ヒューリック、太陽光インフラファンドに対してTOBを実施
不動産大手のヒューリック株式会社(証券コード:3003)は、2025年6月30日に太陽光発電所を主な運用資産とする「カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人」に対して株式公開買い付け(TOB)を開始しました。
このTOBは純投資目的で行われ、発行済み投資口の約20%にあたる8万5885口を取得する計画です。買付価格は1投資口あたり8万6710円で、TOB開始前の終値7万5400円に15%のプレミアムを上乗せした価格となっています。買付総額は約74億4700万円にのぼります。
買付期間は2025年7月1日から8月13日までの30営業日で、決済開始日は8月20日の予定です。買付け代理人はみずほ証券が務めています。
一方、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人自体はこのTOBについて意見表明を見合わせており、応募の可否は投資主の判断に委ねられています。株式は引き続き東証インフラファンド市場に上場される見込みです。
背景と意味合い
ヒューリックは事業の多角化や安定した収益基盤の確保を目的に、不動産以外のインフラ投資を積極的に推進しています。その一環として、環境関連資産である太陽光発電に投資することでポートフォリオの強化と収益安定化を図る狙いがあります。
ヒューリックの2025年4~6月期決算、経常利益は前年同期比12%減少
2025年7月に発表されたヒューリックの2025年4~6月期(第2四半期)決算では、経常利益が前年同期比で12%減少しました。経常利益は665億4700万円となり、アナリストの事前予想を下回る結果となっています。
売上高やその他収益面では一部持ち直しがみられるものの、減益要因としては不動産市況の調整や、運営コストの増加、金融費用の上昇などが挙げられています。また、足元の経済環境の不確実さも経営に影響を及ぼしているとみられます。
市場の反応と今後の展望
今回の決算発表にはやや慎重な見方が広がりましたが、ヒューリックがインフラ投資に注力する中長期戦略は評価されています。特に、今回のTOBのように、エネルギーインフラファンドへの資産取得を通じて、安定した収益基盤を築く方針は市場関係者から注目されています。
ただし、短期的には減益傾向が続く可能性もあり、ヒューリックがどのようにして不動産事業とインフラ投資のバランスを取っていくのかが注目されます。
まとめ:ヒューリックの戦略と財務状況
- TOB実施:カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人の株式20%を取得するTOBを2025年7月から開始。太陽光発電を中心としたインフラ投資を強化。
- 決算内容:2025年4~6月期の経常利益は前年同期比12%減。アナリスト予想を下回り減益。
- 戦略意図:不動産中心の事業からインフラ投資にも資源を配分し、多角化と収益安定化を目指す。
- 市場動向:構造変化の中での減益だが、今後のインフラ資産取得による収益基盤強化に期待。
ヒューリックの動きは、従来の不動産開発だけにとどまらず、新たな成長分野としてのインフラ投資に勢いをつける試みといえます。投資家や市場参加者は、同社のTOBの成否と中長期的な経営戦略の進展に引き続き注目することになるでしょう。