ドラマ『良いこと悪いこと』――「いいこと」と「悪いこと」の境界を揺さぶる“7人目”の真実
日本テレビ系の土曜ドラマ『良いこと悪いこと』が、物語の核心ともいえる“7人目”の正体判明によって、今大きな話題を集めています。同窓会をきっかけに始まった連続不審死事件、そして22年前の小学校6年1組に隠されていた「見落としていた真実」――視聴者の考察熱をかき立ててきた謎が、いよいよ大きく動き出しました。ドラマの魅力である緻密な人間描写と、「いいこと」と「悪いこと」のあいだで揺れる登場人物たちの心理を、最新の展開とともにやさしく整理してご紹介します。
ドラマ『良いこと悪いこと』とは? あらすじのおさらい
『良いこと悪いこと』は、脚本家・ガクカワサキによる“ノンストップ考察ミステリー”として位置づけられたオリジナルドラマです。物語は、かつて小学校6年1組だった同級生たちが、22年ぶりにタイムカプセルを掘り起こす同窓会から始まります。
主人公は、小学生時代はクラスのリーダーで“キング”と呼ばれていた高木将(間宮祥太朗)。現在は実家の塗装店を継いだ一児の父です。そして、かつては「どの子」と呼ばれていたクラスメイトで、今は“美人すぎる記者”として活躍する猿橋園子(新木優子)。2人は、再会をきっかけに、同窓会の後に立て続けに起こる同級生の不審死の謎に挑むことになります。
さらに、高木と園子に加わるのが、同じ元6年1組である小山隆弘(森本慎太郎)。彼ら3人を中心に、「あの頃の自分たち」と「今の自分たち」が交錯しながら、22年前に教室で起きていたこと、そして“いいこと”と信じていた行動の裏側にあった“悪いこと”が少しずつ浮かび上がっていきます。
連続不審死とタイムカプセル――事件の発端
物語の発端は、元6年1組の面々が22年前に埋めたタイムカプセルです。そこには、当時の子どもたちが将来の夢やメッセージを記した手紙や、みんなで夢を語り合ったDVDなどが収められていました。しかし、タイムカプセルが掘り起こされた後から、同級生たちの不審な死が相次ぎます。
誰が、何のために同級生を殺しているのか。タイムカプセルに入っていたはずのDVDはどこに消えたのか。高木たちは、「あの頃、クラスで“忘れてきた何か”」が事件の鍵だと考え、過去と現在を行き来しながら真相に迫っていきます。
“7人目”の存在と「博士」――見落とされていた同級生
序盤から視聴者の間で大きな焦点となってきたのが、物語のキーワードである“7人目”の存在です。元6年1組には、仲良し6人組がいたとされていますが、物語が進むにつれ、そこにはもう1人の仲間がいたのではないかという疑念が浮上します。
やがて、この“7人目”が、クラスメイトたちから「博士」と呼ばれていた人物だと示唆されます。考察サイトやドラマレビューでは、「昆虫博士の夢を持っていた少年」「忘れ去られた同級生」「いじめの被害者」など、さまざまな候補が挙がり、視聴者の間で熱い議論が交わされてきました。
ドラマ内で明らかになっていくのは、「博士」が単なる通り名ではなく、22年前の“罪”と記憶のねじれを語るキーパーソンであるということです。「博士」は復讐者なのか、真実を語る者なのか、それともその両方なのか――この問いが、物語全体を貫く大きなテーマとなっています。
第8話でついに“7人目”の正体が判明
そして、最新の第8話では、この“7人目”の正体がついに森智也であることが明かされました。森智也は、かつて元6年1組の仲良しグループに属していたものの、22年の歳月の中でほとんどの同級生の記憶から抜け落ちていた存在です。
高木たちは、事件の真相を追う中で、「自分たちの仲良し6人組には、実はもう一人、7人目の仲間・森智也がいた」ことを思い出します。仲間だったはずの彼の存在を忘れてしまっていたこと、そしてその森から自分たちが深い恨みを抱かれていることを知った高木たちは、ようやく事態の深刻さを理解していきます。
森が「博士」であり、自分たちを狙う黒幕なのか――。この問いは、ドラマの中でも、視聴者の考察の中でも、最も大きな論点の一つとなりました。
羽立太輔の死と「博士」=森智也の関係
森智也の存在が浮かび上がる中で、物語はさらに悲劇的な展開を迎えます。高木たちは、森から恨まれていることに気づき、ひとりで森に会いに行った羽立太輔(森優作)を助けに向かいますが、間に合わず、羽立の命が奪われてしまいます。
この出来事により、「博士」こと森智也が事件の犯人だとみなされますが、犯人の顔をはっきりと見た者はいません。本当に森が殺人を行ったのか、あるいは別の人物が森の名を利用しているのか――ドラマは、視聴者にあえて断定を避けさせるような構成となっています。
残された手がかりは、タイムカプセルから抜き取られたDVD。みんなで夢を語ったあの映像の中には、「犯人にとって見られてはマズい何か」が映っていると考えられています。DVDの行方を追う中で、物語はさらに意外な真実へとつながっていきます。
「見えていたのは本当にすべてか」――元6年1組の“真実”
