自民・維新の衆院議員定数1割削減案が浮き彫りにする課題

自民党と日本維新の会が進める衆院議員定数の1割削減について、具体的な削減内容が明らかになってきました。小選挙区25議席、比例代表20議席の計45議席削減を軸とする案では、現在の定数465人から420人へと大幅に削減されることになります。この改革案に対し、政界からは様々な意見が上がっており、政治制度改革の在り方を巡る議論が活発化しています。

削減案の詳細と地域への影響

自民党の試算によれば、アダムズ方式に基づいた議員定数削減は全国20の都道府県に影響を与える可能性があります。最も削減幅が大きいのは東京都で3議席の削減が見込まれており、大阪府を含む複数の都道府県では2議席の削減となる見通しです。

この削減方式は2020年の国勢調査に基づいており、人口動態の変化に応じた議員定数の配分が行われます。しかし地域によっては大幅な影響が生じることから、地元選出議員からの反発も予想されています。

政府の基本的な考え方

自民党の政治制度改革本部は11月25日の総会で、衆院議員定数1割削減に関する基本的な考え方をまとめました。現行の定数465人から1割の削減を目標に、議員立法の提出に向けた協議を与野党で進めることを確認しています。

検討機関は衆議院議長の下に設置される各会派参加の協議会となり、1年以内に具体的な定数削減について結論を得ることが定められています。法案では、1年以内に結論が出ない場合に自動的に削減が発動される仕組みも盛り込まれており、改革の実行性を担保する工夫がなされています。

1票の格差拡大への懸念

議員定数削減の実施に伴う懸念の一つが1票の格差の拡大です。小選挙区の削減幅が比例代表よりも大きい場合、人口が多い都市部での1票の重みがさらに軽くなる可能性があります。これは民主主義の基本原則である「等価性」に関わる重要な問題として認識されています。

特に、日本維新の会が比例代表の削減を重視する立場を示している一方で、自民党内からも「現行の選挙制度を維持するか見直すか、抜本的な制度改正か、いずれかの選択肢を慎重に検討すべき」との意見が上がっています。

自民党内からの異論と公明党の対応

削減方針の進め方に対しては、自民党内からも反発の声が上がっています。岩屋前外務大臣は「対話する姿勢を欠いている」として、1年以内に結論が出ない場合に自動的に削減が発動される条文の削除を求めています。

また公明党の安住淳幹事長は12月1日の記者団取材で「そもそもなぜ1割削減なのか、なぜ1年という期間なのかについて説明を聞かせてもらいたい」とコメント。小選挙区25、比例区20という数字の根拠について「聞かせてもらわないといけない」と述べ、法案提出後に丁寧な議論を進める考えを示しています。

改革推進派と慎重派の意見対立

議員定数削減を巡っては、改革推進派と慎重派の間で深刻な意見の相違が生じています。日本維新の会は、議員定数削減は自民・維新の両党の合意だけで実現できるとの立場を示しており、スピーディな改革実行を目指しています。

一方、日本保守党の百田尚樹代表は、この削減方針に対して「理由が不明確」と批判。高市早苗首相の姿勢についても「振り回される高市さんも情けない」とコメントするなど、改革の根拠と進め方に対する疑問が呈されています。

三権分立の観点からの指摘

超党派議員連盟は三権分立の観点から、議員定数削減については衆議院議長の下の「選挙制度に関する協議会」で議論を進めるよう求めています。これは、与党だけの判断ではなく、各会派が等しく参加する形での議論が重要であるという認識に基づいています。

高市首相も11月4日の所信表明演説で「議員定数削減については各党各会派の幅広い合意が必要」と述べており、手続面での配慮の必要性を認識している姿勢が伺えます。

今後の展開と課題

衆院議員定数削減は、高市政権が日本維新の会と連立協力関係を結ぶ際の重要な条件となっており、政権の重要課題として位置付けられています。臨時国会中の議員立法提出が目指されていますが、与野党協議を含む慎重な検討プロセスが求められている状況です。

削減規模、地域への影響、1票の格差拡大への対応など、多くの課題が残されており、今後の与野党間の協議がどのように進展するかが注視されています。議員定数削減という政治制度改革が、国民の民主的な代表選出という根本的な原則とどのようにバランスするのかが、重要な検討テーマとなっています。

現在のところ、1年以内に具体的な削減方法について結論を得る予定となっており、この過程での丁寧な議論と透明性の確保が、改革の正当性と実行性を左右する鍵となるでしょう。

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