有働由美子が語る「紅白歌合戦」の“間合い”の合戦──視聴者の注目度と配信記録から読み解く新時代の紅白

NHK紅白歌合戦をめぐって、この年末年始もさまざまな話題が飛び交いました。とくに、過去に総合司会や紅組司会を務めてきた有働由美子さんが、番組進行をめぐる「間が悪い」という批判に対して、自身の考えを語ったことが注目を集めています。また、今年の紅白では、テレビだけでなく配信でも高い視聴実績を記録し、「NHKプラス」「NHK ONE」などのサービスを通じて、過去最多クラスの再生回数に達したとも報じられました。さらに、出演歌手や企画の「注目度ランキング」も話題となり、音楽そのものだけでなく、番組全体をめぐる“合戦”が繰り広げられた一年だったと言えます。

「間が悪い」批判に反論? 有働由美子が語る“思いやりの間合い”

今回大きく取り上げられたのが、「紅白歌合戦の進行に“間”が多くてテンポが悪い」「司会がうまくつなげていないのではないか」といった一部視聴者の声に対する、有働由美子さんのコメントです。自身もかつて紅白の総合司会・紅組司会を務め、多くの歌手とステージをともにしてきた立場から、有働さんは「余計なことを挟めないっていう思いやりがあるのでは」と、あえて“しゃべらない”選択にも肯定的な見方を示しました。

紅白では、歌手の歌唱、ステージ演出、舞台転換、VTR企画、審査発表など、多くのパートが限られた時間のなかに詰め込まれています。とくに近年は、出演アーティストの増加や特別企画の充実により、段取りがタイトになりがちで、その結果として「妙な間」が生じたという指摘も、週刊誌やネットニュースでたびたび取り上げられてきました。一方で、そうした“沈黙”の時間が、「歌の余韻を壊したくない」「ここはアーティストの世界観を最優先にしたい」という制作側・司会者側の配慮の現れだと見ることもできます。

有働さんは過去の紅白の経験を振り返りつつ、「しゃべりすぎることでステージを遮ってしまう」「自分の色を出しすぎて歌手より目立ってしまう」ことへの恐れや遠慮も含め、司会者があえて一歩引くことの意味を語っています。かつて2003年の紅白で紅組司会を務めた際には、紅組が「0勝15敗」という“史上初”の結果に終わり、「屈辱の紅白」と自嘲気味に振り返ったこともあります。そうした、視聴者の厳しい反応やプレッシャーを肌で知っているからこそ、「間」をめぐる議論に、今なお敏感なのかもしれません。

つまり、「間が悪い」という批判の裏側には、「番組のテンポを最優先するべきか」「アーティストの世界観や歌の余韻を優先するべきか」という、制作サイドと視聴者の価値観のずれがあります。有働さんのコメントは、その“価値観の合戦”に、「思いやり」という視点で一石を投じた形と言えるでしょう。

「注目度ランキング」をめぐる新たな合戦──大トリ、コラボ、サプライズ

今年の紅白歌合戦では、出演歌手や企画ごとの「注目度ランキング」が大きな話題になりました。情報サイトやニュースメディア、SNS分析を通じて、「どの場面がもっとも視聴者の関心を集めたのか」がランキング化され、いわば“紅白の中の合戦”が可視化された格好です。

中でも焦点となったのが、

  • 番組のクライマックスを飾る大トリを務めた人気バンド「ミセス(Mrs. GREEN APPLE)」
  • 米津玄師さんと「HANA」による特別コラボレーション
  • 大物ロックシンガー・矢沢永吉さんのサプライズ登場

こうした“目玉”企画を抑えて、何が「注目度ランキング」1位になったのかという点が、放送後の大きな話題となりました。各社の分析手法は異なりますが、X(旧Twitter)などの投稿数やトレンド入り時間、動画再生数、検索数などを組み合わせ、どのシーンで最もSNSが盛り上がったのかを数値化する動きが広がっています。

紅白といえば、かつては「紅組か白組か、どちらが勝つか」という結果発表が番組のハイライトでしたが、近年はそれに加えて、「番組内で一番話題をさらったのは誰か」「ネットで一番バズったのはどのシーンか」という、もうひとつの“合戦の物差し”が存在するようになりました。特に若い世代にとっては、テレビの生放送と同時にSNSでタイムラインを追いながら楽しむスタイルが一般化しており、視聴体験そのものが「リアルタイム評価」にさらされていると言っても過言ではありません。

その意味で、大トリやサプライズ出演といった伝統的な“番組上の格”と、ネット上の「注目度1位」が必ずしも一致しないケースも出てきています。制作側は、長年の慣習や歌手のキャリアを尊重しつつ、同時にSNS時代の「盛り上がり」も意識しなければならない――ここにも、静かな“合戦”が存在していると言えるでしょう。

配信で過去最多クラスの視聴 「テレビ+配信」の二正面作戦

もうひとつの大きなポイントが、「紅白歌合戦」がテレビと配信の両方で高視聴を記録したことです。報道によれば、今年の紅白は、NHKのインターネット配信サービスを通じた再生回数が、NHK ONE(あるいはNHKプラスなどの現行配信サービス)開始後、最多クラスの数字に達したとされています。従来、紅白の評価は「世帯視聴率」が中心でしたが、ここ数年は「見逃し配信」「同時配信」を合算した総再生数も重視されるようになってきました。

