玉木国民民主党代表、高市新総裁に「年収の壁」引き上げを要求

2025年10月、日本の政治情勢は大きな転換点を迎えています。自民党の新総裁に高市早苗氏が選出され、野党各党は新政権に対してそれぞれの看板政策の実現を強く求める姿勢を示しています。中でも注目を集めているのが、国民民主党の玉木雄一郎代表による「年収の壁」引き上げ要求です。

国民民主党が掲げる「手取りを増やす」政策

国民民主党は、2024年の衆議院選挙から一貫して「手取りを増やす」ことをテーマに掲げてきました。特に「年収103万円の壁」の引き上げは、同党の最重要政策の一つとなっています。玉木代表は、現役世代の所得を増やすことが、子育て世代を支え、全世代の安心につながると訴え続けてきました。

2025年7月の参議院選挙でも、国民民主党は「手取りを増やす夏」というキャッチコピーを掲げて戦いました。東京選挙区では元NHKアナウンサーの牛田茉友氏が当選するなど、同党は参政党とともに大幅に議席を伸ばし、その主張が有権者に支持されていることを示しました。選挙戦終盤には多くの現役世代が応援演説に訪れ、玉木代表は確かな手応えを感じたといいます。

石破政権との約束が果たされなかった経緯

国民民主党と自民党・公明党との間では、昨年12月に「年収の壁」引き上げについて3党幹事長間で合意が成立していました。しかし、国民民主党が求めていた178万円までの引き上げは実現せず、103万円の壁は依然として残ったままとなっています。

玉木代表は、テレビ朝日系「選挙ステーション2025」に出演した際、キャスターの大越健介氏から「連立政権に入る選択肢はあると思うんですけど」と問われました。これに対して玉木代表は、年収の壁の問題に加え、ガソリンの暫定税率廃止についてもいまだ実現していないことを指摘し、「この約束を果たせないような石破政権と組むことはありえません」と明確に連立入りを否定しました。

高市新総裁への要求と野党の戦略

自民党総裁選で高市早苗氏が新総裁に選出されたことで、政治情勢は新たな局面を迎えています。立憲民主党などの主要野党は、高市新総裁に対してそれぞれの看板政策の受け入れを迫る方針を固めています。

立憲民主党の野田佳彦代表は、所得税減税と現金給付を同時に実施する「給付付き税額控除」の制度設計や、企業・団体献金の規制強化について、自民・公明・立民の3党協議を進めることを求めています。野田代表は「石破執行部は引き継ぐとしていた。受け止めてほしい」と強調し、高市新政権にも同様の対応を期待する姿勢を示しました。

日本維新の会の吉村洋文代表は、社会保険料の引き下げや「副首都」構想、政治改革などの実現を確約するよう要求する考えを示しています。ただし、連立入りについては「簡単ではない」と慎重な姿勢を見せています。

国民民主党の政策本位の姿勢

国民民主党は、与党との間で合意した所得税の「年収の壁」引き上げと、ガソリン税の暫定税率廃止の年内実現を強く訴える構えです。玉木代表は、連立協議の呼びかけがあった場合について「どのような方針を打ち出すのかを見定めたい」と述べるにとどめており、慎重に状況を見極める姿勢を示しています。

玉木代表は、石破首相に党内から退陣論が出ている状況を受けて、首相交代後の連立入りについても質問されました。これに対して代表は「この選挙結果と、まずは自民党内、公明党も含めた与党内の政局を見定めたいと思います」と返答しました。

その上で玉木代表は、国民民主党の基本姿勢について次のように語りました。「ただ我々の本心は結党以来変わっていなくて、政策本位で政策を実現するために与野党含めて協力できるところとは協力していく。誰と組むかより、何を成し遂げるかという変わらぬ姿勢を貫きたい」。この発言は、同党が連立の是非よりも政策の実現を重視する立場を堅持することを明確に示しています。

現役世代の支持を集める政策

国民民主党が掲げる「年収の壁」引き上げは、特に現役世代から強い支持を得ています。年収103万円を超えると配偶者控除が受けられなくなるため、多くのパート労働者が就労時間を調整せざるを得ない状況が続いています。これを178万円まで引き上げることで、より多くの人が十分に働くことができ、家計の手取りが増えることが期待されています。

玉木代表は一貫して、「現役世代から豊かになろう」というメッセージを発信してきました。「子どもを支えているのは現役世代ですから、現役世代を支えていくことが、全世代の安心につながっていく」という主張は、子育て世代を中心に共感を呼んでいます。

今後の政局の行方

高市新総裁の下で自民党がどのような政策を打ち出すのか、そして野党各党の要求にどこまで応えるのかが、今後の政局を左右することになります。国民民主党は、過去の合意事項の実現を強く求める立場を明確にしており、高市新政権がこれにどう対応するかが注目されています。

野党各党が自らの看板政策の実現を条件に国会運営への協力姿勢を示す中、与党は少数与党としての難しい政権運営を迫られることになります。特に国民民主党が掲げる「年収の壁」引き上げは、現役世代の生活に直結する重要な課題であり、その実現の可否は多くの国民の関心事となっています。

玉木代表が述べたように、「誰と組むかより、何を成し遂げるか」という姿勢が、今後の政治状況の中でどのように具体化していくのか、そして高市新政権が野党の政策要求にどう向き合うのかが、日本の政治の新たな展開を決定づけることになるでしょう。

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