第8話の重要なポイントの一つが、「自分たちが知っていたと思っていた過去は、本当にすべてだったのか」という問いかけです。事情聴取を終えた高木は、ふとしたきっかけから一人である場所へ向かい、誰もが見落としていた元6年1組の真実に直面します。
詳細はドラマ本編で語られますが、オリコンの報道でも、「見えていたのは、本当にすべてか。誰もが見落としていた元6年1組の真実が明らかになる」とされており、単なる復讐劇にとどまらず、クラス全体の構造や、子どもたちが当時抱えていた関係性の歪みが浮かび上がる展開になっていることがうかがえます。
視聴者にとっても、「自分はクラスのことを“ちゃんと覚えている”と思い込んでいないか」「忘れてしまった誰かがいなかったか」といった問いが突きつけられるような、深いテーマ性を帯びたエピソードとなっています。
考察ドラマとしての新しさ――緻密な人間描写が話題に
『良いこと悪いこと』が「考察系ドラマに新風を吹き込んだ」と評価されている背景には、単に犯人当てやトリックの妙だけでなく、人間描写の緻密さがあります。子どもの頃の言動が、22年後の現在にまで影響し続けていること、そして当時は「いいこと」「正しいこと」だと信じていた行動が、実は誰かを傷つけていたかもしれないという視点が、物語の随所に散りばめられています。
例えば、高木将は「キング」としてクラスを引っ張り、「いいリーダー」であろうとしていました。しかし、そのリーダーシップが、結果として誰かを排除したり、気付かないうちに「悪いこと」を生んでいた可能性が、過去の回想シーンや同級生たちの証言からにじみ出てきます。
一方で、「どの子」と呼ばれていた園子も、当時は「空気のような存在」で、自分の意思を表に出せない子どもでした。そんな彼女が、いまは“美人すぎる記者”として事件の真相を追う立場になっていることは、「過去の自分を乗り越えたい」という思いと同時に、「当時見て見ぬふりをしたことへの贖罪」も重なって見えます。
こうした心の揺れや、登場人物それぞれが抱える「言葉にしづらい後ろめたさ」が丁寧に描かれている点が、視聴者に「自分ならどうしていただろう」と考えさせるきっかけになっていると言えるでしょう。
「誰が一番怪しい?」視聴者アンケートも白熱
今作は、放送のたびにSNSで多くの考察が飛び交い、「いま一番怪しいのは誰か」を巡る議論が盛り上がっています。ドラマ関連のアンケート企画では、「表向きは“いい人”として描かれているが、裏で事件を操っていそうな人物」「ただの善人で終わるはずがない人物」などが候補として名前が挙がり、ファンの間でさまざまな仮説が飛び交ってきました。
特に、“7人目”=森智也の存在が前面に出てきてからは、「森こそが黒幕だ」とする意見と、「森はむしろ被害者であり、別に真犯人がいるのではないか」とする意見が分かれており、「博士は本当に事件の中心人物なのか」という点が、大きな考察ポイントとなっています。
このように、視聴者自身が能動的に物語に参加し、登場人物の“いいところ”と“悪いところ”を見比べながら議論できる構造も、今作が「考察ドラマ」として人気を集めている大きな理由の一つです。
「いいこと」と「悪いこと」のあいだ――ドラマが投げかけるテーマ
タイトルにもなっている『良いこと悪いこと』という言葉は、ドラマ全体を貫くテーマそのものと言えます。「いじめ」「無視」「からかい」といった分かりやすい“悪いこと”だけでなく、「誰かのため」「クラスのため」と信じて行った“良いこと”の中にも、実は見過ごせない「悪い影」が潜んでいたのではないか――物語は視聴者に、そう問いかけ続けます。
22年前の教室で起きていた出来事を、大人になった登場人物たちが、今あらためて見つめ直す。その過程で、高木たちは自分たちが「忘れてしまっていた誰か」や、「思い出したくなかった記憶」と向き合わざるを得なくなります。それは単に犯人を突き止める作業ではなく、自分の中の“いいこと”と“悪いこと”の境界線を引き直す作業でもあります。
視聴者にとっても、「あのときの自分の行動は本当に“いいこと”だったのか」「誰かを置き去りにしてはいなかったか」と、ふと立ち止まって振り返りたくなるような、余韻の大きいテーマが込められています。
残り3話で何が明らかになるのか
ドラマはすでに第8話を終え、残りは3話となりました。7人目・森智也の正体が明らかになり、元6年1組に隠されていた“見落としていた真実”にも光が当たり始めた今、物語はまさにクライマックスに向けて加速しています。
残された謎はまだ多く、「博士」=森智也が事件にどこまで関わっているのか、“黒幕”は本当に彼なのか、それとも別に存在するのか。そして、タイムカプセルから抜き取られたDVDに映っている「犯人にとって都合の悪いもの」とは何なのか。これらが解き明かされることで、「いいこと」と「悪いこと」の境界線は、さらに大きく揺さぶられていくはずです。
単なるミステリーとしてだけでなく、「人を裁くこと」「許すこと」「忘れること」といった、人間関係の根っこにある感情を描き出してきた『良いこと悪いこと』。最後の最後に、私たち視聴者がどんな“答え”を突きつけられるのか――引き続き大きな注目が集まっています。



