バイデン氏を「史上最悪」と酷評 ホワイトハウス歴代大統領展示で波紋

米ホワイトハウスに設けられた歴代大統領の肖像展示で、ジョー・バイデン前大統領について「アメリカ史上ずば抜けて最悪の大統領だった」とする極めて辛辣な説明文が新たに設置され、アメリカ国内外で大きな波紋を広げています。

ホワイトハウス通路に並ぶ「歴代大統領」展示とは

ホワイトハウス西棟前の廊下には、アメリカの歴代大統領の肖像を並べた「プレジデンシャル・ウォーク・オブ・フェイム(大統領の名誉の歩道)」と呼ばれるコーナーがあります。
ここには金色の額縁に収められた大統領たちの肖像が並び、いわば「歴代大統領ギャラリー」として、訪問者にアメリカ政治の歴史を象徴的に示す場となっています。

この展示はトランプ政権下で整備が進められ、2025年9月には、廊下に沿って肖像がずらりと並ぶ様子が公開されました。
当初は主に肖像画(または写真)が中心でしたが、その後、各大統領の業績などを解説するプレート(説明板)を追加する構想が進み、今回、その説明文が一斉にお披露目された形です。

バイデン氏への説明文:「断トツで史上最悪の大統領」

新たに設置された説明板のうち、最も注目を集めているのがバイデン前大統領に対する記述です。
説明文には、次のような内容が盛り込まれていると報じられています。

  • 「眠そうなジョー・バイデンは、アメリカ史上ずば抜けて最悪の大統領だった」
  • 「断トツでアメリカ史上最悪の大統領だった」
  • 「史上最も腐敗した選挙の結果就任したバイデンは、国を破滅の淵に追い込み、前代未聞の惨事を招いた」

いずれの表現も、事実の検証よりも強い価値判断と政治的主張が前面に出ており、外交儀礼上も極めて異例なまでに攻撃的なトーンとなっています。
歴代大統領の紹介展示は本来、功績と歴史的役割をバランスよく伝えることを目的とすることが多いですが、今回の説明板は、バイデン氏を徹底的に貶める内容となっている点が特徴です。

肖像に「オートペン」の写真 認知力を揶揄か

バイデン氏への扱いは、説明文だけではありません。
この展示では、バイデン氏の肖像だけが、他の大統領と明らかに異なる形になっていることも、以前から物議を醸していました。

多くの大統領が本人の肖像画や写真で紹介される中、バイデン氏の位置に掲げられているのは、本人の顔ではなく自動署名装置「オートペン」の写真です。
オートペンは署名を自動で複製する機械で、大統領令などの署名に使われることがあり、バイデン政権でも使用が話題になったことがあります。

トランプ政権は、この「オートペン」の写真を使うことで、バイデン氏の認知力の低下や、自ら判断せず側近任せで政治を行ったのではないか、という揶揄を込めているとみられています。
実際、日本の報道でも「認知力の衰えをやゆ」する意図があると指摘されており、単なる展示の工夫というより、政治的な攻撃表現の一部として捉えられています。

オバマ氏には「最も分断を生んだ政治家」

今回の説明板は、バイデン氏だけでなく、他の民主党出身の大統領に対しても厳しい表現を用いています。
とくに、バラク・オバマ元大統領への記述は次のようなものです。

  • 「バラク・フセイン・オバマは、初の黒人大統領で、米国史上最も分断を招いた政治家のひとりだった」
  • 「アメリカ史上、最も分断を生んだ政治家のひとり」

オバマ政権の代表的な政策である医療保険制度改革(いわゆるオバマケア)や、気候変動対策に関するパリ協定への署名などについても、説明板では好意的ではなく、批判的な文脈で言及されているとされています。
オバマ氏は支持層と批判層の分断がはっきりしていた大統領でもありますが、「分断を生んだ」という評価を、ホワイトハウス公式の展示物に近い形で刻み込むことは、通常の歴史展示とは一線を画す対応と言えます。

クリントン氏・ブッシュ氏も「皮肉交じり」の記述

説明板の「攻撃的なトーン」は、民主党だけを狙っているわけではありません。
報道によれば、共和党出身の大統領に対しても、皮肉を込めた表現が散りばめられています。

ビル・クリントン元大統領の説明板では、政策面の功績に触れつつも、最後に「2016年、クリントン大統領の妻ヒラリーは、大統領選挙でドナルド・J・トランプ大統領に敗北した!」と強調されており、トランプ氏の勝利を誇示する一文が添えられています。
一方、ジョージ・W・ブッシュ元大統領については、アフガニスタン戦争やイラク戦争に厳しい目を向け、「いずれも起こるべきではなかった」と批判する文面が含まれているとされています。

