走行距離課税導入とガソリン税暫定税率廃止をめぐる最新動向
はじめに
2025年秋、日本の自動車税制が大きな転換期を迎えています。
政府は「走行距離課税」の導入検討を本格化させる一方、立憲民主党、維新、共産党など主要政党が一致してガソリン税暫定税率の年内廃止へ協力する姿勢を明確にしました。この報道は多くの自動車ユーザー、関係産業、地域社会に衝撃を与えています。
走行距離課税とは何か?
走行距離課税とは、車種や排気量に関係なく、実際の走行距離に応じて課税する新しい税制です。従来の自動車税やガソリン税を補完・代替する方法として検討が進められており、より公平な負担分配を目指しています。
- 排気量・燃費に関係なく「走った分だけ」課税
- EV(電気自動車)、ハイブリッド車なども対象になる可能性
- オドメーター(走行メーター)やGPSで距離を正確に把握する手法が議論される
現段階(2025年9月時点)では、導入時期や課税方式の具体案は決まっておらず、法案提出や可決には至っていません。
なぜ「走行距離課税」が検討されているのか
- 自動車の電動化(EV化進行)や利用形態の変化によりガソリン税収の減少が懸念されているため
- 車利用が増える地方と、都市部との公平性確保
- 若年層の「車離れ」や高齢化による利用減少も税収減要因
- 燃料課税(ガソリン税中心)だけで社会インフラ維持が困難となる見通し
これまでの自動車関連税制の課題
自動車税制は「ガソリン税・暫定税率」を中心に設計されてきましたが、特に暫定税率(本則税率に上乗せ)は2008年以降も継続。景気対策や公平性の観点から廃止論が再燃しています。
- ガソリン税本来の31.6円/リットルに対し、暫定差8円の上乗せが続いた
- 「二重課税」問題も長期的な論争が続く
- 自動車税負担が米国の23.4倍との指摘(経済アナリスト)も報道
立憲民主党・維新・共産党の年内廃止協力
立憲民主党は、維新・共産党と協力して「ガソリン税暫定税率」の年内廃止を目指すことで一致しました。これにより一時的なガソリン価格の引き下げや生活費負担軽減が期待できますが、政府・与党との調整は難航する可能性もあり、政策の行方に注目が集まっています。
- ガソリン価格の即時低下を目指す動き
- 財政インパクト(約1兆円規模)も懸念材料
国民の反応と現場の絶望感
「走行距離課税」は一見公平に見える反面、車の利用頻度が高い人ほど負担増になるため、特に地方の自動車利用者、運送業者、観光業界などから「国民絶望」と言えるほどの強い反発が起きています。
- 地方在住者は公共交通が乏しく「生活の足」=車に依存。そのため負担増
- 長距離運転が多い世帯ほど経済的打撃が大きい
- 都市部(公共交通依存)と地方で格差拡大の懸念
- 米国の23.4倍という税負担比較も不満の背景に
また、導入検討のなかでは「走行距離の正確な把握」「監視社会の到来」「プライバシー保護」をめぐる議論も沸騰しています。
技術的・制度的な課題
- 距離計測方法:自己申告は改ざんリスクがあり、GPS利用はプライバシー問題
- 法整備・セキュリティ対策:個人情報流出防止、データ改ざん対策が必要
- 制度設計の複雑化:都市と地方、業種間の公平性担保、徴収コスト増への懸念
このため政府や関係機関は慎重に検討を重ねており、制度設計には今後数年を要すると考えられます。
海外の事例から見る走行距離課税
- 米国オレゴン州:GPSを使った実験的課税方式を導入。利用者は専用端末を車に装着して申告
- 都市部と地方住民の負担格差軽減のためグループ分け等工夫
- 現地でもプライバシー・データ管理が最大の課題
今後の流れ・見通し
- 2025年度税制改正で、走行距離課税の議論が本格化
- 具体的な制度案は未決定。国民的議論とパブリックコメント募集が想定される
- 都市部・地方・業種間の負担調整、法整備・技術基盤整備が完了した段階で導入時期決定か
- 2030年以降~導入との見通しも
現段階で政策確定には至っていませんが、自動車を取り巻く税制は今後も大きく変わる可能性があります。国民一人ひとりが議論への参加、情報収集、意見表明を行うことが求められる時代です。
まとめ
- 「走行距離課税」は公平負担・税収安定を目指しつつ、多くの技術的・制度的課題を抱える
- ガソリン税暫定税率廃止と自動車税負担の見直しを巡り、与党・野党間のせめぎ合いが続く
- 国民生活への影響は大きく、今後の政策動向に注目が集まる
- 導入までには数年単位の慎重な議論が必要(2025年時点では検討段階)
これからの自動車税制に関する議論をウォッチし、社会の動きに敏感に反応していくことが重要です。