高市首相の台湾有事答弁が呼ぶ波紋――政権支持率高止まりと日中関係の行方

2025年11月、高市早苗首相の「台湾有事」に関する国会答弁が、日本国内外で大きな反響を呼んでいます。
この発言を巡る世論調査結果と、中国からの強い反発、世論や専門家の受け止め、そして今後の政権運営や日中関係への影響について、わかりやすく解説します。

高市首相の台湾有事「集団的自衛権行使」答弁とは

2025年11月、高市早苗首相は国会にて「台湾有事となれば、日本が集団的自衛権を行使できる可能性もある」と答弁しました。
この発言は、日本の安全保障政策の枠組みや政府の対中姿勢を示唆する重要なものであり、国内外で議論を呼ぶこととなりました。

世論調査――高市政権の支持率は高水準で推移

  • 高市政権の支持率は発足1カ月後も75.2%を維持し、国民の期待感は依然として高い水準にあります。
  • 「台湾有事」答弁について「適切だ」と答えた人は22.6%、「どちらかと言えば適切だ」とした人は38.4%で、合わせて6割超が一定程度の理解を示しています。
  • 一方、「問題がある」とみる人も少なくなく、「発言が日本の安全保障や外交関係へ与えるリスク」についての懸念が浮かび上がりました。

また、中国の大阪総領事がSNSで不適切表現を発信したことに対し、「国外退去処分をすべき」と考える人が29.5%、「抗議伝達のみで十分」と考える人が35%と、処分の在り方でも意見は割れています。

世論調査結果が示す国民の「割れた感情」

高市首相の発言以降、日本と中国はかつてないほど「一触即発」の雰囲気となりました。FNNの調査では、「日中関係が緊張している状況を心配している」と答えた人が49.3%でしたが、「心配していない」と答える人も49.9%と拮抗しています。

この状況について、浜田敬子氏(ジャーナリスト)は「分かって言っているのか」と危機感を示しました。台湾情勢の微妙さや、中国側の反発、そして日本経済や安全保障への影響力が複雑に絡み合っていることに対し、「政府首脳の発言としてはあまりに軽率ではないか」と疑問を呈しました(日刊スポーツ)。

また、毎日新聞の世論調査では「高市首相の台湾有事発言には問題あり」と考える人が25%いたことが報じられています。これは決して少ない割合ではなく、冷静な安全保障政策の策定や言葉の選び方の重要性を示しています。

中国の激烈反発とその背景

高市首相の答弁に対し、中国政府、特に習近平国家主席は極めて強い怒りを示しました。
中国の大阪総領事がSNSで日本政府を批判する事態となり、外交問題へと発展しています。「なぜここまで中国が強く反発するのか」――その背景には、次のような「3つの深刻事情」があると分析されています。

  • 1. 中国国内の政権基盤の不安定化:経済減速や若年失業率の上昇など、習近平政権の足元が揺らいでいます。外敵を意識づけることで、国内の矛先を外に向ける狙いがあります。
  • 2. 台湾問題のナショナリズム化:台湾は中国本土の「核心的利益」と位置づけられ、指導部の威信がかかっているため、外部からの「干渉」は絶対に許容できません。
  • 3. 日本の安全保障体制変化への警戒:日本が集団的自衛権の行使に踏み込めば、米国と連携した軍事的包囲網が構築されるという観測から、警戒感が一気に高まっています。

このため、高市首相の一言が中国外交にとって「レッドライン」を越えた挑発行動と受け取られ、強烈な抗議につながっているのです。

今後への影響――政権運営と日中関係

高市政権は発足直後から高い支持率に支えられていますが、外交・安全保障分野、とくに対中政策をめぐり、国内世論はいま大きく二分されています。以下の点が今後の注目点です。

  • 安定政権の行方:高水準の支持率を背景に、政権運営は現時点では安定しているものの、「台湾有事」や日中関係など、現実の外交問題では一つの発言が重大な禍根となるリスクもはらみます。
  • 世論の推移:FNN調査では、内閣支持率や外交姿勢に対して国民の容認度は高いものの、中国の反発や東アジア情勢の不安定要素が重なることで、今後の支持率には変動の可能性もあります。
  • 衆院解散・総選挙への影響:早期解散・総選挙への支持は「しない」派が「する」派を上回り、慎重に政権運営を進めるべきと考える声も根強いです。

専門家の指摘と国民への呼びかけ

今回の事態を受け、浜田敬子氏をはじめ複数の識者は、「言葉が持つ重み」と「外交・安全保障政策の責任」について警鐘を鳴らしています。
「日本の首相の一言は、国際社会にとっては国の意志と受け取られる。それが台湾有事という微妙な状況下であればあるほど、発言の解釈が誤ったメッセージとなり、地域の緊張を高める危険がある」と指摘します。

さらに、国民には「単なる安全保障や外交の議論に終始せず、経済や市民生活への波及効果、アジアの平和と安定に資する道とは何か」を冷静に見極めて意思決定に参加してほしいと呼びかけています。

まとめと展望――冷静な議論の重要性

高市政権の発言力、対中姿勢は新たな政策転換を示唆していますが、その影響力の大きさと、「発言が及ぼす波紋」にどう向き合っていくかが問われます。

日本が国際社会で信頼と存在感を維持するためには、政権の外交メッセージの発信や、国内世論の多様な意見を反映した議論の質が一層重要になります。政権・国会・メディア・有識者が連携しつつ、冷静かつ現実的な安全保障と外交を構築していくことが、2025年の日本に求められています。

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