このように、説明板全体を通して、歴代大統領を歴史的に評価するというより、トランプ氏の視点や感情を強く反映した「政治的コメント集」に近い性格を持っていることがわかります。

トランプ大統領自身の説明文は「自画自賛」一色

対照的なのが、現職のドナルド・トランプ大統領(第47代)自身についての説明板です。
報道によると、トランプ氏のプレートには、次のような主張が列挙されています。

  • 2024年大統領選挙での勝利を大きく打ち出す内容
  • 「2度の暗殺未遂」にもかかわらず勝利したとアピール
  • 「法執行機関が同氏に対する武器として利用された前代未聞の事態」を克服したと主張
  • 戦争を終わらせ、国境を守り、ギャングを国外追放し、「アメリカの黄金時代」をもたらしたと強調
  • 就任から11カ月で公約を果たしたと自賛

内容は、トランプ氏自身のSNS投稿を思わせる誇張的で自己肯定的なトーンで書かれており、他の大統領への辛辣な評価とのギャップが際立つ形となっています。
ホワイトハウス報道官は、この説明板について「歴史を学ぶ学生として、多くは大統領自らが書いた」と説明しており、トランプ氏が直接、または強く関与している可能性が示唆されています。

説明板のねらい:歴史展示か、政治的プロパガンダか

今回の説明板について、ホワイトハウス側は「良い大統領、悪い大統領、その中間あたりの大統領に敬意を表する」ために設置したと説明しています。
しかし、その具体的な文言を見ると、「敬意」というより、トランプ氏の政治的ライバルに対する強い批判や嘲笑が前面に出ている印象を受けます。

特に、以下の点が批判や議論の的になっています。

  • バイデン氏を「史上最悪」と断じるなど、極端な価値判断を公式展示が採用していること
  • バイデン氏に本人の肖像ではなくオートペンの写真を使い、人格や能力を揶揄していること
  • オバマ氏らへの表現が、人種やイデオロギーの対立を強調し、「分断」を増幅しかねないこと
  • トランプ氏自身の説明だけがきわめて肯定的で、政治的宣伝色が濃いこと

本来、歴代大統領の展示は、政権交代を超えて「国家の歴史」を俯瞰する場として機能することが期待されます。
しかし、今回の説明板は、現職大統領の政治的メッセージを強く反映した内容となっており、「歴史展示」というより、トランプ政権による一種のプロパガンダ(政治的宣伝)ではないかという見方も出ています。

アメリカ社会の「分断」を映し出す出来事

こうした説明板の内容は、現在のアメリカ政治が抱える深い「分断」を象徴しているとも指摘されています。
トランプ氏とバイデン氏は、2020年大統領選挙、2024年大統領選挙を通じて激しく対立してきたライバルであり、その支持基盤も大きく異なります。

トランプ氏は、長年にわたりバイデン氏を「スリーピー・ジョー(眠そうなジョー)」と呼び、認知力や指導力を繰り返し攻撃してきました。
今回の説明板は、そうしたレッテル貼りを、ホワイトハウスという「国家の象徴空間」の中にまで持ち込んだ形となっています。

また、オバマ氏を「分断を生んだ」と非難しつつ、自らの説明板では「アメリカの黄金時代」をうたう構成は、トランプ氏支持者と反トランプ派の間にある認識のギャップを浮き彫りにしています。
支持者から見れば「真実を語る展示」、批判者から見れば「偏った歴史の書き換え」と映りかねない内容であり、この展示そのものが、さらに新たな政治的対立の火種になりつつあります。

今後の焦点:展示の見直しはあるのか

現時点で、ホワイトハウスがこの説明板を修正したり、撤去したりする動きは報じられていません。
むしろ、報道官の発言などからは、トランプ政権側が「意図的に強い表現を用いている」ことがうかがえます。

しかし、歴代大統領やその関係者、あるいは歴史学者や教育関係者から、どのような反応が出てくるのかは、今後の重要なポイントとなりそうです。
特に、ホワイトハウスという公的空間における歴史展示が、どこまで現職大統領の政治的メッセージに左右されてよいのか、という根本的な問いが改めて突き付けられています。

今回の「バイデン氏は史上最悪」とする説明文は、単なる「悪口」や「皮肉」を超え、アメリカ社会が抱える分断と対立、そして歴史の語り方をめぐる新たな論争の出発点となるかもしれません。
今後の議論や対応を見守る必要がありそうです。

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