『明日はもっと、いい日になる』──月9史上最低視聴率、しかし心に残るヒューマンドラマは何を問いかけているのか

福原遥さん林遣都さん主演でフジテレビ系 “月9” 枠にて放送中のドラマ『明日はもっと、いい日になる』。児童福祉という重い現実を描きながらも、「泣くのを我慢…」とのオフショットが話題を呼び、笑顔に癒される視聴者の声も多く聞かれます。一方で、第6話では平均世帯視聴率4.6%(関東地区/ビデオリサーチ調べ)と、「月9史上最低」とも言われる数字を記録し、波紋を呼んでいます。

現代社会に問いかける重厚なテーマ

本作の舞台は、神奈川県の海辺にある児童相談所。主人公の夏井翼(福原遥)は、警察署の強行犯係から突然児童相談所に出向し、新人児童福祉司として多様な子ども、そしてその親と向き合いながら成長していくという物語です。

ドラマでは現代日本が抱える児童虐待や貧困、家庭内暴力といった重いテーマを扱いながら、事件性のみならず「なぜ親も苦しむのか」「社会はどう寄り添うべきか」といった問いかけを巧みに織り交ぜています。2025年夏、「みんなで幸せな明日を迎えるには?」というシビアながら普遍的なテーマが、日常を生きる私たちにじんわりと問いかけられています。

毎話の視聴率推移――リアルタイム視聴行動の変化とドラマの苦闘

  • 第1話(7月7日):世帯7.1%/個人4.1%
  • 第2話(7月14日):世帯6.4%
  • 第3話(7月21日):世帯5.7%
  • 第4話(7月28日):世帯5.7%
  • 第5話(8月4日):世帯5.7%
  • 第6話(8月11日):世帯4.6%

短期間で大きく数字を落とし、「月9」史上最低と言われるラインまで視聴率が下がっています。過去に同様の評価を受けた『民衆の敵』や『ONE DAY』と並ぶとも評されました。

しかし、近年はTVerや録画、動画配信サービスの普及によってリアルタイムでテレビ視聴する人が減少傾向にあり、世帯視聴率が必ずしも作品評価や社会的反響を示す指標とは言えません。特に月曜9時というプライム帯で重たい社会問題を扱う作品の場合、食事時の家庭にはストレートに受け入れられにくいという背景も指摘されています。

出演者たちのオフショットが話題──“救い”や“癒やし”への共感と反発

放送当初から、主演の福原遥さんや林遣都さん、さらに子役たちとの撮影オフショットが公式SNS等で公開されるたび、視聴者から「笑顔に癒やされる」「子どもたちの表情が素敵」という声が多く寄せられています。しかし一方で、「現実はもっと厳しいのに」といった二分する受け止めがネット上に見られるのも事実です。

それでも、監督やプロデューサーは「“きれいごと”では済まされない現実も描きながら、子どもたちの未来に対する希望や小さな救いを、ドラマとして丁寧に表現したい」とコメントしています。各話で取り扱うテーマも、ネグレクト(育児放棄)、面前DV、育児ノイローゼなどリアルな取材・実例に基づき、取材を生かし優しい目線で描かれているのが特徴です。

比べてみる月9、そして夏ドラマのなかでの“異質さ”

2025年夏クールの民放プライム帯ドラマで比較すると、ランキングの4位タイに『明日はもっと、いい日になる』が名を連ねる一方、最高は同じ時期の7.1%。“月9”枠として見ると過去作と比較しても厳しい数字となっていますが、その一方で「社会問題にここまで正面から向き合った作品は稀」と業界内外で評価する声も少なくありません。

夏ドラマ(2025) 放送局 第1話世帯視聴率 6話時点平均
明日はもっと、いい日になる フジテレビ 7.1% 5.7%前後
誘拐の日 日本テレビ 6.6% 5.5%
(他ランキング上位ドラマ) 各局 8~10% 6~7%

見逃し配信で高評価、リアルタイム視聴率との“乖離”

TVerなどの見逃し配信サービスでは、各話の再生数が一定以上をキープしていると言われ、若い世代の視聴体験が多様化している現実が浮き彫りとなっています。録画やオンデマンド視聴の浸透もあり、「感動して涙が止まらなかった」「毎週必ず観ている」といった熱心な声もSNSやレビューサイトで見受けられます。

作品が問いかけたもの──“社会が変われば子どもの明日も変わる”

作品を通して描かれるのは、社会の隅で声を上げられない子どもたちや、その苦悩と孤独に気付いてやれなかった大人たちの姿。けれど、主人公・翼や同僚の児童福祉司たちは、ひとりひとりの子に丁寧に寄り添い、「明日はもっと、いい日になる」と小さな希望の灯をともします。

ストレートで泥臭い現場描写と、時折挟まれる子役たちの無垢な笑顔。この対比が、私たち大人への「あなたは子どもたちの隣に立っていますか?」という優しい問いを投げかけてくれます。

“視聴率が低い”──その数字だけで価値を判断することはできません。人によっては辛すぎる現実かもしれませんが、そのなかで少しでも多くの視聴者に「明日はもっと、いい日になる」と信じて一歩踏み出す勇気を与えてくれる、そんな心温まるヒューマンドラマだと言えるでしょう。

今後への期待と、視聴者へ届けたいメッセージ

SNSには、「回を重ねるごとに役者陣の本気度が伝わる」「社会の痛みに寄り添う、月曜の夜にぴったりの作品」といったエールや、「数字ばかり追わず、いい作品を作りたいというスタッフの熱意を感じる」といった感想も届いています。“数字”と“本質”をどう捉えるのか――これは視聴率低迷が騒がれる作品だからこそ、多くの人に考えてほしいテーマです。

現場で涙を堪えたり、子役と共に笑顔を交わすオフショットの数々が象徴するように、この作品には「悲しい現実も、温かい希望も、すべて子供たちの明日のために」という強いメッセージが詰まっています。

“テレビ離れ”や“視聴率”という指標だけでドラマの価値が測れない時代。『明日はもっと、いい日になる』は、その“今”だからこそ心に響く、新しいヒューマンドラマとして刻まれるはずです。

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