ジャパンディスプレイ(JDI)、主力パネル工場を年内に整理へ

日本の主要ディスプレイメーカーであるジャパンディスプレイ(JDI)は、2012年に国内の主要液晶メーカーを統合して発足しましたが、2025年7月28日、日本経済新聞の報道によると、千葉県茂原市にある主力のディスプレーパネル生産工場を今年中に整理する方針を固めました。当初は2026年3月の稼働停止を予定していましたが、工場の稼働率が低迷し40%程度にまで落ち込んだことを受け、固定費削減のために時期を前倒しする決断をしたとされています。

Apple向けiPhone用ディスプレイ生産の減少が経営悪化の要因

この主力工場はかつて、AppleのiPhone用ディスプレー製造を中心に稼働していました。しかし、AppleがiPhoneに有機発光ダイオード(OLED)を搭載し始めたことで、JDIの生産量は急激に減少。さらにアップルウォッチ向けの小型OLEDや自動車用ディスプレイの生産も行っていましたが、これらの需要も減少し、工場の稼働率が著しく低下してしまいました。その結果、工場の保守運営を続けることが難しくなり、閉鎖を決定するに至りました。

大規模なリストラと事業再編も

JDIは2025年の5月に全社で約1500人の希望退職者募集を開始し、人員削減を急速に進めています。かつて日の丸液晶の象徴的存在だった同社は、液晶パネル事業からの撤退を決断し、事業拠点を石川県川北町の石川工場に集約。液晶以外の事業、例えばセンサーや次世代半導体技術といった新たな収益源開拓を急いでいます。さらに車載向け事業は2025年10月に新会社「AutoTech(オートテック)」として切り離す計画が進行中で、外部資金の導入や他企業との協業も模索しています。

技術面での進展も報告、「車載用有機ELの寿命3倍」に成功

一方で、JDIは車載用有機ELディスプレイの寿命を従来製品の3倍に延ばす技術開発に成功しました。これは高品質な車載ディスプレイ需要に応える試みですが、製造は外部委託に頼っているため、委託先の確保が喫緊の課題となっています。車載用OLED分野での生産委託先の確保と安定供給が今後の重要な鍵となりそうです。

経営環境の厳しさと今後のJDIの展望

2025年3月期の決算では、JDIは売上高が前期比で21.4%減の1880億円となり、営業損益は370億円の赤字を計上しました。また当期純損失は782億円に拡大し、これまでの経営不振がいっそう深刻化しています。2026年3月期の業績予想は未定とされ、今後の厳しい経営環境が続くことが予想されています。

JDI会長兼CEOのスコット・キャロン氏は記者会見で「想定を超える赤字体質となり、もっと早く決断すべきだった」と述べ、今回のリストラと事業整理に対する強い決意と心苦しさを示しています。国内の液晶・有機EL産業の苦境は同社だけにとどまらず、シャープをはじめとする他の日本企業でも同様の構造改革が急務となっている状況です。

まとめ

  • ジャパンディスプレイ(JDI)は2025年内に千葉県茂原市の主力パネル生産工場の整理を決定し、Apple向け生産は事実上ゼロに。
  • AppleのOLED搭載拡大でiPhone用ディスプレイ需要が減少し、工場稼働率は40%まで低下。
  • 約1500人に及ぶ希望退職者募集とともに、液晶事業からの撤退・事業拠点集約を推進。
  • 車載用OLEDの寿命3倍の技術開発に成功、しかし生産委託先の確保が課題。
  • 2025年3月期は赤字拡大、今後も厳しい経営環境が続く見込み。

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