、どうしても値上げに歯止めがかかりません。運転費用が上がれば、直接的に利用者への負担が跳ね返る体質です。

各地の火葬料金比較と全国的な公平性問題

  • 主要都市の火葬料金
    • 横浜市:約1万2000円
    • さいたま市:約7000円
    • 大阪市:約1万円
    • 名古屋市:約5000円
    • 札幌市・前橋市など:無料
    • 東京23区:9万円

    全国的に見ても東京23区の高さは際立っています。

  • 公営主体の自治体とのギャップ
    公営火葬場が標準の自治体では運営費用の一部を税金などで賄うことが多く、「財政体力」や「社会的セーフティネット」として機能しています。そのため、東京23区と近隣他県・都市との格差が市民の不満や行政間の摩擦を生んでいます。

関係者・現場から見た課題

  • 葬祭業界の思い
    東京都葬祭業協同組合の鳥居理事長は「そもそも公営火葬場が不足しているのが根本」と強調しています。
  • 葬儀会社からの説明
    最大手「東京博善」も「経費増と安定運営のための積立が値上げ要因」と説明し、今後も公的支援の必要性を訴えています。

今後の対策と議論の論点

  • 短期的な行政の対応
    東京都は区と連携して価格管理の指導を強化。すでに今年度中に全区火葬場について公正な実態調査を開始しています。今後も民間運営施設への監督を強めていくとしています。
  • 中長期的な打開策
    都議会や区長会、厚労省は次の点を論点としています。

    • 公営火葬場の建設推進(規制緩和や土地利用計画の見直し)
    • 民間事業者への補助強化や料金指導の厳格化
    • 火葬に係る経済的支援制度(補助金や助成金)の拡充
    • 納得感のある価格設定と情報公開の徹底
  • 利用者支援と情報強化
    高齢者や低所得世帯向けの特別割引や支給制度の実施、市民向けの説明会やパンフレット配布など、わかりやすい情報提供の重要性も高まっています。

まとめ

東京23区の火葬料金がなぜここまで高騰しているのか——その理由は、民間運営の比率の高さ、公営増設の難しさ、近年の経費高騰、合理的な競争原理の働きにくさといった複雑な背景にありました。住民や遺族への実際の負担が大きくなるなかで、東京都議会や小池知事による法改正の要望や監督強化の動きは、今後の議論と対策の大きなカギとなっています。

今後もこの問題が都民一人ひとりの「安心につながる公共インフラ」として、納得感のある形で改善されるよう、都議会や行政、関係者には一層の議論と迅速な行動が求められます。

参考元