宮城県知事選挙が大激戦に

2025年10月26日に投開票を迎える宮城県知事選挙が、最終盤に入って予想外の展開を見せています。6選を目指す現職の村井嘉浩知事(65歳)と、7月の参議院選挙で落選した元自民党参議院議員の和田政宗氏(51歳)がデッドヒートを繰り広げており、県政関係者からは「和田氏が想定より善戦し、投票箱のふたが閉まるまで、どちらに転ぶか分からない」という声が上がるほどの大激戦となっています。

この選挙戦で特に注目を集めているのが、保守陣営内部での分裂です。自民党県議出身の村井知事を応援するのは、高市早苗首相(自民党総裁)。一方、和田氏を応援しているのは、故安倍晋三元首相の妻である安倍昭恵さんです。保守派が二分される異例の展開となっており、政治関係者の間でも大きな話題となっています。

高市首相と安倍昭恵さん、それぞれの応援活動

高市早苗首相は、自民党本部の立場から村井知事を強力に支援しています。高市首相、小野寺五典税制調査会長、そして村井知事の3人は、松下政経塾の先輩・後輩関係にあり、その絆も支援の背景にあるとされています。

高市首相は告示日の10月9日に総裁として応援メッセージを発出し、さらに女性初の首相に就任した10月21日には、村井氏の後援会を通じて動画で投票を呼びかけました。自民党本部に近い勢力ほど村井氏を支援する傾向が強く、衆議院宮城5区が地盤の小野寺税調会長が中心となって、県議とともに票固めに奔走しています。

一方、和田政宗氏を応援する安倍昭恵さんは、高市首相の動画が公開された翌日の10月22日、自身のX(旧Twitter)にエール動画を投稿しました。動画は台湾・高雄に立つ「安倍晋三像」の前で撮影されており、「主人も和田先生に当選していただきたい」と訴える内容でした。

参政党との連携も焦点に

和田政宗氏は参政党と連携して選挙戦を展開しています。参政党は右派的な政策を掲げる政党として知られており、和田氏の政治姿勢と親和性が高いとされています。この参政党との連携も、今回の選挙戦における大きな特徴の一つとなっています。

参政党は以前、県の水道事業をめぐって「外資に売った」というデマを参院選で拡散し、村井知事とバトルを繰り広げた経緯があります。このような背景もあり、参政党が和田氏を支援することで、村井知事陣営との対立構図がより鮮明になっています。

水道事業をめぐる対立

今回の選挙戦では、宮城県の水道事業が大きな争点の一つとなっています。参政党が参議院選挙時に「外資に売った」とデマを拡散した問題は、現在も尾を引いています。

現職の村井知事陣営は、このようなデマへの対応に追われる状況となっており、正確な情報の発信に力を入れています。一方で、こうした根拠のない情報が一定の支持を集めている現状もあり、選挙戦を複雑にしている要因となっています。

保守分裂の背景

今回の「保守分裂」は、単なる個人の対立にとどまらず、自民党内部の権力構造や政治的な立場の違いを反映しているとも見られています。高市首相が支援する村井知事は、自民党の主流派に近い立場であり、党本部の方針に沿った政治運営を行ってきました。

一方、和田政宗氏は自民党の参議院議員でしたが、7月の参議院選挙で落選しました。その後、参政党と連携して宮城県知事選挙に挑戦する形となっており、より保守色の強い政策を打ち出しています。

安倍昭恵さんが和田氏を応援している背景には、故安倍晋三元首相と和田氏との関係性があると推測されます。和田氏は安倍元首相を強く支持していたことで知られており、その政治的な遺志を受け継ぐ存在として、昭恵さんからの支援を受けているとみられます。

選挙戦の様相

当初は現職の村井知事が有利とされていましたが、和田政宗氏が予想以上に善戦しており、接戦となっています。県政関係者の間では、「投票箱のふたが閉まるまで、どちらに転ぶか分からない」という見方が広がっており、最後まで目が離せない状況です。

村井知事は6選を目指しており、長期政権への評価が問われることになります。一方の和田氏は、参議院選挙での落選から立ち直り、新たな挑戦として知事選に臨んでいます。両者の政策の違いや、支援する勢力の違いが、有権者の判断にどのように影響するかが注目されています。

選挙戦の影響

この宮城県知事選挙は、地方選挙でありながら、国政レベルの政治的な構図が持ち込まれた形となっています。高市早苗首相が女性初の首相として就任した直後のタイミングでもあり、その政治的な影響力が試される場面でもあります。

また、安倍昭恵さんが現職首相とは異なる候補を応援するという異例の事態は、保守陣営内部の複雑な関係性を浮き彫りにしています。この選挙の結果は、今後の自民党内部の勢力図や、保守派の動向にも影響を与える可能性があります。

地方政治への国政の影響

地方自治体の首長選挙に、首相や元首相夫人といった国政レベルの政治家が深く関与することは、地方政治の在り方についても議論を呼んでいます。本来、地方自治体の首長は、その地域の課題に向き合い、住民のための政策を実行することが求められます。

しかし、今回の選挙では国政レベルの政治的な対立が持ち込まれており、地域の課題よりも政治的な立場が優先されているのではないかという指摘もあります。このような状況が、有権者の投票行動にどのような影響を与えるのかも、注目されるポイントです。

投開票日を前に

宮城県知事選挙は10月26日に投開票が行われます。最終盤に入り、両陣営ともに支持拡大に向けた最後の追い込みを行っています。高市首相の動画メッセージと安倍昭恵さんのエール動画という、対照的な応援が象徴するように、この選挙は保守陣営の分裂を鮮明にしています。

有権者は、長期政権の継続を選ぶのか、それとも新しいリーダーシップを求めるのか。また、自民党本部の支援を受ける候補と、参政党と連携する候補のどちらを選ぶのか。これらの選択が、宮城県の今後を左右することになります。

選挙結果は、地方政治における国政の影響力や、保守陣営の今後の方向性を占う上でも重要な指標となるでしょう。26日の投開票に向けて、両陣営の激しい攻防が続いています。

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