井上陽水、ハンバート ハンバート、朝ドラ主題歌——NHK『ばけばけ』が生み出す新たな流れとその背景

朝ドラ『ばけばけ』主題歌の革新性とその前兆

2025年9月29日より放送開始が予定されているNHK連続テレビ小説『ばけばけ』。この注目作の主題歌に抜擢されたのは、フォークデュオハンバート ハンバート、楽曲は「笑ったり転んだり」。これまでの朝ドラ主題歌路線とは一線を画す選曲となり、音楽ファン、ドラマファン双方から大きな関心を集めている。

そもそも歴代の朝ドラ主題歌といえば、華々しいポップスや、圧倒的な歌唱力で勝負するアーティストが多かった。しかし昨年放送の『ブギウギ』辺りから、ドラマの舞台や登場人物の心情に寄り添う「歌の質感」への意識が高まるなど、時代に即した変化が垣間見えはじめていた。その流れが『ばけばけ』で更に明確となり、ハンバート ハンバートのナチュラルで独自の世界観が番組の空気を根本から変える役割を担っているといえよう

ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」——主題歌作曲の裏側と、松江という舞台の影響

  • 舞台の松江は、ハンバート ハンバートのふたりにとって縁の深い土地。何度もライブ訪問した思い出のある場所であり、その土地の空気感や人々の温度が曲作りにも影響したという。
  • 佐野遊穂は「主題歌の依頼を受けた時驚いたが、松江が舞台と聞いてさらに驚いた。思い出深い場所なので、たくさんの人に聴いてほしい楽曲ができた」とコメント。
  • 佐藤良成は「モデルとなった小泉セツさんの『思い出の記』を繰り返し読み、セツさんになったつもりで曲作りを一気に進めた」と語る。その没入感、物語への共感が音に滲み出ている

配信ジャケットも公開され、温かく優しいイラストが印象的。Apple MusicやSpotifyなどでもプリセーブが開始され、楽曲リリースへの期待度も日に日に高まっている

NHK『うたコン』での初披露——ふるさとを想う歌としての主題歌

  • 8月26日、NHK総合『うたコン』で「ふるさとを想う歌」特集が放送された。ハンバート ハンバートが「笑ったり転んだり」を初披露、全国各地の懐かしい風景を思い浮かべるようなラインナップに並んだ
  • 石川さゆり、三山ひろし、井上芳雄、森高千里らが名曲を披露し、その中で井上芳雄は同郷福岡の井上陽水「少年時代」をカバーし話題となる。井上陽水の楽曲がやはり「ふるさと」を強く想起させるものとして、多くの視聴者の心に響いた。
  • 『ばけばけ』ヒロイン役の髙石あかり、夫役のトミー・バストウも番組ゲストとして物語や楽曲への想いを語り、新主題歌の魅力を伝える時間となった

ドラマと主題歌の関係性——物語に寄り添う音楽の重要性

  • 「ばけばけ」の物語自体は、実在の人物の記録や、その家族の歴史をベースに展開する。主題歌「笑ったり転んだり」も、まさに主人公の日常の喜びや葛藤、家族やふるさとへの思いが自然と浮かぶように作られている。
  • 過去の朝ドラにはなかった、ドラマの舞台・松江の空気感、時代背景、そして主人公の心の揺れが反映された音楽といえる。視聴者の日常にも寄り添うような、「朝のルーティンに溶け込む」温かな主題歌。
  • これらの新しい選曲や表現方法は「これまでの朝ドラ主題歌の流れを変えつつある」と制作統括である橋爪國臣氏もコメントしている。『ばけばけ』の魅力はストーリーと共に日常的な心地良い音楽体験にあるといえるだろう

キャストからのエピソード——佐野勇斗が贈るアドバイスとチームの絆

メインキャストの髙石あかり(ヒロイン松野トキ役)、トミー・バストウ(トキの夫レフカダ・ヘブン役)、そして現場に寄り添う佐野勇斗は、放送前のイベントやインタビューで互いを気遣いながら助言を交わしたエピソードも明かしている。
谷原章介は「佐野さんのアドバイスはドラマ的にも人生的にも一番役立つかもしれない」と語り、現場の雰囲気を盛り上げる存在でもある。チーム全体で支え合いながら物語を育てている様子が伝えられている。

井上陽水の名前が注目される理由——「ふるさと」を想う歌と朝ドラ

今回のNHK『うたコン』にて井上陽水「少年時代」がカバーされ、改めて「ふるさとを想う歌」として多く話題になったポイント。
井上陽水は日本の音楽界において「郷愁」「故郷」をテーマにした名曲が多く、今回は井上芳雄によってそのメッセージが受け継がれるかたちになった。
また、朝ドラという生活に根ざした番組に井上陽水の持つ空気感が重なることで、視聴者の世代を問わず「自分のふるさと」「家族との記憶」と自然に結びつく心地良い共鳴が生まれている。

ハンバート ハンバート抜擢の理由——変化する朝ドラ主題歌像

  • 昨今の朝ドラ主題歌選考は、物語や舞台だけでなく「日常の温度」「感情の細やかさ」を意図的に反映するものが増加。ハンバート ハンバートはそれらの表現力や懐かしさ、柔らかさを兼ね備えており、ドラマの世界観と強くシンクロする存在。
  • 制作現場でも「王道の豪華さやインパクトよりも、日々の心に寄り添うリアリティが欲しかった」という意向が強く、今回の抜擢につながったという。
  • 音楽業界ではフォークやアコースティックが再評価されている流れもあり、時代に合った選考基準へと変化している背景も見逃せない

視聴者、ファンの声——「ばけばけ」への期待と主題歌の反響

  • 朝ドラファンの中では「これまでにない温かさ」「物語と音楽が一体化している」という感動の声がSNSでも多数寄せられている。
  • 「笑ったり転んだり」は、物語のドラマチックな展開と共に主人公の人間らしさを際立たせると同時に、朝の時間にそっと寄り添う楽曲として存在感を持っている。
  • ドラマと音楽が融合する今の朝ドラ、その進化の過程として『ばけばけ』は確かな足跡を残すことになるだろう。

音楽・ドラマの新しい関係と、令和の朝ドラ像

「ばけばけ」を起点に、今後のNHK連続テレビ小説はさらに「物語のための音楽」「日常に寄り添う主題歌」へと進化していくことが予想される。
井上陽水、ハンバート ハンバートといったアーティストたちの表現、ドラマチームの絆、発信される“ふるさと”や“記憶”への想いが、令和の新しい朝ドラ像を作り上げている。

まとめ——井上陽水と新主題歌が指し示す日本の心

井上陽水の音楽が持つ「ふるさと」「恍惚とした思い出」の力が、ハンバート ハンバートの新しいチャレンジと響き合い、『ばけばけ』という物語と共鳴する。朝ドラの新しい主題歌の流れ、その意味深い変化をぜひ毎朝感じてみてほしい。

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