マクロン仏大統領、トランプ政権の「同盟軽視」と「国際ルール離脱」を強く批判
フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、アメリカのドナルド・トランプ政権の姿勢について、「米国は同盟国を見限りつつあり、国際ルールから離脱している」と厳しく批判しました。 また、トランプ氏が国際法を軽視し、一部の同盟国に背を向けていると指摘し、ヨーロッパをはじめとする各国に警鐘を鳴らしています。
マクロン大統領の発言の背景
マクロン大統領は、近年のトランプ政権の外交・安全保障政策を念頭に、アメリカが従来の「同盟国との協調」と「国際秩序の維持」という役割から離れつつあると懸念を示しました。 特に、国際法に基づく枠組みや多国間の合意ではなく、アメリカ一国の判断を優先する姿勢に対して強い危機感を抱いているとみられます。
フランスを含む欧州各国は、第二次世界大戦後、NATO(北大西洋条約機構)を中心とした安全保障体制のもとで、アメリカとの同盟関係を前提に外交・安全保障政策を組み立ててきました。ところが、トランプ政権が同盟国への防衛義務や国際条約へのコミットメントを繰り返し疑問視したことで、「いつまでアメリカに頼れるのか」という不安が広がっています。
「同盟国を見限りつつある」アメリカ
マクロン大統領が問題視しているポイントは、大きく分けて次の2つです。
- 同盟国への関与の後退:NATO諸国や韓国など、従来アメリカの重要な同盟国とされてきた国々の間で、第二次トランプ政権に対する警戒感が強まっていると報じられています。 アメリカの関与が大統領の「気分次第」で変動しうるという見方もあり、同盟の安定性に疑問が投げかけられています。
- 国際ルールからの離脱傾向:多国間の枠組みよりも二国間の「ディール」を重視する姿勢や、自国の利益を最優先する unilateral(単独)な行動が、国際ルールを軽視しているのではないかという批判につながっています。
こうした流れの中で、マクロン大統領は「アメリカは一部の同盟国に背を向けつつある」と表現し、欧州を含む同盟国がアメリカ任せの安全保障から脱却し、自らの戦略を強化する必要性を訴えています。
国際法違反への懸念とトランプ批判
マクロン大統領はまた、トランプ氏の行動が国際法に反していると厳しく非難しました。 場合によっては、軍事力や制裁など強硬な手段を優先し、国連などの多国間枠組みや国際司法の判断を軽視する姿勢に対して、「国際秩序を揺るがしかねない」との危機感を示しています。
ユーラシア・グループによる2026年の世界リスク分析でも、トランプ政権下のアメリカについて、「同盟への関与は大統領の気分次第で変化する」「ソフトパワーは衰退し、世界の同盟関係を構築・維持する能力が低下している」との指摘があります。 これは、マクロン大統領の懸念とも重なる評価であり、アメリカの外交スタイルの変化が世界的な不安定要因になりつつあるとみなされていることがわかります。
ヨーロッパ側の危機感と「戦略的自律」
こうしたアメリカの変化を受けて、ヨーロッパ諸国の間では、「安全保障をアメリカに頼りすぎるリスク」への認識が高まっています。 特にウクライナ情勢をめぐり、欧州はアメリカの軍事的・政治的支援に大きく依存してきた一方で、「もしアメリカの姿勢が急に変わったらどうなるのか」という不安が現実味を帯びてきました。
この流れの中でキーワードとなっているのが、マクロン大統領もたびたび口にする「戦略的自律(ストラテジック・オートノミー)」です。 これは、アメリカから完全に離れるという意味ではなく、「アメリカの関与に頼り切るのではなく、自らの力で危機に対応できる欧州を目指す」という考え方です。
具体的には、以下のような取り組みが議論・模索されています。
- 欧州独自の防衛力・抑止力の強化
- エネルギーや経済安全保障の面で、対外依存を減らす政策
- EUを中心とした外交・安全保障政策の一体化の推進
マクロン大統領は、こうした「自律したヨーロッパ」の構想を主導してきた一人であり、今回の対米批判も、その延長線上のメッセージといえます。
トランプ政権の対外姿勢がもたらす世界的リスク
ユーラシア・グループの分析によると、トランプ政権は「まず行動し、裁判所のことは後で考える」という姿勢を示しており、国内外の政策で対立や摩擦をいとわない強硬なスタイルが特徴とされています。 同レポートでは、2026年も「政治革命の真っただ中」にあり、トランプ政権とその支持者はこれまで以上に大きなリスクを取るようになっているとも指摘されています。
このような状況下では、以下のような国際的リスクが懸念されています。
- 同盟国がアメリカの安定した支援を見込めなくなり、地域安全保障が不安定化する可能性
- 国際法や国際機関の権威が弱まり、「力の論理」が優先されるリスク
- アメリカとその他の大国(たとえば中国やロシア)との間で、一層の対立や駆け引きが激化する可能性
マクロン大統領の発言は、こうした世界的なリスク認識を背景に、「これ以上、国際秩序を揺るがすような一方的行動を続けるべきではない」という強いメッセージをアメリカに向けて発したものと解釈できます。
フランスが果たそうとしている役割
フランスは、EUの中でも核戦力と国連安全保障理事会常任理事国の地位を有する数少ない国の一つであり、マクロン大統領はしばしば「ヨーロッパの声」を代表する立場を自任してきました。 アメリカが同盟国との距離を取り、国際ルールから離れていく傾向が強まるほど、フランスやドイツなど欧州諸国は、自ら秩序形成に関与する意思を強めています。
特にフランスは、以下の点でリーダーシップを発揮しようとしています。
- 欧州防衛の強化:NATOに依存しすぎない形での欧州安全保障の枠組み作り
- 外交的仲介役:ウクライナ危機や中東問題などで、対話と外交による問題解決を模索
- 国際法・多国間主義の擁護:国連やEU、G7、G20などを通じて、国際ルールを尊重する姿勢を発信
マクロン大統領によるトランプ批判は、単なる二国間の不満の表明ではなく、「ルールに基づく国際秩序を守ろう」という呼びかけであり、同時に「ヨーロッパはこれから、より主体的な役割を果たすべきだ」というメッセージでもあります。
同盟国・日本への示唆
経団連の分析は、新興国から見たトランプ政権への評価を紹介しつつ、同盟国側がアメリカとの付き合い方を慎重に再考すべき局面にあることを示しています。 NATO諸国や韓国などが第2次トランプ政権に強い警戒感を抱く一方で、サウジアラビアやインドなど、アメリカとの「取引」を好機とみる国も少なくありません。
日本にとっても、これは無関係な話ではありません。アメリカとの安全保障同盟に依存しつつ、中国やロシア、北朝鮮など厳しい安全保障環境に直面している日本にとって、
- アメリカの対同盟国姿勢の変化を冷静に見極めること
- 地域のパートナー(ASEANやインドなど)との連携を一層強化すること
- 国際法と多国間主義を支える側に立ち続けること
などが、中長期的な外交・安全保障戦略の重要な柱になっていくと考えられます。
マクロン大統領の発言は、フランスとアメリカの関係にとどまらず、「アメリカにどこまで頼れるのか」「自国や地域としてどのように自立した戦略を持つべきか」という問いを、世界中の同盟国に突きつけるものとなっています。



