岩田明子が探る石破内閣の急上昇する支持率――今、政治の現場で何が起きているのか
1. はじめに――揺れる政局と世論のうねり
2025年8月、石破茂首相率いる内閣の支持率が急上昇しました。直前の参議院選挙での自民党大敗、いわゆる「石破おろし」騒動の最中であったにもかかわらず、まるで世論が一点集中するように支持を集め始めたのです。これを受け、解説委員の岩田明子は、数々の政治家や専門家の分析を交えながら、舞台裏の動きと今後の展望を丁寧に追いかけています。
2. 最新の世論調査で明らかになったこと
- 共同通信(8月23〜24日調査):内閣支持率35.4%(前回比+12.5ポイント)へ大幅上昇。
- 「首相は辞任すべき」40%、「辞任は必要ない」57.5%と、「続投」支持が過半数を超えた。
- ANNの調査(同時期)では、支持率34.1%。自民支持層では「辞任すべきでない」が65%に達した。
- 「政権担当は自民党総裁任期まででよい」とする意見が36%、「すぐ辞めてほしい」は25%。
これまでの厳しい状況から一転、内閣、特に石破首相その人に対し、世論の「期待と諦め」が織り交ざったような支持が集まりつつあります。
3. 専門家の視点――舛添要一氏の分析から
前東京都知事・国際政治学者の舛添要一氏は、こうした急上昇を「各メディアの世論調査に驚くべき傾向が出ている」と指摘します。「何が起こっているんだろうか」と投げかけた上で、「政治の閉塞感」をあげ、「どうしようもない…」と嘆くように現状分析しました。
舛添氏は、「石破総理が個人として突出した改革的ビジョンを直接訴えたわけでもない。むしろ、長らく続く政界の停滞感、野党の不調など、“他に誰ができるのか”という消極的な支持もある」と一歩引いた立場で解説しました。「ボヤキ」をこぼす首相の姿に対し、「最高のブラックジョークだ」とも揶揄しつつ、現政権への期待というよりは、大きな政界の閉塞に国民が諦め気味で「現状維持」を選択しがちな心理を読み解いています。
4. 世論の本音――なぜ支持が伸びたのか
- 長期化する政治不信:新党や野党への絶対的な期待感が乏しい中、「他に選択肢なし」とする消極的支持が浮上。
- 石破首相の“地味さ”:派手さや強いリーダーシップよりも、“堅実さ”や“愚直さ”を評価する声。
- 退陣論の低下:党内外の“辞任圧力”が逆説的に同情票や「かわいそう」という心理的支持を高めた側面も。
- 総裁人事への冷静な目:世論としては、政局の混乱よりも「しばらく安定的に任せる」という空気が強まった。
特にANN調査では、「ほかの政党を連立に加えたほうが良い」は15%、「政策ごとに野党の協力を求める方が良い」とした人が約7割と、大連立よりも個別協力による政権運営を望む声が主流です。
5. 政界内外の反応――田村委員長、山田惠資解説委員の視点
自民党内では「石破おろし」論もくすぶる中、田村委員長は「内閣支持率上昇は一時的な現象であり、国民の本音は自民党政治への“ノー”が根底にある」と警鐘を鳴らしています。また山田惠資・時事通信社解説委員は、「世論は続投支持が『多数派』だが、その基盤は極めて不安定で、首相進退の行方はいまだ不透明」と分析します。
「支持率上昇=政権安定」では決してなく、“危うい綱渡り”ともいえる状態が続いているという指摘が要所で目立ちます。
6. 次期総裁レースと世論の熱量――後継者への期待と冷めた視線
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次の総裁候補としては、
- 小泉進次郎氏
- 高市早苗氏
- 河野太郎氏
- 石破茂首相(現職・4位)
石破首相自身が「後継候補」のトップでない点も、政界の流動性と国民の「決め手のなさ」を映し出します。これは従来の“本命不在レース”の再現であり、「変革」は求めつつも「不確実な時流」を嫌う日本独特の世論動向ともいえます。
7. 岩田明子が注目する「これから」の論点――政権運営の持続力とは
岩田明子は、今回の急激な支持率上昇には、日本社会特有の心理、そして「現状維持志向」の強さが色濃く表れていると分析します。その一方で、「支持率高止まり」とは言いがたく、出処進退をめぐる政局の大波は依然として引く様子を見せません。
また、これからの政権運営には
・党内結束
・野党との政策協力
・社会保障や経済政策への現実的な対応
など、具体的な成果が厳しく求められるでしょう。そして、世論が次にどのような「支持理由」を掲げるのか、もしくは突き放すのか――「揺れる民意」と「不透明な政局」の主導権争いは、今後も続く見通しです。
8. おわりに――閉塞感の打破は可能か?
総じて、今回の支持率上昇は、石破内閣の政策やリーダーシップを積極的に評価したというよりも、「今の混乱をできるだけ穏やかに乗り切ってほしい」という国民の控えめな願望や「他に選択肢がない」現実が投影されたものです。
岩田明子は「今後の政局は実際の政策遂行力でのみ評価されるタフな時代に突入した」とし、次期リーダー像や政党の枠にとらわれない幅広い議論が必要になると結びました。
この「奇妙な上昇」の裏側――それは、新しい政治の主役を求めて模索する日本社会そのものの姿と言えるでしょう。