金(Au)が14倍の融点まで過熱される驚異の実験成果

2025年7月24日、科学研究の最前線で驚くべき成果が発表されました。それは、金(Au)をその融点の14倍の温度まで加熱しても溶けないという、これまでの常識を覆す実験結果です。

金の融点とは何か?

まず、金の融点について簡単に説明しましょう。融点とは、固体が液体に変わる温度のことを指します。通常、物質は融点に達すると熱エネルギーの影響で結晶構造が崩れ、液体化します。金の場合、その融点は約1064℃です。

エントロピー増大の法則と「エントロピー崩壊(Entropy Catastrophe)」

物質が溶ける過程には、熱力学の原理が深く関わっています。特に重要なのはエントロピー増大の法則です。これは、自然界ではエントロピー(乱雑さの度合い)が増える方向に変化が進むという法則です。したがって、固体が液体になる際には分子の秩序正しい配列が崩れて乱雑になるため、エントロピーは増大します。これを「エントロピー崩壊(Entropy Catastrophe)」と呼びます。通常この法則により、融点を超えれば固体は液体になります。

今回の研究が成し遂げたこと

しかし今回発表された研究では、このエントロピー崩壊の閾値を超えても金は溶けずに固体のまま超高温に耐えたのです。具体的には、金をその融点の14倍以上、約1万5000℃以上まで加熱したにもかかわらず溶けない状態が観測されました。

  • 通常の融点超過では溶解が起こるにもかかわらず、金は固体のままの状態を維持
  • 熱エネルギーが非常に高いにもかかわらず、結晶構造が維持されているという極めて特異な現象
  • これにより、熱力学の基本的な考え方の再検討を促す結果となった

研究の意義と今後の影響

この発見は、熱力学第二法則の理解を深化させるだけでなく、高温環境に耐える新素材開発やナノテクノロジーへの応用が期待されます。特に金は電子工学や医療、精密機器に広く使われるため、さまざまな産業で恩恵が見込まれます。

また、この研究成果は熱エネルギーの取り扱いやエネルギー状態の制御に関する物理学の最先端の理解に新しい視点を提供すると考えられています。

難解な現象をわかりやすく解説

固体から液体へと変わる際の溶融現象は、エントロピーが増えて「ものがバラバラになる方向」へ進みます。しかし今回は、その「ものがバラバラになる」ことを抑え込んで「固体のまま超高温に耐える」現象が確認されたのです。これは、物質の秩序を保つ力学的または電子的なメカニズムが、従来考えられていたよりはるかに強い可能性を示しています。

つまり、金は非常に高いエネルギーを受けても結晶構造を保持し続け、乱雑になる「エントロピー崩壊」を乗り越えたということです。

まとめ

  • 金は融点約1064℃の14倍以上の温度でも溶けないことが実験で確認された
  • 熱力学のエントロピー増大の法則が示す限界を突破した特異な現象
  • この発見は、高温環境材料の開発や物理法則の理解に革新をもたらす可能性がある
  • 今後はこの現象の詳しいメカニズム解明と実用化に向けた研究が期待される

今回の研究は、物質が高温でどのように振る舞うかを理解する上で新たな指標となり、金の特異な性質がさらに注目されるきっかけとなるでしょう。

参考元