美空ひばりの魂は今も紅白に生きている──第76回NHK紅白歌合戦、曲目発表と「メドレー」急増の理由

2025年の大みそかに放送される第76回NHK紅白歌合戦の曲目が発表され、「メドレー」形式のステージが大きく増えたことが話題になっています。TUBERADWIMPSPerfume、さらにはベテランから若手まで、さまざまなアーティストが代表曲をつなぐ構成で登場する予定です。この流れを見つめるとき、多くの日本人にとってまず思い浮かぶのが、昭和を代表する歌姫美空ひばりの存在ではないでしょうか。

この記事では、2025年紅白の曲目発表の内容をやさしく整理しつつ、「メドレー」急増の背景を、美空ひばりが残した歌文化や紅白との関わりと重ねながら、分かりやすく解説していきます。

第76回紅白の曲目発表──見えてきた3つの特徴

まずは今回発表された曲目から、全体の特徴を簡単に押さえておきましょう。

  • メドレー形式のステージが増加(TUBE、RADWIMPS、Perfume、久保田利伸 ほか)
  • デビュー節目やキャリアを総括する構成(RADWIMPS「20周年スペシャルメドレー」など)
  • コラボレーションや企画性の強いステージ(天童よしみ「ミャクミャクダンスSP」、水森かおり「紅白ドミノチャレンジ2025」など)

紅白公式発表や各メディアによるまとめを見ると、今年の紅白は「1曲だけをじっくり聴かせる」ステージと同じくらい、「代表曲をつないで見せる」「企画として魅せる」ステージが増えていることが分かります。

具体的な「メドレー」構成の例

中でも象徴的なのが、夏ソングの代名詞とも言えるTUBEと、ロックバンドRADWIMPSのステージです。

TUBEは、白組で「紅白 夏の王様メドレー」として登場し、

  • 「シーズン・イン・ザ・サン」
  • 「恋してムーチョ」
  • 「あー夏休み」

という、世代を超えて知られる代表曲を一気に披露します。まさに「夏の王様」と呼ぶにふさわしいラインナップです。

一方、結成20周年を迎えるRADWIMPSは、

  • 「賜物」
  • 「正解」

をつないだ「20周年スペシャルメドレー」を披露します。長い活動の節目を紅白のステージでまとめて見せる構成は、アーティストの歴史と視聴者の思い出を同時に呼び起こす力があります。

さらに、テクノポップユニットPerfumeは、

  • 「ポリリズム」
  • 「巡ループ」

を組み合わせた「Perfume Medley 2025」で登場。ライブ映えのする楽曲をつなぐことで、短時間でもPerfumeらしさを存分に味わえる構成になっています。

また、ソウルシンガー久保田利伸も、

  • 「1, 2, Play」
  • 「Missing」
  • 「LA・LA・LA LOVE SONG」

をつないだ「紅白スペシャルメドレー」で出演。バラードからダンサブルなナンバーまで、長年のキャリアを象徴する曲が凝縮されています。

天童よしみ・水森かおりなど演歌勢も「企画性」で存在感

演歌・歌謡曲勢も、今年はただ歌うだけでなく、視覚的な楽しさや企画性を強めたステージが多く見られます。

たとえば、ベテラン演歌歌手天童よしみは、

「あんたの花道 ~ミャクミャクダンスSP~」

として登場し、大阪・関西万博の公式キャラクターミャクミャクとコラボする形でパフォーマンスを披露します。紅白ならではの特別企画として、子どもから大人まで楽しめるステージが期待されています。

また、演歌歌手水森かおりは、

「大阪恋しずく ~紅白ドミノチャレンジ2025~」

と題し、曲と連動した「ドミノチャレンジ」という企画を展開。視覚的な仕掛けを楽しみながら、演歌に親しみのない層にもアピールする構成になっています。

なぜ「メドレー」が急増しているのか

エンタメ系メディアでは、今年の紅白について「メドレーが急増した」という指摘がなされています。NHKや複数の音楽メディアが発表した曲目一覧を見ても、メドレー形式のステージが例年より多いことは明らかです。

その背景として、次のような理由が考えられます。

  • 限られた放送時間の中で、より多くの代表曲を届けたい
  • 世代を超えて共有される「ヒット曲の記憶」を一気に呼び起こせる
  • 映像演出・ダンス・コラボ企画と組み合わせやすい
  • アーティストの節目(周年)を「総まとめ」として見せやすい

大みそかの夜、家族でテレビを囲む時間は、かつてに比べて短くなったと言われます。一方で、配信サービスやSNSによって、視聴者が知っている曲の幅はかつてより広がっています。その中で紅白が選んだ答えのひとつが、「1曲に絞る」のではなく、「複数の代表曲をつないで見せる」というメドレー形式なのでしょう。

