2025年度最低賃金、1100円台の引き上げも視野に入る議論が進行中
2025年度の最低賃金改定をめぐり、厚生労働省の中央最低賃金審議会での議論が本格化しています。現在の全国平均は時給1055円ですが、物価高騰や政府の方針を受け、1100円台への引き上げが視野に入っています。石破茂首相は「2020年代に1500円を目指す」と明言しており、この政府目標達成のためには25年度から29年度にかけて毎年約7.3%の引き上げが必要とされます。2025年度はその初年度となるため、これまでにない大幅な引き上げ圧力がかかっています。
政府の目標と現状のギャップ
政府は20年代のうちに最低賃金を1500円に引き上げる目標を掲げていますが、現状の全国平均1055円からはまだ遠いのが実情です。実現には今後5年間、継続的に7%を超える引き上げを行う必要があり、そのスタートとしての2025年度の引き上げ額が注目されています。2024年度は平均5.1%(51円)増でしたが、今年度は経済情勢や物価動向を踏まえ6%前後、すなわち63円程度の引き上げ見通しです。これにより全国平均は約1118円程度に達する可能性があります。
都道府県別の状況と課題
- 東京都は最低賃金が1163円と全国で最も高い一方、秋田県は951円と低く、地域間の格差が依然として大きいです。
- 全国全都道府県で最低賃金1000円を達成しているわけではなく、31県は1000円の壁をまだ超えていません。
- 人材流出を防ぐため、多くの都道府県は政府が示す改定目安を超える引き上げを実施している背景があります。
こうした地域格差は今後の課題として残るものの、全県で時給1000円以上を目指す動きが強まっています。
経済や企業への影響をめぐる議論
一方で、経済評論家の高橋洋一氏は「無理な引き上げは労働市場にひずみを生む」と指摘しています。急激な最低賃金の上昇が雇用抑制や価格転嫁の加速につながる懸念があり、企業の賃金支払能力と経済情勢を慎重に考慮する必要があるとの見解です。特に中小企業や地方の事業者に負担が集中する恐れを示しており、引き上げのペースやバランスに注目が集まっています。
今後の展開と審議の行方
厚労省の中央最低賃金審議会は7月末に2025年度の目安を答申し、これを受けて地方ごとの最低賃金が決まります。改定額は10月以降に順次適用される見込みです。労働側は前年を上回る引き上げを強く要求しており、賃金相場の上昇や企業の業績改善も背景に今後の引き上げ幅が決まる重要な局面です。
最低賃金の引き上げは労働者の生活改善や消費拡大に寄与する一方で、企業経営への影響や地域経済の実情を踏まえた慎重な判断が求められています。今年度は特に物価高騰の状況下での改定となるため、政府、労使双方の意思と経済情勢の調整が注目されています。