岩屋外務大臣、外務省の組織改革を発表

2025年7月29日、岩屋毅外務大臣は会見で、外務省の新たな組織改革について詳細を説明しました。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や経済安全保障の重要性の高まりを背景に、外務省は8月1日付で大規模な再編を実施し、新しい専門部署を複数設置すると発表しました。

「中東欧バルト室」の新設

まず、欧州局内に「中東欧バルト室」が新設されます。この部署は、ウクライナを含めた中東欧諸国とバルト三国の担当として設置され、ロシアによるウクライナ侵攻の対応や復興支援を集中的に行う役割を担います。具体的には、ウクライナ、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアなど8カ国を管轄し、地域の安全保障と外交対応を強化します。

この新設は、長期化する紛争に対し日本政府が一層組織的かつ継続的に関わっていく姿勢の表れであり、地域の安定化を支援するための重要な体制整備とされています。

経済安全保障・AI専門部署の創設

さらに、経済安全保障を担当する新たな課「経済安保課」も外務省に新設されます。これは約19年ぶりの大規模な組織改変で、経済分野の安全保障に特化した専門部署として、サプライチェーンの安定確保や重要資源の確保、さらには先端技術である人工知能(AI)に関する外交政策を担います。

この課には、経済局の中に「経済外交戦略課」も設置され、AI等の技術問題を含む幅広い経済外交政策の調整を担うことになります。また、欧州局には「欧州経済戦略官」が新設され、EU諸国など欧州経済の動向への対応を強化します。

海外邦人保護体制の強化と他の再編

新設部署以外にも、外務省は海外の日本人を守る体制も見直しています。危機時の対応強化のため、「海外日本人緊急事態部門」などが整備されており、平常時と非常時の両面で邦人支援体制を強化します。

加えて、国連外交関連の組織も再編され、関連する2つの部門を統合して効率化を図る予定です。これにより、国際舞台での日本の発言力をより強化する狙いがあります。

岩屋外務大臣の会見内容

  • 岩屋大臣は、「ロシアのウクライナ侵攻が長期化している現状を踏まえ、外務省では対応力を強化するために新組織の設置を決定しました」と説明しました。
  • 経済安全保障の重要性については、「世界的な地政学リスクの増大に対応し、重要資源の安定供給やAI技術の外交政策を専任で推進する必要があります」と強調しました。
  • 海外邦人の安全確保についても、「平時の支援態勢を見直し、緊急時の体制を強化することが日本の責務です」と述べました。

これらの新設部署と連動し、外務省全体の戦略的な対応力を向上させることで、岩屋外務大臣は国際社会における日本の役割をさらに高めていく意向を示しています。

背景と意義

今回の外務省の組織改革は、2006年以来19年ぶりとなる大規模な改変です。特に中東欧バルト室の設置は、ロシアのウクライナ侵攻を受けての対応が世界的な課題となる中で、日本が地域の安定化に積極的に関与しようとする姿勢を表しています。

また、経済安全保障の分野でAIの専門部署を新設したことは、技術大国である日本が国際的な技術競争や経済安全の脅威に対しても戦略的に対応しようとする動きを象徴しています。サプライチェーンの脆弱性や最新技術の利用規制、投資管理などが主な課題となる中で、国際連携を強化しながら日本の国益を守る狙いがあります。

海外邦人保護の体制強化も、グローバルに拡大する日本人の活動に安全対策の充実を図るものであり、多角的な外交安全保障の推進が求められていることを如実に示しています。

まとめ

岩屋外務大臣が発表した外務省の組織改革は、ウクライナ侵攻という国際的な安全保障の課題への対応と、経済安全保障の強化、そして海外邦人の安全確保を三本柱とした総合的な施策です。これにより、日本の外交政策はより現実の国際情勢に即応したものとなり、国際社会での存在感を高めることが期待されます。

官邸や関係省庁と連携しながら、外務省は新設部署を中心に迅速かつ効果的な対応を進めていく方針です。

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