『ばけばけ』第20回に見る明治日本とキャストの魅力――高石あかり主演のNHK朝ドラ最新話題
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』は2025年に放送がスタートしたばかりの新作朝ドラとして大きな話題を集めています。主演は若手実力派女優・高石あかりさんが務め、共演には吉沢亮さん、寛一郎さんなど、現代日本のテレビ界を代表する個性派・実力派たちが名を連ねています。第113作目となる本作は、松江の没落士族の娘を主人公とし、明治日本の西洋化という激動の時代を背景に「怪談」や「異文化交流」をモチーフとして進行します。今回は、その最新話「第20回」を中心に、主要キャスト、作中の展開、作品の魅力について丁寧に解説していきます。
ばけばけ第20回 あらすじと注目シーン
- 教員試験を終えた錦織の慰労会:物語の舞台は今、松江から東京へ移っています。下宿では、吉沢亮さん演じる錦織が教員試験を終えたことを祝い、仲間たちによる慰労会が開かれます。場を盛り上げるため高石あかりさん演じる主人公・トキが「大好きな怪談を披露する」というユニークな出し物を提案、会場は一気に活気付き、明治という「古い時代から新しい時代への転換点」の空気感が丁寧に描かれます。
- 松野家に残された家族の想い:一方松江では、トキの身を案じてきた家族――司之介(岡部たかし)、フミ(池脇千鶴)、勘右衛門(小日向文世)が、「トキはもう松江には戻ってこないかもしれない」と、未来を見据え心の準備をしています。娘の独立と新しい人生を温かくも寂しげに見守る家族の描写は、視聴者の心をやわらかく揺らします。
- 西洋風の朝食を味わうトキと銀二郎:翌朝、トキは夫の銀二郎(寛一郎)とともに、初めて西洋風の朝食(パン、バター、コーヒーなど)をじっくり味わいながら、新しい家庭生活の一歩を踏み出します。和から洋への料理の変化を通じて、明治時代の文化転換のリアルな息吹が伝わってきます。
主要キャストの個性と熱演
ドラマ『ばけばけ』の成功には、主役級を務める主演・高石あかりさんをはじめ、物語を支える頼もしいキャスト陣の存在が欠かせません。ここで改めて主要キャストとそのキャラクター像について整理します。
- 松野トキ(高石あかり):本作のヒロイン。松江の旧家に生まれ、好奇心と「怪談」への強い情熱を持つ活動的な女性。明治という時代に自らの人生や心情、家族とのきずなを丁寧に紡いでいきます。演じる高石さんは主役の等身大の成長や揺れ動く心情を繊細かつしなやかに体現。作品の根幹を担う熱演です。
- 錦織(吉沢亮):教員試験合格を目指して努力を重ねてきた青年。知性と人情を兼ね備えており、トキたち仲間からも信頼を寄せられる存在です。慰労会では彼のために皆が力を合わせ、友情や青春の一瞬が温かく描かれています。
- 松野銀二郎(寛一郎):トキの夫であり、物語のもう一人の軸となる人物。初めての西洋的な生活様式に触れることで、夫婦の関係や新しい家族像が動き出します。西洋風の朝食を囲みながらの心の交流は、時代のうねりを象徴しています。
- 家族・下宿の仲間たち:司之介(岡部たかし)、フミ(池脇千鶴)、勘右衛門(小日向文世)ら各キャストが家族や地域のつながりを支え、脇を固める豪華俳優陣の存在感が「物語世界」を豊かにふくらませています。
脚本・音楽・演出のポイント
- 脚本はふじきみつ彦氏:『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』など話題作も多数手がけた実力派。今作では“原作無し”のオリジナルストーリーで、「怪談」といった文学的要素や明治日本の文化史的テーマを巧みに織り交ぜます。
- 主題歌「笑ったり転んだり」(ハンバート ハンバート):夫婦デュオ・ハンバート ハンバートによるあたたかい歌声が、ドラマの世界観をやさしく包み込みます。
- 演出:実際の人物・小泉セツとラフカディオ・ハーン夫妻をモデルとしながらも大胆にフィクションとして再構成。キャラクターや団体名は一部改称されていますが、当時の息遣いや文化的ディテールが誠実に積み上げられています。
作中で語られる“コント”――松江と東京の対比
第18回の名物シーンとして「人口の半分はしじみ、もう半分は出雲そば」「根岸シャラップ」といった、帝大生たちの“コント”の掛け合いも絶妙です。明治時代の若者たち特有の機知とエネルギーがユーモラスに描かれ、松江から東京への文化の橋渡し役として視聴者に明るい印象を与えます。「蛇と蛙」のモチーフを通じて、社会の中での立場や葛藤もさりげなく織り込まれており、明治という時代の多様性や普遍的な人間模様を浮き上がらせています。
「怪談と日常」――作品の根本テーマ
本作の大きな特徴は「怪談」や「民話」といった要素が日常世界とかみ合っている点です。西洋化が進行するなか、日本古来の精神風土や、恐れと親しみを同時に孕む物語文化が、「トキ」と「銀二郎」夫婦の心の糧になっています。怪談という古きものを受け継ぎながら、新しい時代の光と影に向き合う――『ばけばけ』はそんな人間的な営みの繊細な変化や成長を、朝の清々しい時間にふさわしく描き出します。
キャスト紹介と人物相関図
- 松野トキ(高石あかり):自明治の松江に生まれた快活な女性で、家族や仲間思い。怪談好きの趣味が“国際結婚”のきっかけにも。
- 松野銀二郎(寛一郎):トキの夫。西洋風の生活にも柔軟に順応し、「新しい夫婦像」を模索中。
- 錦織(吉沢亮):本作のもう一人の若き中心人物。教員試験を通じて、トキや周囲との結びつきが深まる。
- 司之介(岡部たかし):松野家の支え役、家族の大黒柱として落ち着いた存在感。
- フミ(池脇千鶴):母性と温かさで物語に安らぎと重みを与える、松野家の愛情深い女性。
- 勘右衛門(小日向文世):コミカルでありながら、人情味の深い人生経験者として物語に奥行きをもたらします。
第20回エピソードが示す時代の空気
特に第20回では、慰労会の騒がしい楽しさと、家族の別れと新たな旅立ちの静かな寂しさが対照的に表現されます。明治時代という“日本社会の根本的変化”の影で、人々がどのような思いで日々を送っていたか、家族や友情がどのように保たれ、変化していくのか。“食卓”という普遍的な場面――つまり西洋風の朝食を通じて、視聴者にも時代の空気を追体験させます。
「ばけばけ」から広がるメッセージ
『ばけばけ』は、どこにでもいる普通の人たちが、時代という大きな波に揉まれながらも「自分らしく」「身近な人を大切に」生きていく過程を描いています。キャスト一人ひとりが持ち味を活かし、時にユーモアを交えながら、人の心のあたたかさやすれ違い、成長を快い余韻とともに伝えている点が最大の魅力です。
これからの見どころと役者陣のさらなる活躍に期待
朝ドラ「ばけばけ」は、その時代描写の緻密さ、キャスト陣の高い演技力、脚本の温かいまなざしで、多様な視聴者の心にそっと寄り添っています。今後も明治の光と影、そして新しい夫婦・家族のかたち、一人ひとりの人生の“物語”から目が離せません。