愛媛県・大分県知事が「豊予海峡ルート」国へ要望、新たな地域連携の可能性
2025年9月30日、愛媛県と大分県の両知事が集い、地域交流会議を開催しました。この会議では、長年の懸案である「豊予海峡ルート」の推進に向けて国に強く要望する方針が確認され、両県の連携と今後の取り組みについて意見が交わされました。
豊予海峡ルートとは何か?
豊予海峡ルートとは、大分県佐賀関と愛媛県佐田岬を結ぶ約14kmの海峡を道路や新幹線のトンネル・橋で直結する壮大な交通インフラ計画です。このルートが実現すれば、四国と九州が直接結ばれ、西日本の交通網が大きく変革します。実際には昭和44年(1969年)に国が構想を打ち出し、その後も「全国総合開発計画」に盛り込まれるなど、約半世紀をかけて議論が続いています。
会議の主な内容と両知事の意見
- 大分県知事は「日本全体の発展の基盤となる」と、この構想に強い情熱を表明。
- 愛媛県知事も連携推進を明言し、観光や防災面でも協力する意欲を示しました。
- 今後は国に対して調査の再開・本格的な検討を求める方針を共有。
今回の会議では、広域交通ネットワークの強化や観光分野での相互協力などについても具体的な意見交換がなされ、県境を越えた新たな連携体制への期待感が生まれています。
なぜこのルートが重要視されるのか
- 物流・観光の発展:現状、東九州地域は関西方面へのアクセスに課題を抱えています。四国経由で本州につながる新ルートとなれば、物流の効率化や観光人口の拡大が見込まれます。
- 地域間の格差是正:九州東部や四国西部は他地域と比べて交通面で“離島”感が強く、経済面や生活面でも不利な状況です。新しいルートは、この格差を縮小し、経済圏の拡大に寄与すると期待されています。
国と地方で温度差も…
このプロジェクトは元々国主導で始まったにもかかわらず、財政難や政策変更などにより長らく棚上げされてきました。大分県は調査再開や計画推進を粘り強く要望しているのに対し、愛媛県は比較的慎重な姿勢を見せているのが現状です。
例えば本四架橋の場合、国と地元双方の盛り上がりで早期実現しましたが、豊予海峡ルートは「片側だけが熱意を持っている」という構図が続いています。
建設費と現実的課題
- 過去の試算:片道1車線の道路トンネル 約6900億円、新幹線トンネル 約7000億円。
- 技術進展による最新試算:大分市が2022年に発表した最小費用プランでは約3900億円と大幅コストダウンの可能性も示唆。
- 費用便益分析(B/C比)は1.27と、「事業として十分成立する」見込み。
- しかし巨額投資となるため、国の調査再開や関係自治体の足並みが揃うことが必要不可欠。
地域住民・自治体の受け止め
交通革命の期待がある一方、「実際にどれだけの人が利用するか」「恩恵を受けるのは限られた地域や業界ではないか」といった慎重な意見も根強いです。こと愛媛県側では「交通インフラの発展は歓迎するが、利便性や地域発展とのバランスをよく考えたい」といった声も聞かれます。
そのため、今後は「住民理解」や「地域ごとのメリット」「環境負荷」など多面的な議論が続いていくとみられます。
両県の今後の連携は?
2025年9月の知事会議を契機に、大分県・愛媛県の連携は一層深まる見通しです。観光振興、防災対策、広域交通インフラなど、両県が協力する分野は多岐にわたります。特に豊予海峡ルートについては、国への本格的な働きかけの強化が今後の焦点となるでしょう。
まとめ:将来への道筋を描く
- 「豊予海峡ルート」は、半世紀の構想と現実的課題の狭間で「日本全体の基盤」として注目されています。
- 2025年秋、両知事が国への要望と地域連携の強化を確認したことで、構想が新たな局面に入りました。
- 交通革命による可能性と、地域ごとの温度差や課題を丁寧にすりあわせることが不可欠。
- 今後は、国・自治体・住民が一体となり慎重に議論を重ねることが、実現への鍵となりそうです。
50年間夢をつなぎ続けてきた豊予海峡ルート。西日本の未来像を描くうえで、まだまだ多面的な議論と挑戦が続いていくでしょう。大分県、愛媛県、そして国の動きから目が離せません。