ドイツ世論調査で何が起きている?AfD後退、左翼党浮上という新たな動き

ドイツの最新世論調査で、極右政党として知られる「AfD(ドイツのための選択肢)」が支持率を落とし、逆に左翼党(Die Linke)が緑の党(Grüne)を上回るという興味深い結果が相次いでいます。
さらに、与党・主要政党であるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)による、いわゆる「黒赤(シュバルツ・ロート)」陣営も伸び悩み、低迷が続いていることが伝えられています。

本記事では、ニュース内容として挙げられた
「INSA-Sonntagstrend」
「Schwarz-Rot kommt nicht voran」
「Dawumの最新選挙世論調査」
といった話題を手がかりに、ドイツの政党勢力図がどのように揺れ動いているのかを、やさしい言葉で整理してご紹介します。

AfDとはどんな政党?これまでの伸長と現在の「失速」

AfD(ドイツのための選択肢)は、移民・難民政策への強硬な反対姿勢などから、ドイツ国内で「極右政党」と位置づけられることが多い政党です。
2025年2月のドイツ連邦議会選挙では、AfDは得票率20%台を獲得し、第2党の座を占めるまでに成長しました。

日本語の解説記事でも、「外国人排斥を主たる政治目標にして活動するAfDに支持が集まる」といった指摘があり、特に東ドイツ地域での支持の高さが目立つとされています。
しかし、今回話題となっているINSA社の「Sonntagstrend(サンデートレンド)」と呼ばれる定期世論調査では、そのAfDが支持を落としていると報じられています。

調査の詳細な数値はここでは示されていませんが、ニュース内容から読み取れるポイントは次の通りです。

  • これまで右派ポピュリズムの受け皿として支持を伸ばしてきたAfDが、直近の調査では支持率を減らしている
  • 一方で、左側のスペクトラムに位置する左翼党(Die Linke)が支持を伸ばし、他の進歩派政党との差を縮めている

もともとAfDは、2020年代に入ってから徐々に支持を増やしてきましたが、それでも得票率は約20%前後で頭打ちとの評価もあります。
今回のように、定期調査で「支持が一時的に後退する」ことは、ドイツの政党政治がなお流動的であることを示していると言えるでしょう。

左翼党が緑の党を追い抜くという「サプライズ」

ニュース内容の2つ目・3つ目で共通しているのが、「左翼党が緑の党を追い抜いた」という点です。
これは、ドイツの政治状況を理解するうえで、かなり大きな意味を持ちます。

2025年2月の連邦議会選挙では、環境政党である緑の党は約11〜12%の得票率で、信号連立(SPD・緑の党・FDP)の一角として一定の存在感を維持しました。
一方、分裂や支持低迷に悩まされてきた左翼党(Die Linke)は、2021年選挙では5%を割り込み苦戦していたものの、2025年選挙では約9%前後まで回復し、「復活」とも言われました。

さらに、左翼党は若い世代からの支持が比較的高いことも指摘されています。18〜20代前半の層では、他党を上回る支持を得ているとの分析もあります。
こうした背景を踏まえると、最新の世論調査で
「左翼党が緑の党を抜き、左派陣営内での序列が変化した」
という報道は、決して突飛なものではありません。

Dawumの集計に象徴されるように、

  • 左翼党:緑の党を上回る位置
  • AfD:依然として高いがやや後退しつつ、なお保守陣営(CDU/CSU)と競合する位置

という構図が描かれており、ドイツ政治の「右と左」の両端が、依然として有力な選択肢となっていることがわかります。

「黒赤(Schwarz-Rot)」の伸び悩み——CDU/CSUとSPDの苦戦

もう一つ重要なのが、「Schwarz-Rot kommt nicht voran(黒赤は前に進めない)」という表現に象徴されるように、CDU/CSUとSPDという二大既成政党が低迷から抜け出せていないという点です。

2025年2月の連邦議会選挙では、

  • CDU/CSU:およそ28〜29%(第1党)
  • SPD:およそ16%台(歴史的低水準)

という結果になりました。CDU/CSUは第1党の地位を取り戻したものの、かつてのような30%台半ば以上の圧倒的な支持には届いていません。
SPDに至っては、1880年代以来とも言われるレベルまで得票率を落とし、中道左派の求心力低下が明らかになりました。

今回の世論調査でも、この「黒赤」コンビがなかなか支持を伸ばせず、低水準が続いていると伝えられています。
その理由としては、各種分析で次のような点が指摘されています。

  • 長期にわたる与党・大連立経験により、「変化」を求める有権者から距離を置かれている
  • 移民・難民、環境、社会保障などで、左右のポピュリスト政党に論点を奪われている
  • 特に若年層で、CDU/CSUやSPDよりも、左翼党や緑の党、あるいはAfDへの支持が目立つ傾向