美空ひばりが紅白に残した「名曲と記憶のつながり」

ここであらためて、キーワードとなっている美空ひばりに目を向けてみます。

美空ひばりは、昭和を代表する国民的歌手として、数々の名曲を紅白歌合戦のステージで披露してきました。彼女の歌は、単に1曲だけが印象に残るのではなく、

  • 「川の流れのように」
  • 「愛燦燦」
  • 「悲しい酒」
  • 「柔」

など、時代ごとの代表曲が思い出とセットで記憶されているという人も多いはずです。

紅白という番組は、もともと「その年を代表する曲」を1曲ずつ丁寧に届ける場でした。しかし、美空ひばりのように、長い年月をかけて「人生そのものが歌で語られてきた」歌手に対しては、視聴者の心の中に自然と「個々の名曲がつながった物語」が形作られていきました。

現在の紅白でメドレーが増えている背景には、まさにこの「名曲をつなげることで、そのアーティストや時代の物語を一気に思い出してもらう」という狙いがあると考えられます。これは、美空ひばりが長い時間をかけて築いてきた「歌と人生の重なり方」が、形を変えて令和の紅白に受け継がれているとも言えるでしょう。

美空ひばりと「世代をつなぐ紅白」

今年の紅白のテーマは、NHKによると「つなぐ、つながる、大みそか」です。放送100年という大きな節目にあたる年でもあり、時代や世代を超えたつながりが強く意識されています。

美空ひばりの歌は、

  • 祖父母世代がリアルタイムで聴いた歌
  • 親世代がテレビやカラオケで覚えた歌
  • 若い世代が学校の合唱やSNSの動画などを通じて知った歌

といった形で、複数の世代をまたいで受け継がれてきました。紅白歌合戦もまた、家族が一緒にテレビを囲むことで、世代を超えて歌を共有してきた番組です。

その意味で、今年の「メドレー」急増は、単にヒット曲を詰め込んだだけの構成ではなく、

  • 短い時間で、別々の世代の「懐かしい」が同時に響くようにする工夫
  • あるアーティストの長い歩みを、ダイジェストで共有する試み

とも言えます。これは、美空ひばりの歌が長い時間をかけて果たしてきた役割を、今の時代の番組作りの中で追いかけている取り組みとも重なって見えてきます。

新しい世代の紅白と、美空ひばりから続く「歌のバトン」

今回の紅白では、ベテランだけでなく、

  • アイナ・ジ・エンド「革命道中 – On The Way」
  • 幾田りら「恋風」
  • HANA「ROSE」
  • FRUITS ZIPPER「わたしの一番かわいいところ」
  • &TEAM「FIREWORK」
  • M!LK「イイじゃん」

といった初出場アーティストも数多く名を連ねています。これらの若い世代の歌手は、配信やSNSを中心に人気を広げてきた世代ですが、紅白のステージに立つことで、より幅広い世代に歌を届けることになります。

かつて、美空ひばりがラジオやテレビの普及とともに全国的な人気歌手となり、日本中に歌を届けていったように、時代ごとのメディアを背負った歌手たちが、今もなお紅白のステージに集まっています。

たとえ番組の形式や演出方法が変わっても、

  • 「その年の歌を、日本中で分かち合う」
  • 「世代を超えて楽しめる、年の締めくくりの時間にする」

という紅白の基本的な役割は変わっていません。今年の「メドレー」ラッシュは、その役割を今の時代に合わせてアップデートした結果のひとつと言えるでしょう。

美空ひばりの名曲たちが教えてくれる、「紅白」と「歌」のこれから

美空ひばりの歌は、令和の時代になっても、カバーや映像企画、AI技術を用いたプロジェクトなどを通じて、新しい形でよみがえり続けています。そこには、

  • いい歌は時代を超えて聴かれ続ける
  • 番組やメディアの形が変わっても、「歌が人の心をつなぐ力」は変わらない

という、普遍的なメッセージがあります。

今年の紅白で、TUBEの夏歌メドレーやRADWIMPSの20周年メドレー、Perfumeの代表曲メドレーなどを目にしたとき、多くの視聴者はきっと、「あの頃の自分」や「一緒に聴いていた誰か」を思い出すはずです。それは、美空ひばりの歌を聴いたときに胸によみがえる記憶と、根っこの部分でとてもよく似た感覚ではないでしょうか。

紅白歌合戦は、毎年少しずつ形を変えながらも、日本の歌の歴史をつなぎ続けてきました。2025年の「メドレー」増加は、

  • 多様な世代の「思い出の歌」を、限られた時間の中でどう届けるか
  • 長く歌われてきた名曲たちを、これからの世代にどうバトンパスするか

という、紅白が抱えてきたテーマに対する、ひとつの答えだと言えるでしょう。

その根底には、昭和の時代から令和の今にいたるまで、人々の心に歌を届けてきた美空ひばりのような存在がいます。彼女が残した数々の名曲と、紅白のステージで積み重ねられてきた「歌の記憶」は、これからも新しいアーティストたちのパフォーマンスの中に、形を変えて生き続けていくはずです。

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