鹿児島県を襲った台風12号──記録的豪雨と広がる浸水被害
広範囲に及んだ台風12号の猛威
2025年8月21日夕方、台風12号が 鹿児島県日置市付近 に上陸しました。台風は非常にゆっくりとした速さで九州南部を横断し、中心気圧998hPa、最大風速20m/sという勢力を保ちながら進みました。翌22日午前には熱帯低気圧へと変化しましたが、記録的な豪雨をもたらし、河川氾濫や住宅の浸水、車両の水没といった甚大な被害につながりました。
鹿児島県全域に大雨──南さつま市で浸水被害が集中
- 台風の動きが遅かったことで、同じ場所に活発な雨雲が長時間かかり続けた
- 鹿児島市や南さつま市などでは、24時間で300ミリ以上の雨量を記録
- 南さつま市は県内の浸水被害の7割が集中
- 加世田(南さつま市)で345.0mm、喜入(鹿児島市)で339.5mm、指宿(指宿市)で321.5mmと、いずれも8月平年のひと月分を大幅に超える雨量
この猛烈な雨によって、民家や道路は冠水し、川は一気に氾濫しました。住民からは「水があっという間に来て、どうしていいかわからなくなった」という切迫した声も聞かれています。
浸水被害と避難──命を守るための迅速な行動
台風の影響で複数の河川が氾濫し、住宅や道路の広い範囲が水没しました。鹿児島市内では、バスの車内から「まるで川の中を走っているようだ」と表現されるほどの異常な冠水の光景が広がりました。南さつま市の住民は、土砂や泥のかき出し作業に追われ、故障した車両の運び出しに業者が集まる事態となっています。市役所も土日返上で罹災証明書の発行業務を続けるなど、復旧作業に力を尽くしています。
低体温症による搬送──浸水被害の深刻さ
水位がみるみる上がり、自宅で首まで水に浸かった女性が低体温症の疑いで緊急搬送されるという事案も発生しました。激しい雨が長時間続くため、雨がやんでも川の水位は簡単には下がらず、医療機関にも被害の余波が及びました。避難した住民の中には、激しい水浸しや長時間の冷たい水の中で過ごすことで、体調を崩す人も少なくありませんでした。
今後も続く二次災害への警戒
- 台風自体は熱帯低気圧に変わったが、雨雲は消滅したわけではない
- 地盤の緩みや川の氾濫、土砂災害への警戒が不可欠
- 被災地では復旧まで長期化の懸念
- 避難や安全確保は自治体からの情報に注意し、早めに行動を
先の見えない浸水被害も多く、被災地では復旧作業が難航しています。泥と流木で埋め尽くされた住宅地、絡まった草木と水没した車両、断水の続く地域など、雨が去った後も多くの課題が残されています。土砂災害や水害の危険は広範囲に及んでおり、現地では今も復旧と安全確保のための努力が続きます。
地元住民の声──実体験としての被害の深刻さ
- 「あっという間に水が来て、どうしようもなかった」
- 「初めての経験で怖かった。頭が真っ白になった」
- 「車や家の中が水浸しになり、片付けに追われる日々」
災害時の混乱や恐怖を語る住民の声は、記録的豪雨の厳しさと復旧作業の困難さを物語っています。予想以上の早さで水位が上がったため、避難のタイミングに苦慮した家庭も多く、今後、避難計画の見直しや防災意識の向上が求められています。
行政・事業者の対応──復旧と支援の最前線
- 罹災証明書の発行窓口を休日も開設(南さつま市役所)
- 水没車両の回収や運搬を専門業者が担当
- 自治体や地域団体による見回りや高齢者・要援護者への支援活動
- 断水や停電への迅速な復旧対応
行政や地域のボランティアは、避難所運営や物資の提供、医療支援など多岐にわたり懸命の対応を続けています。断水や停電が一部地域で続く中、復旧への希望とともに粘り強く作業が進められています。
台風への備え──今後への教訓
今回の台風12号被害を受け、鹿児島県では今後も定期的な河川整備や災害情報の拡充、防災意識の向上が不可欠です。特に線状降水帯による予測困難な大雨、地域ごとに異なる避難経路や安全確保の方策が重要な課題とされています。住民一人ひとりが「自分ごと」として準備し、気象情報や自治体からの指示を迅速に受け取れる体制構築が求められています。
まとめ──自然災害と向き合う鹿児島の姿
台風12号による記録的な大雨と広範囲な浸水被害は、鹿児島県に住む人々の生活に深刻な爪痕を残しました。しかし、地域が一丸となって復旧に取り組み、行政や事業者、住民が協力して困難を乗り越えようとする姿が随所に見られます。今後も気象や災害情報に細心の注意を払い、災害に強いまちづくりを目指すことが必要です。