ノルウェー・ノーベル賞委員会フリードネス委員長、広島・長崎訪問で核兵器廃絶の重要性を強調
2025年7月27日、ノルウェー・ノーベル賞委員会のフリードネス委員長が来日し、東京都内で記者会見と講演を行いました。被爆80年を迎えることを受けての広島・長崎訪問に際し、同委員長は「今こそ被爆者の声を聞き、核兵器の恐ろしさと被害の実態を世界に伝える責任がある」と強く訴えました。
被爆者の声が世界に伝える「光」
フリードネス委員長は、「被爆者は核兵器がどのようなものかを直接示す生きた証言者であり、その声は世界にとって重要な光だ」と述べました。被爆者の体験を次世代に継承し、記憶を風化させないことが核兵器廃絶に繋がるとの信念を示し、「若い世代の皆さんが記憶の管理人となり、忘却を拒否し声をあげてほしい」と呼びかけました。
「核のタブー」強化への期待
さらに、28日には東京都内で行われた記者会見においてフリードネス委員長は、日本が被爆国として核兵器を使ってはならないという「核のタブー」を強化する特別な責任を負っていることを指摘しました。この「核のタブー」とは、核兵器の使用が絶対に許されないという国際的な暗黙の合意を指し、世界平和の礎となっています。
同委員長は、「このタブーを維持し強化することは、ノーベル平和賞委員会や世界の市民社会にとっても重要な課題だ」とし、被爆者の証言を聞く機会を通じて核の悲惨さを多くの人に理解してもらう必要があると強調しました。
「ヒロシマ1945」展を視察し、写真の力を実感
広島では、「ヒロシマ1945」展の視察も行いました。フリードネス委員長はこの展示について「写真は力強い証言だ」と語り、言葉を超えた被爆の実態を視覚的に伝える重要な手段であることを評価しました。写真が伝える被爆者の苦しみや戦争の悲劇は、多くの人の心に深く刻まれるとの見解を示しています。
被爆者運動への敬意と未来への期待
日本被団協の田中熙巳代表委員も講演に参加し、被爆者運動の歴史と意義について語りました。田中氏は、「被爆者の高齢化が進む中で、私たちの運動を次世代の若者が引き継いでいくことを切に願っている」と述べ、核兵器廃絶に向けた国内外の協力を呼びかけました。
また、被爆者の児玉氏からは個人的な体験を語り、「核兵器が存在すること自体が人道的に許されるものではない。これをなくすかどうかは人間の決断にかかっている」との強いメッセージが届けられました。
核兵器のない世界へ向けて
- ノーベル委員会フリードネス委員長は、核兵器廃絶と「核のタブー」維持の重要性を、広島・長崎の被爆者の声を通じて世界に訴えている。
- 被爆者の証言は、核兵器の現実を理解し、次世代へ継承するための貴重な「光」として位置づけられている。
- 「ヒロシマ1945」展などの展示が被爆の悲劇を伝える強力な手段として評価された。
- 日本には被爆国として核兵器の廃絶に向けて特別な責任があり、その役割をしっかり果たすべきとの見解が示されている。
- 被爆者および支援者の皆さんが次世代に運動を引き継ぎ、核兵器のない平和な世界の実現を目指す決意を新たにしている。
今回のフリードネス委員長の来日と被爆地訪問は、核兵器の恐ろしさを再確認し、それを根絶するための国際的な連携と被爆者の声の重要性を改めて世界に知らしめる機会となりました。