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シンシナティ、ジョージ・フロイド抗議での逮捕者に対し810万ドルの和解に合意
米国オハイオ州シンシナティ市は、2020年のジョージ・フロイド抗議活動中に逮捕された400人以上の市民との訴訟を解決するため、810万ドル（約8100万円）の和解金を支払うことを発表しました。この和解は2025年12月5日に公開され、同月9日にシンシナティ市議会の公安・ガバナンス委員会で投票に付されることになっています。
背景となった2020年の抗議活動と逮捕
2020年5月から6月にかけて、アメリカ全土でジョージ・フロイドという黒人男性がミネアポリス警察官に殺害されたことに対する抗議活動が広がりました。シンシナティでもこの動きに応じて大規模な抗議活動が開催されました。これらの抗議活動に対応するため、当時のジョン・クランリー市長は2020年5月30日から6月8日までの間、夜間外出禁止令（カーフュー）を発令しました。
この夜間外出禁止令の期間中、約500人の市民が違反容疑で逮捕されました。しかし、多くの市民がこの逮捕は不当であると主張し、2022年に集団訴訟を提起しました。
訴訟で指摘された警察の行為
訴訟では、シンシナティ警察部隊が以下のような行為を行ったと主張されました。警察官たちは無差別に催涙ガス、ペッパースプレー、フラッシュグレネード、その他の投射物を抗議者の群衆に対して使用したとされています。これらの投射物は、障害を持つ人々、子どもたち、さらには抗議活動に参加していない一般市民にも使用されました。
さらに、逮捕された抗議者たちはバスの中に長時間閉じ込められ、寒冷地の屋外に放置されたと述べられています。彼らは水、食料、避難所、必要な医薬品など、基本的な人間の必需品にアクセスできませんでした。これらの出来事は、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）がまん延している時期に発生しました。
訴訟は、夜間外出禁止令が市民の憲法上の権利を侵害したことも主張していました。実際、ハミルトン郡の複数の市営判事がこの夜間外出禁止令は違憲で執行不可能であると判断していました。
和解の詳細
和解金の総額は810万ドルで、479人の原告に支払われます。このうち、シンシナティ市が大部分を支払い、ハミルトン郡が65,000ドルを負担します。810万ドルから弁護士費用として200万ドルが差し引かれ、残りの610万ドルが479人の原告で分配されます。
シンシナティ市は判断債（ジャッジメント・ボンド）を使用して和解金を支払う予定です。ハミルトン郡の当局者は、この和解額を「わずかである」と述べており、県が過失を認めていないことを強調しています。
警察改革と方針の変更
この和解の重要な部分は、警察の新しい方針と手続きの確立を含んでいます。シンシナティ市警察部隊（CPD）は、市民的混乱に対応するための新しい手順を実装することになります。シェリル・ロング市長補佐官は、「この訴訟により警察のプロトコルの改訂が促進されたことに満足している」とコメントしました。
ロング市長補佐官は、「この訴訟につながった出来事は現在の市行政より前の時代に発生したものですが、市指導部として、同様の事件の再発を防ぐために、私たちに引き継がれた課題に対処するためにあらゆる手段を講じる必要があります」と述べています。彼女はまた、警察官の継続的な改善への取り組みに対する感謝を表明しました。
警察組合と市民の反応
しかし、この和解決定に対して批判の声も上がっています。シンシナティ警察友愛組織（FOP）は、市がこの訴訟を解決し、逮捕者に対する数百の容疑を取り下げることを決定したことを非難する声明を発表しました。
FOP会長のケン・コーバーは、「警察官たちは自分たちの職務を遂行していました。市は警察官に対し、混乱と破壊を引き起こしている個人を逮捕することでカーフューを執行するよう指示していました。しかし、イデオロギー的な動機から、法務部門は数百の容疑を却下し、シンシナティの善良な市民に対して数百万ドルの民事訴訟を提起しました」とコメントしました。
コーバーはさらに、「法務部門がこの混乱を作り出したことについて責任を負わなければならない。現在、彼らは犯罪がシンシナティで報酬を得ることができるようにしてしまった」と述べ、和解がメッセージとして悪い影響を与える可能性があると懸念を示しました。
法的手続きと今後の展望
この和解に関する議案は、シンシナティ市議会の公安・ガバナンス委員会で2025年12月9日（火）に審査されることが予定されていました。委員会での承認後、市議会全体での投票が行われる見通しです。
当初、市はカーフュー違反容疑で逮捕された多くの人物に対する容疑を維持していました。しかし、ハミルトン郡の市営判事の判決が矛盾していたため、一部の判事は容疑を却下し、他の判事は容疑を維持することを選択していました。最終的に、市はこれらの事件を州控訴裁判所に上訴する前に、事件を却下することを決定しました。
社会的背景
この和解は、米国における警察の説明責任と市民の権利保護に関する広範な議論の一部です。2020年のジョージ・フロイドの死亡から始まった抗議活動は、米国全土の多くの都市で警察改革と説明責任の要求を促しました。シンシナティの和解は、このような市民と執行機関との間の対立を解決する一つの方法を示しており、今後の同様の訴訟や和解に影響を与える可能性があります。
この事件は、抗議活動中の警察の対応、市民の基本的権利の保護、および法執行機関の説明責任に関する重要な法的先例となることが期待されています。
