モルドバで重要な議会選挙、親欧米与党が過半数維持へ

2025年9月、東ヨーロッパに位置するモルドバ共和国において、国の将来を左右する重要な議会選挙が行われました。今回の選挙では、親欧米路線を掲げる与党「行動と連帯党(PAS)」が過半数を維持し、同国を欧州連合(EU)への道へと導く方針が確かなものとなりました。一方、親ロシア野党勢力は選挙の正当性に異議を唱え、抗議活動を展開しています。加えて、ロシアによる偽情報拡散や選挙干渉の疑いも浮上し、国内外から多くの注目を集めました。

選挙結果の概要と市民の選択

  • 行動と連帯党(PAS)は、全体の50%を超える得票率を得て、101議席中54議席を確保する勢いを見せています。
  • 親ロシア派「愛国者ブロック」の得票は25%未満にとどまり、前回よりも支持を減らしました。
  • 投票率は52%と、近年にしては高い水準。市民の政治への関心と危機感がうかがわれます。

サンドゥ大統領は選挙後、「今回の勝利によってモルドバがEUへの道を歩み続けることが保証された」と勝利宣言を行いました。近年、同国の市民は腐敗や経済不況とともに、ウクライナ戦争に伴う地政学的不安を背景に欧州志向を強めています。

ロシアの選挙干渉と偽情報拡散への対策

選挙戦終盤には、ロシアによる干渉や偽情報拡散の動きが顕著となりました。サンドゥ大統領は、投票前から「ロシアによる大規模な介入」を警告し、警察当局も前例のない規模のフェイクニュース拡散や票の買収工作の存在を公式に報告しています。

  • BBC調査により、親ロシア的なプロパガンダやフェイクニュースをSNS等で拡散し報酬を得るネットワークの存在が明らかにされました。
  • 警察は国外勢力関与の疑いで暴動を計画していた容疑者を逮捕し、また選挙直前には投票所への爆破脅迫が相次いで報告されました。

こうした情勢を受けて、サンドゥ大統領は国際社会への知見共有の意向を示し、偽情報対策や選挙妨害への経験を他国と連携していく姿勢を強調しました。実際モルドバは、近年のデジタル偽情報・ハイブリッド戦対策の最前線に立つ事例として国際的な注目を集めています。

与党勝利の意味と今後の展望

今回の選挙結果は、欧州志向を鮮明にする市民の意思が再確認されたものです。サンドゥ大統領率いる与党の勝利は、EU加盟実現に向けた推進力を高めただけでなく、旧ソ連圏における「脱ロシア化」の象徴ともなりました。

  • 行動と連帯党は、「オルタナティブ・ブロック」や「我が党」など他党の支援がなくとも政権樹立が可能な状況となっています。
  • 議会主導による司法改革、腐敗対策、経済近代化といったEU加盟の前提条件達成への取組みも一層加速する可能性があります。

一方、親ロシア派野党指導者イゴール・ドドン氏は、選挙結果発表前から勝利を宣言しつつ、議会前で抗議行動を呼びかけました。しかし、「国民が大記録で投票した以上、その意思は尊重されなければならない」と、不安定化の防止を訴えています。ただし、親ロシア連合の一部党は違法な資金調達の疑いで選挙から除外されていました。

高まる緊張と市民社会の成熟

選挙を巡る緊張の高まりは、投票日前後の事件として

  • イタリア、ルーマニア、スペイン、アメリカの在外投票所での爆弾脅迫
  • モルドバ国内での暴動計画容疑による逮捕

に象徴されます。

それでも市民は冷静に投票に臨みました。「忍耐と冷静さ」を求めた与党幹部の呼びかけもあり、接戦が予想された前回選挙と比較して、今回は明確な与党勝利が鮮明となりました。市民社会の成熟ぶり、そして「欧州の一部になりたい」という国民の願いが浮き彫りになったと言えるでしょう。

東欧情勢とモルドバの意義

モルドバはウクライナやルーマニアと接する地政学的に重要な場所にあり、現在も親欧米・親ロシア勢力の綱引きが続いています。2022年のウクライナ侵攻以降、ロシアの影響力排除・民主主義強化を志向するモルドバの選択は、近隣諸国や欧州各国はもちろん、世界の民主主義体制維持にも波及効果をおよぼしています。

今後はEU加盟に向けた一層の制度改革と、経済的自立に向けた支援が国際的に求められるでしょう。ロシアによる混乱狙いの諜報・工作活動やフェイクニュース攻撃は今後も続く見通しですが、今回の経験を活かして、モルドバは「ハイブリッド脅威に強い民主国家」のモデルを目指しています。

まとめ:未来への希望、危機との共存

2025年9月のモルドバ議会選挙は、困難な情勢下で民主的意思決定とEU志向への強い志を示した歴史的出来事となりました。親欧米与党は過半数を維持し、ロシアによる選挙干渉や偽情報攻勢を押し返しました。サンドゥ大統領は「EUへの道のりが保証された」と明言し、市民の不安や分断を乗り越えた姿勢が印象的です。
引き続き国内外の様々な課題や脅威に直面するものの、国民の希望と覚悟が「新しいモルドバ」の夜明けを告げています。強まる民主主義、防御力向上、そしてヨーロッパ共同体への道―この歴史の画期を、世界は注視しています。

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