ケロウナ市、2026年度予算の骨子を承認 税率引き上げと地域安全対策が焦点に
カナダ・ブリティッシュコロンビア州のケロウナ市(Kelowna)市議会は、2026年度の予算案について、予備承認となる暫定予算(preliminary budget)を相次いで可決しました。今回の予算では、市民サービス維持のための税率引き上げと、地域の安全対策の強化が大きな柱となっています。この記事では、2026年度予算のポイントを、市民目線でわかりやすく整理してお伝えします。
市議会が「暫定2026年予算」を承認 最終決定に向けた重要ステップ
ケロウナ市議会は、2026年度に向けた暫定予算(preliminary 2026 Budget)を審議し、必要な手続きを経て承認しました。暫定予算は、最終的な本予算が決定される前段階で、市としての基本方針や支出の優先順位を示す重要な文書です。
今回の審議では、道路・上下水道・公園といったインフラ維持、消防・警察・救急などの基礎的な公共サービスに加え、近年課題となっている治安・ホームレス・薬物問題など、コミュニティの安全性に関わる分野への投資が重点項目として取り上げられました。
市議会は、こうした支出に必要な財源を確保するため、一定の税率引き上げが避けられないとの認識を共有し、その前提のもとで暫定予算を可決しています。今後は、市民からの意見聴取や、経済状況、州・連邦からの補助金動向などを踏まえ、細部を調整したうえで本予算が決定される流れです。
税率引き上げは「他都市と比べれば割安」 背景にあるケロウナの事情
2026年度予算で多くの市民の関心を集めているのが、固定資産税など市税の引き上げです。報道などでは、今回のケロウナ市の税負担増は、他都市と比較すると依然として「割安」な水準であると指摘されています。
ケロウナは、人口増加や観光需要の高まりにより、インフラ・公共サービスへの需要が急増している地域です。その一方で、過度な税負担を避けつつ、住みやすさと安全性を維持するバランスが求められています。今回の税率引き上げは、このバランスを取るための「落としどころ」として、市側が提示したものと言えます。
具体的な税率の上昇幅については、市の説明資料や今後の市民向け説明会などで、住宅所有者・事業者それぞれにどの程度の負担増になるのかが、改めて示される見込みです。市としては、他都市よりも抑えられた増税幅であることを強調しつつ、それによって得られるサービス向上の内容を丁寧に説明していくことが求められます。
なぜ今、税金を上げるのか? 市の主な狙い
ケロウナ市が2026年度に税率を引き上げる理由は、大きく分けて次のような点に整理できます。
- 人口増加への対応:新しい住宅地や商業施設の増加に伴い、道路・上下水道・ゴミ収集・公共交通など、サービス提供コストが上昇している。
- インフレと人件費の上昇:物価高や賃金上昇により、既存サービスを同じ水準で維持するだけでも予算が膨らんでいる。
- 地域安全対策への投資:犯罪・薬物・ホームレス問題などへの対応強化のため、警察、消防、支援サービスへの追加投資が必要になっている。
- インフラ老朽化:過去に整備された道路・公共施設の更新や修繕に、多額の費用がかかる時期に入っている。
市は、こうした事情をふまえ、急激なサービス削減ではなく、緩やかな税率引き上げによって財政を安定させる方針を採っています。そのうえで、他都市と比べれば「まだ許容範囲」と説明されているのが、今回の税制改定の特徴です。
2026年予算で示された「コミュニティ安全」の優先事項
今回の暫定予算の中で、特に市が前面に押し出しているのが、「コミュニティの安全(community safety)」に関する取り組みです。ケロウナ市は2026年度に向けて、次のような優先分野を掲げています。
- 警察・治安維持の強化:必要に応じた人員配置の見直しや、重点エリアでのパトロール強化など。
- 消防・救急体制の充実:人口増加エリアへの対応強化や、緊急対応時間の短縮を目指した資機材・訓練への投資。
- ホームレス支援と公衆の安心:路上生活者への支援プログラムや、支援団体との連携を通じて、路上環境の改善と社会的包摂を図る取り組み。
- 薬物・メンタルヘルス対策:地域団体や医療機関と連携した支援策の強化、安全な街づくりに向けた啓発活動など。
これらの施策は、単に「犯罪を取り締まる」だけでなく、「困難を抱える人を支え、地域全体で安全と安心をつくる」という考え方に基づいています。ケロウナ市は、警察や消防と並行して、福祉・住宅・健康などの分野も含めた総合的なアプローチを推進しようとしています。
市民生活にどんな影響が出るのか
2026年度予算と税率引き上げは、ケロウナ市民の暮らしにさまざまな形で影響を与えます。主な影響は次のように整理できます。
- 税負担の増加:固定資産税などの支払い額が増えるため、家計や事業コストに一定の影響が出る。
- サービス水準の維持・向上:道路補修や公園整備、安全対策などが継続・拡充されることで、住環境の質が保たれる。
- 安心感の向上:治安対策やホームレス支援が進むことで、中心街や住宅街の「体感治安」が改善する可能性がある。
- 長期的な街の価値:インフラと安全性の維持・向上は、将来的な不動産価値や投資魅力にもつながると期待されている。
もちろん、市民の中には「これ以上の増税は厳しい」という声もある一方で、「必要なサービスを維持するなら、ある程度の負担増はやむを得ない」とする意見もあります。市としては、負担と効果の両面を丁寧に説明し、市民の理解と協力を得られるかどうかが重要なカギとなります。
今後のスケジュールと市民の関わり方
暫定2026年予算は、あくまで「たたき台」であり、これから本格的な市民参加と詳細審議が進められていきます。一般的に、ケロウナ市のような自治体では、次のようなプロセスが取られます。
- 市民向け説明会・オンライン情報提供:予算案の概要や税率改定の理由をわかりやすく説明。
- 意見募集:オンラインフォームや公聴会などを通じて、市民や事業者からの意見を受け付ける。
- 市議会での再検討:寄せられた意見や新しい経済データを踏まえ、必要に応じて予算案を修正。
- 本予算の最終決定:年度開始前までに正式な予算を可決し、行政サービスに反映していく。
ケロウナ市に暮らす人や事業を営む人にとって、2026年度予算は、自分たちの街の「これからの姿」を方向づける重要なテーマです。日々の生活に直結する内容が多いため、可能な範囲で情報をチェックし、自分の考えや不安、期待を市に伝えていくことが大切になります。
ケロウナ市が目指す「持続可能で安全な街づくり」
今回の暫定2026年予算と税率引き上げ、そしてコミュニティ安全対策の優先順位付けから見えてくるのは、ケロウナ市が「持続可能で、安全性の高い地域社会」を目指しているという方向性です。
人口が増え、観光や経済活動が活発になる一方で、住宅価格の高騰や生活困窮者の増加、薬物問題など、新たな社会課題も生まれています。こうした課題に正面から向き合いながら、インフラと公共サービスを維持・強化していくには、どうしても一定の財政負担が伴います。
ケロウナ市は、その負担を極力抑えつつも、市民の安全・安心を最優先に考えた投資を続ける方針です。今回の予算審議は、そうした市の姿勢を具体的に示す機会となっており、今後の議論の行方にも高い注目が集まっています。
2026年度予算が最終的にどのような形でまとまり、市民生活にどう反映されていくのか。ケロウナに暮らす一人ひとりが、そのプロセスを見守り、必要に応じて声を上げていくことが、より良い街づくりにつながっていくと言えるでしょう。



