御嶽山噴火から11年 慰霊の登山が行われる

2014年に発生した御嶽山(長野・岐阜県境、標高3067メートル)の噴火から11年を前に、被災者の遺族や関係者が集い、慰霊登山が行われました。7月27日、被災者家族会「山びこの会」による毎年恒例の慰霊登山では、遺族ら15人が噴火の発生時刻である午前11時52分に山頂で黙とうを捧げ、犠牲者を偲びました。

犠牲となった58人と5人の行方不明者を悼んで

噴火では58人が亡くなり、5人がいまだ行方不明のままです。今年の慰霊登山は、そうした多くの命を失った災害を忘れないための祈りが込められています。穏やかな青空のもと、参加者たちは山頂で献花を行い、その後、シャボン玉を空に放ちながら亡き家族や友人に思いを馳せました。

登山道から外れた場所での初めての追悼も実現

今年は特に、これまでの登山道から外れ、噴火時に犠牲者が見つかった場所の近くでも追悼が行われました。山びこの会によると、登山道以外の場所での祈りは今回が初めてであり、遺族が最後に故人がいた景色に思いを重ねられる場となりました。

遺族の声「弟と同じ景色を見られて良かった」

愛知県一宮市の所清和さん(63)は、次男の祐樹さん(当時26歳)とその婚約者の丹羽由紀さん(当時24歳)を御嶽山噴火で失いました。慰霊登山に参加した所さんは、「2人を失った事実は変わらないけれども、こうして毎年登って祈り続けたい」と静かに語りました。

また、登山中に「弟と同じ景色を見られて良かった」と話す遺族の姿もあり、亡き家族とともに同じ自然の中で時間を共有できることへの感謝と深い思いが伝わりました。

慰霊登山の意義と地域への想い

御嶽山噴火は、自然の脅威を改めて教えるとともに、災害遺族の心の傷や地域の防災意識を高める契機にもなっています。慰霊登山は、犠牲者を追悼しながら、現在も後世へ噴火災害の教訓を伝える重要な行事として受け継がれています。

遺族や関係者は今後も「山びこの会」を中心に、御嶽山の噴火を忘れず、慰霊と防災の意識向上のための活動を続けていく意向です。

静かに祈りをささげる参加者たち

参加した遺族や関係者は、噴火発生の正午近く、山頂で黙祷を行い、その後もゆっくりと時間を共有しました。慰霊登山は身体的にも精神的にも負担が大きいものですが、「亡き家族のために」「同じ苦しみを抱える人々と共に」という強い思いが多くの人々を毎年引き寄せています。

こうした追悼の場では、言葉を交わし合うだけでなく、静かに涙をぬぐいながらそれぞれが被災の記憶や思いを胸に刻み直しています。

今も変わらぬ自然の厳しさと向き合いながら

御嶽山は日本で著名な登山スポットであるとともに、火山活動も活発な場所です。今回の慰霊登山も、自然の美しさの中に潜む危険への警鐘を忘れず、次代へ注意を促す意味を持っています。

災害から11年。悲しみは決して色あせず、多くの人々の心に深く刻まれています。遺族や地域住民、登山者らが集い、それぞれの形で追悼と祈りを続けることが、御嶽山噴火の記憶を未来に残す道となっています。

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