福岡県知事がJR九州に要望書を提出 赤字路線維持と利便性向上を求める動き

福岡県の服部誠太郎知事が、福岡県内の自治体や企業などで構成される「福岡県地域交通体系整備促進協議会」を代表して、JR九州に対し赤字路線の維持ダイヤ改善バリアフリー化の推進などを求める要望を行いました。

この要望は、県民の生活を支える地域交通を守りながら、より使いやすい鉄道ネットワークを整備していくことを目的に行われたもので、これまで以上に住民の足の確保と利便性向上を重視した内容となっています。

要望が行われた経緯と背景

福岡県では、人口減少や高齢化、都市部と地方部の格差などを背景に、地域交通をどう維持・発展させるかが大きな課題になっています。 特に鉄道は、通勤・通学や通院、買い物など、日常生活に欠かせない交通手段であり、沿線地域の活性化にも深く関わっています。

しかし一方で、利用者の減少によって赤字となっている路線も少なくなく、効率化や見直しの議論が続いてきました。 その中で、地域の声を一体的にJR九州に届けるために設置されているのが、「福岡県地域交通体系整備促進協議会」です。

この協議会は、県内の市町村や企業などが参加し、北部九州地区における公共交通の確保と交通インフラ整備を進めることを目的に活動しています。 会長を務めるのが服部知事であり、今回も協議会を代表しての要望となりました。

要望が行われた日時と場所

要望は、令和7年12月2日(火)の午後、JR九州本社で行われました。 会場は、福岡市博多区博多駅前にあるJR九州本社ビル11階の会議室で、JR九州の経営陣が出席しました。

服部知事は、協議会会長として出席し、福岡県の担当部局である企画・地域振興部の幹部らとともに、JR九州の古宮洋二社長らに直接要望書を手渡しました。

要望の主なポイント

今回の要望には、福岡県内の鉄道利用者にとって重要な内容が多く盛り込まれています。 主なポイントは次の通りです。

  • 赤字路線の維持:利用者が少ないものの、地域住民の生活を支える赤字路線について、安易な廃止や大幅な縮小を避け、可能な限り維持してほしいという要望です。
  • 在来線の復便:減便などにより本数が減っている区間について、通勤・通学時間帯を中心に列車本数を増やし、利便性を回復・向上させることを求めています。
  • ダイヤ改善:乗り継ぎのしやすさや、朝夕の混雑緩和などを踏まえ、利用者目線に立ったダイヤ設定を検討するよう呼びかけています。
  • バリアフリー化の推進:高齢者や障がいのある方、小さな子ども連れの家族など、誰もが安心して利用できる駅環境の整備を求めています。
  • 地域に密着した交通ニーズへの対応:各市町村が抱える細やかな交通ニーズを踏まえ、自治体や地域との連携を深めながら路線維持やサービス改善を進めるよう要望しています。

これらの要望は、単に路線を残すだけでなく、「使いやすい鉄道」として地域に根付かせていくことを重視した内容になっています。

協議会の役割と福岡県のねらい

「福岡県地域交通体系整備促進協議会」は、福岡県と県内市町村、企業などが一体となって、地域交通の確保と交通インフラ整備を進めるために設置された組織です。

協議会の目的は、北部九州地区における公共交通のあり方を考え、県民の生活を支える交通ネットワークを整えることにあります。 具体的には、鉄道やバスなどを含む地域交通の課題を整理し、国や鉄道事業者への提案や要望を行っています。

福岡県としては、この協議会を通じて、県民の声を集約し、それをJR九州などの事業者に伝えることで、より実情に即した交通政策が実現することを期待しています。

服部知事による要望の意義

服部知事が協議会会長として直接JR九州本社を訪れたことは、県として地域交通問題に本気で取り組んでいる姿勢を示すものです。

特に、赤字路線の維持やダイヤ改善は、沿線住民の生活に直結する問題であり、自治体だけでは解決が難しい課題でもあります。そこで、県が前面に立ち、JR九州との協議の場を持つことで、地域の声をより強く伝える狙いがあります。

また、今後のまちづくりや観光振興、企業立地などを考える上でも、安定した鉄道ネットワークは大きな基盤となります。その意味で、今回の要望は、交通政策を超えて、福岡県の将来像にも関わる重要な一歩だと言えます。

JR九州側の受け止めと今後の課題

要望の場では、服部知事からの要望書手渡しに続き、JR九州側からもコメントが行われました。 詳細なやりとりは今後の協議に委ねられますが、JR九州としても、経営の安定と地域貢献のバランスをどう取るかが問われています。

鉄道事業は、設備投資や人件費など多くのコストがかかる一方で、人口減少や車社会の進展により、利用者数が伸び悩んでいる地域もあります。その中で、赤字路線の維持は、事業者にとって大きな負担となるのも事実です。

一方で、鉄道がなくなれば、高齢者や学生、車を持たない人たちの移動手段が失われるという深刻な影響が出ます。今回の要望は、こうした現実を踏まえ、県とJR九州がともに知恵を出し合いながら、持続可能な形での路線維持やサービス改善を模索していくためのスタートラインとも言えるでしょう。

住民の暮らしと地域の未来を支える鉄道へ

福岡県内の鉄道は、都市部の通勤・通学を支えるだけでなく、地域医療へのアクセスや、観光地への移動災害時の代替輸送など、多様な役割を果たしています。

特に地方部では、バスやタクシーの本数が限られている地域も多く、鉄道が生活の要となっているところもあります。そうした地域にとって、ダイヤの見直しや本数の減少、路線の廃止といった変化は、日常生活そのものに直結する大きな問題です。

今回の要望は、そうした声を背景に、「便利で使いやすく、誰もが安心して乗れる鉄道」を目指す取り組みの一環です。 県内の市町村や企業が参加する協議会が一丸となって要望を行ったことは、地域全体で鉄道を守り、育てていこうというメッセージでもあります。

今後に向けて期待されること

今後は、JR九州が今回の要望を踏まえて、どのような形でダイヤ改善や路線維持、バリアフリー化を進めていくのかが注目されます。

また、鉄道事業者任せにするのではなく、自治体や地域住民も参加する取り組みがますます重要になっていきます。たとえば、利用促進キャンペーンや通学定期の活用、観光との連携企画など、地域でできる工夫も数多く考えられます。

福岡県としても、協議会を通じて継続的にJR九州との対話を続けながら、地域の実情に合った交通政策を進めていくことが求められます。

服部知事が今回示した「鉄道を地域の大切なインフラとして守り、より良くしていきたい」という姿勢は、今後の議論の土台となるものです。県民一人ひとりにとっても、「身近な路線をどう使い、どう残していくか」を考えるきっかけになっていくのではないでしょうか。

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