米国でSNAP給付金停止をめぐる大規模訴訟が相次ぐ
26州とワシントンDCが連邦政府を提訴
アメリカの食糧支援制度における重大な危機が発生しています。ニューヨーク州のレティシア・ジェームス司法長官をはじめとする26州の司法長官とカンザス州、ケンタッキー州、ペンシルベニア州の知事、そしてワシントンDCが、連邦政府が違法にSNAP(補足栄養支援プログラム)の給付金を停止しているとして、米国農務省(USDA)を提訴しました。このSNAPは食料品の購入を支援するプログラムで、一般にはフードスタンプとして知られています。
今回の訴訟は、連邦政府の予算危機に関連して提起されました。連邦政府の一部の機関が資金不足に陥るシャットダウン状態の中で、USDAは11月のSNAP給付金の支給を停止することを決定しました。この決定により、4,000万人以上のアメリカ人がSNAP給付金を受け取ることができなくなります。ニューヨーク州だけでも、約300万人がこの影響を受けることになります。
給付金停止の違法性を主張
提訴した州の指導者たちは、このSNAP給付金の停止は連邦法に違反していると強く主張しています。具体的には、食糧栄養法(Food and Nutrition Act)では、「本プログラムに基づく支援は、すべての適格世帯に提供されなければならない」と明記されています。また、行政手続法に基づき、この措置は恣意的で不当な決定であるとも指摘しています。
ジェームス司法長官は声明の中で、「USDAは給付金を継続するための資金を保有している」と述べています。実は、連邦議会は予算不足の時期にも給付金が途絶えないよう、数十億ドルの予備資金を特別に配分することを決めていたのです。この予備資金があるにもかかわらず、行政は11月1日の給付金支給を停止しようとしているとして、州側は強く反発しています。
すでにカードに読み込まれた給付金の行方
今回の訴訟に関連して浮上している重要な疑問の一つが、「EBTカードにすでに読み込まれた給付金はどうなるのか」という問題です。EBT(Electronic Benefits Transfer)カードは、SNAP給付金を受け取るための専用のプリペイドカードです。この問題について、多くの家族が不安を抱えています。
すでにカードに入金されている給付金については、11月1日の期限後も利用できる可能性が高いとされています。ただし、新たに支給予定だった11月分の給付金については、この行政措置により支給されないという状況になっています。つまり、カードにすでに残っている金額は使用できますが、その後の新規給付がないという状態が生じる可能性があるのです。
背景にある食糧危機への懸念
SNAPは米国における食糧支援の柱となっているプログラムです。このプログラムは、低所得家庭が食料品を購入するために必要な支援を提供しており、子ども、高齢者、障害者など、特に脆弱な立場にある人々の生活に大きな影響を与えています。
訴訟に参加した州の指導者たちは、SNAP給付金の停止が広範な飢餓につながる可能性があると警告しています。連邦政府のシャットダウンが解決されるまでの間、何百万人ものアメリカ人が日々の食事を確保できない状況に陥る可能性があるのです。
司法による迅速な判断が求められている
提訴した州側は、裁判所に対して暫定的な差し止め命令を求めています。これにより、USDAに対して、利用可能な予備資金を使用して、すべての対象州の11月のSNAP給付金を維持することを強制することができます。時間が非常に限られており、11月1日が給付金の支給期限となっているため、司法判断の迅速性が極めて重要となります。
政府の対応と今後の見通し
事態が急速に進展しています。ジェームス司法長官とその他22人の司法長官は先週金曜日、USDA長官ブルック・ロリンズ氏に対して、シャットダウン期間中の食糧支援保護の計画についての説明を求める書簡を送付していました。しかし、その時点では返答を受けていなかったと述べられています。
今回の大規模な連邦政府訴訟により、数百万のアメリカ人の生活を左右する重要な判断が、今後の裁判所の決定に委ねられることになります。食糧支援制度の継続性が社会的課題として、全国的な注目を集めています。
まとめ
連邦政府のシャットダウンに伴うSNAP給付金の停止は、単なる行政上の決定ではなく、数千万人の生活と直結した深刻な問題です。26州の指導者たちによる統一行動は、この危機に対する強い反発を示しており、食糧支援の継続を求める声が全国レベルで高まっていることを象徴しています。特にすでにEBTカードに読み込まれた給付金の扱いなど、実務的な課題も多く残されており、今後の司法判断と政府の対応が、多くの家族の生活に直接的な影響を与えることになるでしょう。


