マクロン仏大統領が北京で習近平主席と会談、「一つの中国」政策の堅持を表明

フランスのマクロン大統領が2025年12月3日から中国を訪問し、4日に北京で中国の習近平国家主席と首脳会談を行いました。この会談では、台湾問題を念頭に置いた「核心的利益」への理解と支持を巡る議論が中心となりました。マクロン大統領は会談でフランスが「一つの中国政策を堅持する」ことを明確に表明し、中国との関係を重視する姿勢を示しています。

習主席が「歴史の正しい側に立つべき」と強調

会談の中で、習近平主席はマクロン大統領に対して「歴史の正しい側に断固立つべき」と強調しました。この表現は、台湾問題を始めとする中国の「核心的利益」に対する国際的な理解と支持を求めるものです。習主席は「核心的利益や重大な懸念事項では、互いに理解し支持すべきだ」と訴え、中国の立場への支援を明確に要求しています。

このような発言背景には、ウクライナ情勢やアメリカとの対立の中で、欧州の大国であるフランスの支持を得ることの重要性があります。特に台湾問題に関しては、国際社会での中国の立場を強化したいという意図が見られます。習主席は、フランスが「対米自立」を掲げながらも、同時に中国への同調を示すことを期待しているようです。

マクロン大統領の「一つの中国」政策への明確な承認

マクロン大統領は会談で、フランスが「対中関係を重視し、一つの中国の政策を断固として守る」と述べました。この発言は中国側の意図を強く反映したものであり、フランスが中国の台湾に関する主張を受け入れる姿勢を示しています。マクロン大統領はまた、経済貿易などの分野で協力を強化したいという意向も表明しました。

フランスとしては、欧州が対米関係を重新構築する中にあって、中国との関係維持が経済的および政治的に重要だと判断しているのでしょう。ただし、この姿勢は日本を含むインド太平洋地域の民主主義国家から懸念を呼ぶ可能性があります。

経済協力の拡大で合意

習主席は会談後の会見で、フランスと原子力や農業などの分野で協力を拡大することで合意したと明らかにしました。両国は「全面的な戦略パートナーシップ」を深化させていく方針で一致しており、経済的な結びつきを強める動きが加速すると見られます。

原子力分野での協力は、フランスが世界屈指の原発技術を持つ国であることから、中国にとって大きな利益があります。また農業分野での協力も、中国の食糧需要に対応する上で重要な要素となるでしょう。

異例の地方訪問と政治的メッセージ

特に注目すべき点は、習主席がマクロン大統領に同行して四川省を訪問する予定となっていることです。習主席自らが地方を案内するのは異例であり、これはマクロン大統領に対する特別な待遇であるとともに、フランス側への政治的なメッセージとも言えます。地方視察を通じて、中国の発展ぶりを直接見せることで、フランスとの関係をより深化させようとする意図が伺えます。

日本への暗黙のけん制

これらの会談内容からは、中国が台湾問題に関する国際的支持を確保しようとしている姿勢が明確に見られます。同時に、フランスのような先進国が「一つの中国」政策を「堅持する」と表明することは、インド太平洋地域の安全保障環境に影響を与えます。特に日本に対しては、欧州の有力国であるフランスが中国寄りの姿勢を示すことで、間接的なけん制になる可能性があります。

マクロン大統領の複雑な外交戦略

マクロン大統領は、フランスとしての「対米自立」と「中国との協力」のバランスを取ろうとしているようです。ウクライナ情勢でNATO内の結束が重要となる一方で、経済的にはアメリカ一辺倒ではなく、中国との関係も維持したいという戦略的判断があるものと考えられます。

この会談は、2025年の国際政治における力の配分が、従来のG7中心の秩序から、より多元的な構造へ移行していることを象徴しています。フランスのような国が、欧米連携と中国との関係をどのように調整していくかは、今後の国際秩序形成に大きな影響を与えるでしょう。

台湾問題の国際化と懸念

マクロン大統領の今回の訪中と会談は、台湾問題がいかに国際政治の中心的課題になっているかを示しています。中国が大国外交を通じて「一つの中国」政策への支持を取り付けようとしていることは、台湾海峡の情勢がいかに緊張しているかを反映しています。一方、フランスのような民主主義国家が、この問題で中国への支持を明示することは、インド太平洋地域の民主主義陣営に対する揺さぶりにもなります。

今後への展開

この会談の結果が、欧州と中国の関係にどのような影響を与えるかが注視されます。また、日本やアメリカがこれにどのように対応するかも、今後の国際政治の流れを左右する重要な要素となるでしょう。フランスの「一つの中国」政策への明確な支持表明は、欧州内での対中政策のばらつきを示すものでもあり、欧米の一体性を巡る議論を再燃させる可能性があります。

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