中国軍が台湾周辺で大規模軍事演習を実施、2日連続で長距離実弾射撃訓練
中国軍は2025年12月29日から30日にかけて、台湾を取り囲む形で大規模な軍事演習「正義使命ー2025」を実施しました。この演習では長距離実弾射撃訓練が行われ、中国側は「すべての目標に命中した」と発表しています。演習は台湾周辺の5つのエリアを指定し、実弾射撃訓練が実施されるとしており、台湾の空域と海域の封鎖能力を示すものと見られています。
演習の規模と内容
中国軍東部戦区による今回の軍事演習は、過去の演習と比べても「さらに台湾に近付いた」内容となっています。演習では以下のような訓練が実施されました：
- 北部海域での長距離実弾射撃訓練（29日午前）
- 南部海域での陸海空軍合同の実弾射撃訓練（30日午後）
- 東部海域での強襲揚陸艦によるドローンや駆逐艦との部隊輸送、奇襲、港湾制圧訓練
発射された実弾は台湾の南の海域に正確に着弾したとされており、中国の軍事専門家は「封鎖能力が高まり、正確な打撃が可能になった」と演習の成果を強調しています。
中国政府の公式立場
中国外務省の林剣報道官は、この軍事演習について「台湾独立勢力への厳しい戒めで、国家の主権と領土を守るために必要な行動」だと強調しました。さらに報道官は、台湾の民進党政権を名指しで非難し、「アメリカに依存して独立を図ろうとする『平和の破壊者』『戦争の扇動者』」だと述べています。
中国側は「ボトムラインを越えて挑発するいかなる悪質な行為も、必ず中国の断固たる反撃に遭う」と主張しており、強硬な姿勢を示しています。
台湾への影響
今回の軍事演習により、台湾の航空交通に大きな影響が出ています。中国軍は台湾周辺の一部区域で船舶や航空機が侵入しないよう事前に警告をしており、国際便などの利用客およそ10万6000人に影響が出ると見られています。
台湾の頼清徳総統は、この演習に対して「中国は軍事的圧力を急激に高めている」として反発しており、台湾政府として警戒を強めています。
国際社会の反応
アメリカ下院特別委員会は、中国軍による台湾周辺演習を非難し、「意図的な状況の激化」だと述べています。国際社会でも、この軍事演習に対する懸念の声が上がっており、台湾周辺の情勢が一層緊迫していることが示されています。
背景と分析
今回の大規模な軍事演習の背景には、複数の要因が考えられます。一つは、中国軍の新司令官が就任した直後の演習実施であり、汚職の影響払拭をアピールする意図がある可能性があります。また、演習規模や実施方法を見ると、中国が台湾に対する軍事的な圧力をさらに強化する姿勢を明確に示そうとしていることが窺えます。
中国側が強調する「台湾独立勢力への戒め」というメッセージは、台湾の民主的な政権選択を抑圧する意図を反映していると考えられます。演習を通じて、中国は自らの軍事力を誇示し、台湾とそれを支持する国々に対する威圧を強めているのです。
今後の展望
台湾周辺の軍事的緊張は、今後も継続する可能性が高いと見られます。演習終了後も、中国軍は台湾への圧力を維持する可能性があり、台湾政府とアメリカを含む国際社会の動きが注視されています。航空交通をはじめとした経済活動への影響も継続する可能性があり、地域の安定に向けた対話と外交努力がより一層求められる状況となっています。
