日本、防衛省が人工衛星を含む宇宙防衛指針を初策定 - 中国は反対の姿勢を表明

2025年7月28日、防衛省は初めてとなる「宇宙領域防衛指針」を公表し、人工衛星を含む宇宙空間の防衛能力強化に乗り出しました。この指針策定は、中国やロシアによる「キラー衛星」などの攻撃的宇宙兵器開発が進む中、宇宙の戦闘領域化が急速に進展している現状を踏まえたものです。これに対して、中国は日本の宇宙防衛強化に反対の意向を示しています。

宇宙領域防衛指針の主な内容と背景

  • 宇宙の戦闘領域化拡大の認識:中国やロシアが他国の人工衛星を無効化する攻撃兵器「キラー衛星」の開発を進めていることにより、宇宙空間における脅威とリスクが増大。そのため宇宙空間は単なる利用空間から防衛の対象へと変化している。
  • 国民生活基盤としての宇宙利用:通信や観測を通じて、宇宙空間の利用は我々の生活の基盤となっており、これを守ることが重要視されている。
  • 衛星通信ネットワークの強化:通信妨害への耐性を高め、同盟国や同志国同士の相互運用性を強化する方針。
  • 衛星防護技術の開発:自国の人工衛星を守るための「ボディーガード衛星」の開発・実証を2029年度までに目指し、射程外から敵を攻撃できる「スタンド・オフ防衛能力」の確立にも着手。

以上の指針は、中谷元防衛大臣が山口県の航空自衛隊防府北基地で運用される宇宙監視レーダーを視察した際に公表されました。中谷大臣は「迅速に進化する民間技術を如何に取り入れていくかが鍵であり、防衛省として全力で取り組むべき最優先課題で待ったなしの状況だ」と強調しています。

宇宙監視レーダーの役割と防衛強化への展望

山口県の防府北基地に配備されている宇宙監視レーダーは、人工衛星や宇宙ゴミの監視など、宇宙空間の状況把握に重要な役割を果たしています。今回の視察では、こうした監視技術の重要性が再確認されたと同時に、宇宙空間の変化を素早く捉え、防衛対応に生かすための指針に反映されています。

指針の策定により、防衛省は官民連携で次世代の情報通信技術を活用し、宇宙分野の防衛能力を包括的に強化する計画です。これには人工衛星の防護だけではなく、宇宙空間を利用した先制的な防御能力の構築も含まれています。

国際的な反応と中国の懸念

今回の指針発表に対し、中国は日本の宇宙防衛強化に反対の姿勢を明確にしています。中国側の懸念は、日本の宇宙防衛強化が軍事的緊張の高まりにつながり、宇宙の軍備競争を助長すると考えているためです。こうした対立は、近年、宇宙領域が安全保障上の重要な戦略的地域として注目される中、日中両国の間での緊張が表面化した形となっています。

まとめ

  • 日本は初の「宇宙領域防衛指針」を策定し、人工衛星を含む宇宙空間の防衛能力強化に本格的に着手。
  • 宇宙の戦闘領域化を踏まえ、通信網の強靭化や衛星防護技術の開発などで安全保障を強化。
  • 中谷元防衛大臣は、官民一体での技術取り込みと迅速な対応が不可欠と強調。
  • 中国はこの動きに反対し、宇宙軍備競争の激化への懸念を示している。

今後、日本の宇宙防衛は、技術革新を活用しつつ国際的な安全保障環境の変動にも敏感に対応する必要があります。宇宙空間が我が国の安全保障の重要な一角を担う時代の幕開けと言えるでしょう。

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