こうした中で、「黒赤が多数派を単独で構成する」という、かつてドイツ政治の定番だった構図が崩れつつあるという見方もできます。

「AfD前、左翼党と緑の党の順位逆転」——Dawumが示す勢力図

ニュース内容3では、Dawumの最新世論調査として、
「左翼党が緑の党を上回り、AfDがCDU/CSUを上回る形で先行している」
という結果が紹介されています。

Dawumは、さまざまな調査会社の結果をまとめて掲載するプラットフォームとして知られており、ドイツ国内の最新の政党支持率の「温度感」をつかむうえでしばしば参照されます。
Dawumに見られる傾向としては、

  • 地域や時期によっては、AfDがCDU/CSUを上回る調査が出ることがある
  • 左翼党が5%台〜10%近くまで支持を伸ばし、緑の党とほぼ拮抗、あるいは上回るケースも出てきている

といった点が挙げられます。

もちろん、世論調査はあくまで「その時点での意識のスナップショット」であり、選挙本番の結果とは必ずしも一致しません。
しかし、複数の調査で似た傾向が繰り返し確認されるようになると、それは有権者の意識変化の「流れ」を示すサインと見ることができます。

AfDの支持は「限界」なのか、それとも一時的な調整か

AfDが支持を減らしているというINSAの結果は、多くの人にとって気になるニュースだと思います。
2025年の連邦議会選挙ではAfDが第2党に躍進したものの、専門家の中には、

  • 「AfDの支持率は20%前後で頭打ち」
  • 「他党が連立を拒否しているため、政権参加の現実性は乏しい」

といった冷静な見方もあります。

実際、日本語の分析でも、
「AfDは第2党に躍進したが、次の政権を担うべき政党としては、なお懐疑的に見られている」
との指摘があり、
有権者の一部は「現政権への不満の表明としてAfDを選んでいるが、政権担当能力までは期待していない」という評価も紹介されています。

今回のように、世論調査でAfDの数字が下がる局面が出てくることは、

  • AfDが「常に右肩上がり」ではないこと
  • 情勢やテーマによって、有権者が再び中道や左派政党に戻る可能性があること

を示す材料としても受け止められています。

左翼党の「復活」と緑の党の苦戦

近年のドイツ政治で興味深いのは、左翼党の支持回復と、緑の党の伸び悩みです。

左翼党は、かつて東ドイツの与党だった政党を淵源とし、再分配政策や社会保障拡充などを前面に掲げる左派政党です。
2020年代前半には、新党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」の分離により支持を奪われ、一時は5%条項を下回る懸念もありましたが、2025年の連邦議会選挙では得票率約9%まで盛り返しました。

また、女性票や若年層からの支持が比較的厚いことも、選挙後の分析で指摘されています。
これに対して、環境政策の旗手として一時は人気を誇った緑の党は、連立政権入り後の政策調整やエネルギー危機対応などをめぐって批判も受け、支持率を減らす局面が増えています。

こうした背景を考えると、世論調査で
「左翼党が緑の党を上回った」
という結果が出てきているのは、
有権者が「よりはっきりとした社会的公正や再分配を求める声を強めている」兆候として捉えることもできます。

有権者の「迷い」とドイツ政治のこれから

今回取り上げた
INSA-Sonntagstrend
「Schwarz-Rot kommt nicht voran」
Dawumの最新世論調査
という3つのニュースは、
それぞれ別々のトピックのようでいて、実は1つの共通したメッセージを放っています。

  • 極右のAfDは依然として高い支持を保ちつつも、必ずしも一方的な上昇を続けているわけではない
  • 左翼党が緑の党を追い抜くなど、左派内部の力関係が変化している
  • CDU/CSUとSPDという伝統的な二大政党は、依然として決定的な信頼回復に至っていない

言い換えれば、ドイツの有権者は、

  • 従来の「中道の安定」への信頼を揺らしつつも
  • 極右への全面的な「乗り換え」にも慎重であり
  • その間で、左翼党や緑の党などへの支持を模索している

という、複雑な心境にあると言えるかもしれません。

もちろん、世論調査は日々変化し、今後の情勢もまだ流動的です。
ただ、2025年の総選挙結果やその後の各種調査を眺めると、
「ドイツ政治は、右でも左でも、中道でも、一つの安定した答えを見いだせていない」
という現実が、じわじわと浮かび上がってきます。

AfDの一時的な後退、左翼党の浮上、緑の党やSPDの苦戦、CDU/CSUの伸び悩み――。
これらは、単なる数字の変動ではなく、有権者一人ひとりの迷いや期待、不安や希望の反映でもあります。
今後も、ドイツの世論調査や選挙結果を丁寧に追っていくことで、この国の民主主義がどの方向へ進もうとしているのかが、少しずつ見えてくるはずです。

参考元