津田寛治、自分自身を演じる――映画「津田寛治に撮休はない」への挑戦
2026年3月28日、映画「津田寛治に撮休はない」が全国公開されることが発表され、映画ファンや業界関係者の注目を集めています。主演は、日本映画界を代表する名バイプレーヤー津田寛治。しかも演じるのは“津田寛治”。自らの名を冠した役を、あえてフィクションとして大胆に演じるという、前例の少ないプロジェクトです。監督・脚本には「夜を越える旅」「断捨離パラダイス」の萱野孝幸氏が名を連ね、映画の内容、役柄、製作背景に至るまで、さまざまな面で大きな話題となっています。
企画のきっかけ――「常に何かの役でいる」津田寛治の“狂気”
このプロジェクトの端緒は、萱野監督自身が感じた津田寛治の演技に宿る“良い意味での狂気”にありました。萱野監督は、「どんな役であっても常に入り込み、何かの役を生きている」と語り、2022年に大分県別府市で津田が出演するイベントを直接訪問し、この野心的な企画を熱心にプレゼンテーション。
「企画書のタイトルに『津田寛治に撮休はない』とあり、最初は戸惑いもありましたが、すぐに強い興味を持った」と、津田本人も語っています。こうしてオリジナル脚本の制作が本格的にスタートしました。
リアルとフィクションが交錯する脚本
本作は単なる本人役、いわゆる“セルフパロディ”ではありません。津田寛治の日常的な行動や発言、周囲の人々からの証言、また過去の出演作など多様なリサーチに基づき書き上げられた脚本に、フィクションを巧みに融合。俳優・津田寛治の日常、映画やドラマの撮影、舞台稽古、イベント出演など多忙な現場で、どこか“現実と非現実”の隙間に迷い込むような出来事が次々と起こり始めます。
物語が進行するにつれ、主人公は「自分は何者かに付きまとわれているのでは?」という不安に駆られ、やがて自分自身の存在意義やアイデンティティを見失いはじめる……。現実と虚構の間をまさにシームレスに行き来する構成には、ミステリー・サスペンスの要素も色濃く反映されています。
- 映画の撮影現場
- ドラマ・舞台・イベントのスケジュール
- 家族やスタッフ、ファンとのやりとり
- 謎めいた出来事と得体の知れない不安
津田は「この脚本を読んで、取材されていないのになぜここまで自分のことを知っているのかと驚愕した」と語っています。「僕を題材に、しかもこんなにも面白い物語かつ上質な台本に仕上げてくれた。萱野監督はただ者じゃない」と最大級の称賛を寄せています。
「朝から晩まで」津田寛治を演じ続けた日々
撮影は2024年夏に行われ、その間、津田寛治は「まさに朝から晩まで、現場の中で物語の世界に没頭していた」といいます。クランクアップの頃には「いつカメラが回っているのかわからないほど、演じること自体が自分の日常と一体化していた」とのことで、「本当に楽しく幸せな制作期間だった」と、充実感をにじませています。
ロケ地は歴史と現代が交錯する「鹿島海軍航空隊跡地」
映画の主要なロケ地として選ばれたのは、茨城県美浦村の「鹿島海軍航空隊跡地」。ここは昭和・平成・令和にわたり、さまざまな映画やドラマ、ミュージックビデオなどの舞台となってきました。本作もまた、この歴史的な空間を活かし、リアルと虚構の入り混じる不思議な世界観が映し出されています。
主演・津田寛治の人物像――60歳、新たな挑戦への情熱
津田寛治(つだ・かんじ)は、1965年8月27日生まれ、福井県出身。1993年の北野武監督作「ソナチネ」で映画デビュー後、テレビ・映画・舞台で存在感を発揮。
特に2002年の映画「模倣犯」でブルーリボン賞助演男優賞を受賞するなど、名実ともに業界屈指の演技派として輝きを放ち続けてきました。
2025年も7本もの出演映画が公開され、「特捜9」シリーズをはじめ多忙を極めるなか、「今出せるものすべてを出し切った」と語る姿勢には、役者人生の集大成としての強い覚悟と矜持が感じられます。
監督・脚本:萱野孝幸――“俳優・津田寛治”を描く新たな視点
萱野孝幸監督は、「夜を越える旅」「断捨離パラダイス」などで独特の人間描写とリアリティに定評のある新鋭。今回の作品でも、津田の出演作を繰り返し鑑賞し、マネージャー、スタッフ、本人への取材も重ねてオリジナル脚本を書き下ろしました。「俳優という存在がいかに“役に生きる”ことで支えられ、時に周囲や自分自身との境界を曖昧にしていくか」という深いテーマに挑んでいます。
ポスタービジュアル・場面写真も解禁、ファンの期待高まる
公開日発表と同時に、主要ポスタービジュアルと場面写真も公開されました。ポスターでは“リアルな津田寛治”と“役の中の津田寛治”が交錯し、観る者に物語の不穏な雰囲気と挑発的なテーマを直感的に伝えています。場面写真には、撮影現場や日常を行き来する津田の姿や、謎めいたシーンが数多く切り取られています。
今作が映画界にもたらすもの――俳優“自身役”という実験
本人が自分自身を演じるという形は、極めて稀な企画でありつつ、同時に「俳優とは」「演じるとは」「生きるとは」という根源的な問いを投げかけます。何が演技で何が素なのか。多忙な現実と虚構のあわいで、「俳優・津田寛治」はどんな葛藤や発見をするのでしょうか。
本作が観客にもたらす体験は、「他者の人生を生きる」という俳優の孤独、創造の苦しみ、日常と非日常の皮膜といった、さまざまな感情や思考を呼び起こすはずです。
- “自分とは何者か”という哲学的テーマ
- 俳優という存在の本質への問い
- 現代日本映画における実験的表現の追求
公開情報とまとめ
- 映画タイトル:津田寛治に撮休はない
- 公開日:2026年3月28日
- 主演:津田寛治(本人役)
- 監督・脚本:萱野孝幸
- ロケ地:茨城県美浦村・鹿島海軍航空隊跡地ほか
津田寛治という稀有な俳優が、自分自身と向き合い、“良い意味での狂気”を伴いながら、新しい表現領域へと飛び込んだこの映画。「映画俳優とは」「表現とは」という普遍的なテーマを、多くの観客が体感する公開日が待たれます。
最新情報や続報にも注目しながら、2026年春を心待ちにしましょう。