とくに若年層は、年末の時間帯を家族と過ごしながらも、手元のスマホやタブレットで好きなアーティストの出番だけをピンポイントで視聴するケースが増えています。リアルタイムで観られなかった場面を、後から見逃し配信でチェックする人も多く、「テレビの前に座って最初から最後まで観る」という従来型のスタイルは、もはや視聴の“唯一の形”ではなくなりました。

NHKとしても、地上波放送と配信を「二正面作戦」として位置づけており、番組冒頭から「NHKプラスでも配信中」と告知するなど、視聴者をデジタルサービスへ誘導する工夫を続けています。その結果として、「テレビのリアルタイム視聴率は横ばいまたは微増、配信の再生数は大きく伸びる」という構図が強まっているのです。

ここで重要なのは、「視聴率が伸び悩んでいる」という従来の紅白批判が、「配信を含めた総視聴時間ではむしろ増えているのではないか」という新たな評価軸によって、見直されつつあることです。視聴のスタイルが多様化するなかで、地上波の数字だけを見て「紅白離れ」と断じるのは、もはや適切ではないという見方も広がりつつあります。

「合戦」というタイトルが映すもの──勝ち負け以上のドラマ

そもそも「紅白歌合戦」というタイトルには、「紅組と白組が歌で競い合う」という意味が込められています。しかし、現代の紅白を取り巻く“合戦”は、それだけにとどまりません。

  • テレビと配信、どちらがより多くの視聴者を獲得できるかというプラットフォーム間の合戦
  • 番組のテンポを重視するか、歌手の世界観を尊重するかという演出方針の合戦
  • 視聴率や審査結果よりも、SNSの「注目度ランキング」を重視する新しい評価軸との価値観の合戦

有働由美子さんの発言は、こうした複数の“合戦”が絡み合う中で、「司会という立場から、何を一番大切にするのか」という問いを投げかけています。テンポの良さを優先すれば、「間を埋める」トークが増え、賑やかでバラエティ色の強い紅白になるかもしれません。一方で、あえて言葉を抑え、歌とステージを主役に据える演出を選べば、「間が悪い」「盛り上がりに欠ける」といった批判も受けることになります。

それでも有働さんは、「余計なことを挟まない」という選択に、“思いやり”というポジティブな意味を見出しました。そこには、歌手や観客だけでなく、テレビの前の視聴者に対しても、「今は静かにこのステージを味わってほしい」という気持ちが込められているのでしょう。

歴代司会者が背負ってきたプレッシャーと、いま求められる司会像

NHK紅白歌合戦の歴代司会者一覧を見ると、有働由美子さんは2000年代前半からたびたび司会を任されてきた“常連”の一人です。華やかな出演歌手に囲まれながら、台本通りに進行するだけでなく、ハプニング対応や時間調整、審査員とのやりとりなど、裏方的な役割も担っています。

近年の紅白では、俳優やタレント、NHKアナウンサーなど、さまざまな分野から司会者が選ばれるようになり、「進行の上手さ」だけではなく、「番組の顔」としての親しみやすさや、SNSなどを通じた発信力も求められるようになりました。「喋りすぎず、でも淡白すぎず」というバランス感覚は、まさに繊細な“間合いの合戦”です。

有働さんは、情報番組やラジオなどでも率直な発言で知られていますが、紅白という“国民的番組”の場では、そのキャラクターをあえて抑えつつ、番組全体を見渡す役割に徹してきました。その経験があるからこそ、後輩世代の司会者や後進のアナウンサーが、ネット上の批判にさらされている状況を見て、「間が悪い」と切り捨てるのではなく、「そこに込められた思いやり」に光を当てたのかもしれません。

視聴者として、紅白の“合戦”をどう楽しむか

視聴者の立場からできることは、決して難しいことではありません。たとえば、次のような見方を取り入れてみると、同じ紅白でも少し違った楽しみ方ができるはずです。

  • 「この沈黙には、どんな意図があるのかな?」と、あえて“間”の意味を考えてみる
  • 歌手やステージだけでなく、司会者の表情や、出演者同士の“目線のやりとり”にも注目してみる
  • テレビの視聴にプラスして、配信や見逃しサービスを活用し、「もう一度観たいシーン」を自分なりに楽しむ
  • SNSで番組の感想を発信する際も、「ここが良かった」「ここは惜しかった」と、具体的な言葉でフィードバックしてみる

こうした一つひとつの行動が、番組制作サイドにとっての「次の改善のヒント」になります。結果として、紅白という大きな“合戦”の行方は、視聴者一人ひとりの反応によって、少しずつ形を変えていくのです。

来年以降も、紅白歌合戦は「歌で一年を締めくくる番組」であると同時に、テレビと配信、伝統と革新、テンポと余韻といった、さまざまな価値観がぶつかり合う「時代の鏡」であり続けるでしょう。有働由美子さんの「思いやり」という言葉は、その鏡を少し優しい角度から映し出してくれているように感じられます。

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