高市首相の「労働時間規制緩和」方針に社会が揺れる――6年目の働き方改革と新たな波紋
「これ以上は耐えられない」――現場の不安と声
2025年10月、高市早苗首相による労働時間規制緩和の検討指示が、日本社会に大きな波紋を広げています。
ちょうど「働き方改革関連法」施行から6年。“長時間労働の是正”を目指してきた日本のワークスタイルに、再び大きな転換点が訪れています。
今回の政府方針には、「これ以上は働き続けられない」「また過労死が増えるのでは」と不安の声が噴出しています。
過労死問題に取り組む遺族も強く反発し、
「働き方の自由とか、労働時間を緩める政策は絶対にしないで欲しい」と訴えています。
心身を壊し、命まで奪う長時間労働——日本社会の痛ましい過去が、今あらためて危惧されています。
労働時間規制のしくみ――そして高市政権の方針
2019年より「働き方改革関連法」により時間外労働の上限は原則“月45時間・年360時間”と定められ、
一定の特別な事情がない限り、明確なルールで運用されてきました。
「サービス残業」「隠れ残業」といった行為が問題視され、法施行とともに抑制されてきた歴史があります。
しかし、高市首相は「心身の健康維持」と「従業者の選択」を前提とした上で、労働時間規制の緩和を検討するよう厚生労働大臣に指示しました。
「ワークライフバランスという言葉を捨て、働いて働いて働いて参ります」と自らの決意を明言し、改革の旗を振っています。
賛否入り混じる社会の反応――世論調査の結果は?
- 賛成:64%
- 反対:24%
世論調査では賛成が64%、反対が24%と「ある程度の規制緩和は必要」と考える層が多数を占めています(出典:ニュース内容3)。
一部の人々は、
「隠れ残業がなくなり、明るみに出るのなら賛成」
「もっと働ける人や、柔軟な働き方を求める人にチャンスが広がる」
と、前向きに受け止める声も少なくありません。
一方で、
「これまでの働き方改革が水の泡では」
「企業の都合で際限なく働かせられるのでは」
と、警戒と反発も根強く共存しています。
霞が関・官僚の戸惑い――公務員の働き方に迫る影響
規制緩和の議論は、“民間企業”だけでなく霞が関で働く公務員にも直撃しています。
特に中央省庁では近年、長時間労働や「隠れ残業」「深夜労働」の常態化が社会問題に。
働き方改革の追い風を受けて業務見直しや人員削減が進められてきましたが、
今回の緩和方針を受けて
「また激務に逆戻りでは」
「労働時間が戻れば志望者が減って国力低下につながる」
との懸念の声が出ています(ニュース内容2)。
なぜいま「緩和」なのか――高市政権の真意と経済界の要請
高市政権は「経済の立て直し」と「深刻な人手不足」の解消を最優先課題に挙げています。
特に成長分野やスタートアップ企業からは、
「既存の残業規制がイノベーションや柔軟な働き方の足かせになっている」
との切実な声が根強くありました。
「経済成長“エンジン”としての規制緩和」
という位置づけで、
意欲ある人がもっと働けるように
働きたい人・会社に“働く選択権”を広げ、
新しい働き方へと社会を進化させる——。
そうした狙いが背景にあると言われています。
「みんな馬車馬のように働いてもらう」との首相発言は“政治家中心”の決意とも受け取られていましたが、
現実に検討が始まった今、「やはり働き方ルールが緩むのか」と懸念や混乱も生まれています。
今後の論点と必要な条件──“自己決定権”は守られるか
労働法の専門家は次のような条件が不可欠だと指摘します。
- 「心身の健康維持」を厳格に守る(勤務間インターバル=必ず11時間空ける等のルールを作る)
- 働き方の「自己決定権」を誰もが持てる仕組み作り(交渉力や事情の違いを乗り越えるためのルール)
- 「ジョブ型」雇用の普及(何時間働いたかでなく、成果で評価。労働者本人が働き方や時間・場所をコントロールできる体制)
- 健康被害や過労死への歯止め策の徹底
「残業規制を緩める」=「長時間労働が当たり前に戻る」という単純な図式を避けるためにも、
新時代のルール整備と、すべての労働者への十分な説明・保障が何より求められています。
働く現場の声――多様な思いと期待・不安
- 「このまま残業が増え続けるなら、本当に倒れてしまう」
- 「いまの規制では副業や複数の収入源が制限されてしまう。柔軟な働き方がしたい」
- 「『働かされる』のでなく、『自分が選ぶ』という仕組みができるなら賛成」
- 「過労死を二度と繰り返さない安心を、どう保証できるのかが最大の課題」
多くの現場の声には、「働きすぎる不安」と「働きたいのに働けない現状」双方の悩みが見え隠れします。
政府の方針が、全員の幸せな働き方につながるのか、それとも不安ばかりが積み重なるのか。
“法改正”に向けた議論はこれから本格化します。
今後の見通し――審議会・国会論争へ
今後は厚生労働省による現状点検・有識者審議会での議論を経て、閣議や国会での法改正論争が本格的に始まります。
「現場の声」「健康被害対策」「イノベーション促進」といった多様な課題が、今後の制度設計の最大焦点となるでしょう。
高市首相の強いリーダーシップのもと、政府発の“働き方ルール再編”がどこまで進み、そして現場はどう変わるのか。社会全体が固唾を呑んで成り行きを見守っています。



