歯科医院は「斜陽産業」なのか?倒産・休廃業の過去最多ペースの背景

2025年上半期、医療機関の倒産件数は過去最多の35件に達し、その中で特に「歯科医院」の倒産・休廃業が急増しています。帝国データバンクの調査では、2024年の歯科医院における倒産件数は前年比で倍増し、25件を記録しました。これは、歯科業界において異例の事態とされ、業界全体が「斜陽産業」と評される背景となっています。

その要因としては、まず診療報酬の伸び悩みに対し、材料費や人件費、光熱費などの経費が急速に上昇していることが挙げられます。診療報酬改定は毎年行われるものの、それらは費用高騰を十分にカバーできていません。医療機関の経営はますます厳しくなっており、結果的に多くの歯科医院が経営困難に陥っています。

また、歯科医院の競争激化も一因です。都市部を中心に新規開業が増える一方で、人口減少や若い世代の歯科利用率の低下も指摘されており、需給のバランスが崩れている状況があります。これにより、患者数の減少を招き、経営の圧迫要因となっています。

倒産増加の背景にある本当の理由

単なる経済的理由だけではなく、業界全体の構造的な変化も見逃せません。東洋経済オンラインの報道によれば、従来の「治療中心」の歯科医療から、「予防中心」の医療サービスへのシフトが急務であることが業界の大きな課題とされています。

これまでの歯科医院は虫歯や歯周病など、症状が出てからの治療に重きを置くスタイルが一般的でした。しかし、健康意識の高まりとともに、症状を未然に防ぐ予防医療や定期的なメンテナンスの重要性がクローズアップされています。にもかかわらず、多くの既存の歯科医院はこの変化に対応しきれていません。

そのため、旧来の経営モデルが通用しなくなり、経営継続が難しくなっているのです。

斬新な挑戦:歯のサブスクで予防へシフトする歯科医院の事例

一方で、こうした危機感をバネに新しい試みに挑戦する歯科医院も現れています。例えば、ある歯科医院では「歯のサブスクリプションサービス」を導入し、治療から予防への重点置換を図っています。この医院は、なんと歯科衛生士を31名も抱える大規模な体制を整え、予防歯科に特化したサービスを展開しています。

このサブスクサービスでは、定額料金で通院者が定期検診やクリーニングを受けられるようにし、問題の早期発見と予防を促進。治療だけに頼らず、患者の歯の健康を長期的に守ることを目指しています。

このような取り組みは、患者にとっても費用の予測が立てやすくなり、医院にとっても安定した収益基盤の確立につながる可能性があります。治療中心から予防中心へと経営モデルを変えることで、業界の再生を図る希望の光となっているのです。

今後の歯科医院と斜陽産業の見通し

歯科業界の現状は確かに厳しく、多くの医院が倒産や休廃業に追い込まれているのは事実です。しかし、この状況が即「斜陽産業」であることを意味するわけではありません。業界の変革期にあると言ったほうが正確でしょう。

これからの歯科医院には、単なる治療提供だけでなく、患者の健康を総合的にサポートするサービス提供能力が求められています。リアルなニーズを捉え、予防医療やICTの活用など新たな価値創造に挑む医院は逆に成長の可能性を秘めています。

実情としては倒産件数が過去最多を記録しているものの、これをきっかけに業界全体の見直しとサステナブルな経営モデルの構築が進めば、歯科医療は再び輝きを取り戻すことも十分に可能です。

「斜陽産業」という単純なラベルにとらわれず、現状を正しく理解したうえでの改革が望まれていると言えるでしょう。

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