赤字328億円──“中居正広氏・フジテレビ問題”が広げた波紋と、揺らぐバラエティの未来

フジテレビが発表した328億円の最終赤字は、単なる業績不振ではなく、局の信頼や番組編成、さらには人気タレントの出演番組にまで大きな影響を及ぼす事態へと発展しています。

その背景には、元タレント中居正広氏をめぐるトラブルと、それに対するフジテレビ側の対応をきっかけにしたスポンサー離れや視聴者の不信感があります。 さらに、こうした混乱の余波は、人気グループSnow Manが関わるバラエティ番組や、お笑いコンビ・メイプル超合金のカズレーザーが出演する番組にまで及び、「来春終了」「バラエティ崩壊」といった厳しい言葉が飛び交う状況となっています。

「中居氏・フジテレビ問題」と328億円赤字の経緯

騒動の発端は、フジテレビの元女性アナウンサーとのトラブルをめぐる問題でした。第三者委員会の調査報告書では、2023年6月2日に起きたとされる出来事について、中居氏による「業務の延長線上の性暴力」と認定したと報じられています。

この認定に対し、中居氏側は「第三者委員会報告書における評価と当職らの法律的評価とに相違がある」と反論し、両者の見解の溝は埋まらないままです。 フジテレビ側は2025年6月に被害女性と対面で謝罪し、損害補償で合意したことを公表しましたが、その後も局への批判や不信は続きました。

こうした一連の問題を受け、スポンサー企業がフジテレビへのCM出稿を見合わせる動きが相次ぎます。 その結果、フジテレビ単体の2025年3月期決算では、放送収入が大幅に減少し、最終損益は328億6300万円の赤字に転落しました。

親会社であるフジ・メディア・ホールディングスも同じ決算期に201億円の最終赤字となり、連結ベースでも苦しい状況に追い込まれています。 グループ全体として、かつてないレベルの「負のインパクト」を受けた格好です。

株主総会で問われる「法的責任」と経営陣の姿勢

経営悪化の中で迎えるのが、フジ・メディア・ホールディングスの株主総会です。 2025年6月25日に予定された株主総会は、「中居氏・フジテレビ問題」の責任追及と経営体制の見直しが焦点になるとみられてきました。

フジテレビの清水賢治社長は、問題対応をめぐり、元編成幹部ら5名の処分に加え、港浩一前社長や大多亮元専務に対する訴訟準備に入ったことを明らかにしています。 これは、社内の責任を明確化することで、株主の怒りをある程度和らげたいという思惑もあるとされています。

一方で、株主総会では、トラブルの“起点”となった中居氏本人に対して、法的責任を追及すべきだという声が上がる可能性も指摘されています。 また、「モノ言う株主」として知られる米投資ファンド・ダルトン・インベストメンツが独自の取締役候補を提案しており、経営陣の再編やガバナンスの強化も大きなテーマとなっています。

Snow Manにも波及する「バラエティ崩壊」の現場

フジテレビの赤字転落とスポンサー離れは、番組制作費の大幅カットという形で現場にも直撃しています。 そんな中で注目されているのが、ピンズバNEWSなどで報じられた「Snow Manへの余波」です。

報道によれば、中居氏をめぐる騒動の影響でフジテレビのバラエティ枠は大きな打撃を受け、制作費の削減や編成見直しの結果、人気グループSnow Manが出演する番組を含めて、来春の「終了が確定的」とみられる番組が複数出ているといいます。

Snow Manは、若年層を中心に高い人気を誇り、テレビのバラエティ番組でも「数字が取れる存在」として重宝されてきたグループです。そんな彼らの出演番組にまで終了の影が差していることは、フジテレビのバラエティ部門が直面している危機の深刻さを象徴しているといえるでしょう。

番組終了は、タレント側にとっても露出機会の減少や活動の幅の狭まりにつながりかねません。また、視聴者にとっても、「楽しみにしていた番組が突然終わってしまう」という形で影響が及びます。局側の不祥事と経営悪化が、タレントやファンにまで連鎖的な負担を強いている構図です。

『サン!シャイン』終了報道とカズレーザーへの同情

フジテレビのバラエティ枠をめぐる動きの中で、週刊女性PRIMEなどが報じたのが、バラエティ番組『サン!シャイン』の来春終了に関するニュースです。報道では、番組でMCやレギュラーを務めるカズレーザーに対して、「本人の需要は高いのに」「芸人としてはむしろ評価が上がっている」といった同情や激励の声が多く上がっていると伝えています。

カズレーザーは、クイズや情報番組、バラエティと幅広い分野で活躍し、その知性とコメント力から、「どの局でも起用したい芸人」と評されてきました。番組終了が本人の人気低下ではなく、局側の事情、特に経営難や編成見直しの一環として行われるリストラ的な終了だと受け止められていることが、視聴者の同情を集めている一因です。

報道では、「カズレーザーへの需要はむしろ高まっている」「今後、他局での起用がさらに増えるのではないか」といった見方も紹介されています。フジテレビでの番組終了が、そのままタレントのキャリアの後退を意味するわけではなく、逆に新たな活躍の場を広げる契機になる可能性もある、という捉え方です。

「こんなドラマをあの女優で作りたい」という気概はどこへ?

フジテレビをめぐる議論は、数字や不祥事だけでなく、「番組作りの姿勢」そのものにも及んでいます。芸能関係者やコラムニストの間では、「かつてのフジには『こんなドラマをあの女優で作ってみたい』という、制作者側の強い企画意欲や冒険心があったが、今のフジにはその熱が感じられない」といった厳しい指摘も出ています。

かつてフジテレビは、『月9ドラマ』をはじめとする数々のヒット作を生み出し、出演する俳優や女優も「フジで主演を張る」ことがステータスとされてきました。しかし最近は、「数字が読めない大型企画を避ける」「スポンサーや世論の反応を過度に気にして守りに入っている」といったイメージが広がっているとも言われます。

今回の中居氏の問題をめぐる対応でも、第三者委員会の結論と中居氏側の反論が対立したまま、視聴者が納得できるまでの丁寧な説明や検証の場が十分に設けられているとは言いがたい状況です。 その結果、単に「不祥事があった局」という印象だけが先行し、「それでも見たいと思わせる作品」や「この局だからこそできる番組」が打ち出せていない、という批判につながっています。

バラエティの“崩壊”と立て直しへの課題

赤字328億円、スポンサー離れ、番組制作費のカット、人気タレント番組の終了…。こうした出来事が重なる中で、「フジテレビのバラエティは崩壊しつつある」とまで評されるようになりました。

しかし一方で、フジ・メディア・ホールディングスは2026年3月期の決算について100億円の最終黒字を見込むとしています。 コスト削減や構造改革を進めることで、まずは財務面の立て直しを図ろうという姿勢です。

とはいえ、テレビ局の存在意義は、決算書の数字だけで測れるものではありません。本来の軸となるのは、

  • 視聴者に「見たい」と思わせる番組をつくれているか
  • タレントやスタッフが「この局で仕事がしたい」と感じられる現場か
  • 社会の信頼に足る説明責任やガバナンスを果たしているか

といった部分です。

中居氏の問題をめぐる法的・倫理的な整理、スポンサーや視聴者への丁寧な説明、そして何より、「この状況でも攻めの作品を作る」という制作現場のマインドをどう取り戻すかが、今後のフジテレビにとって大きな鍵となるでしょう。

Snow Manのような人気グループや、カズレーザーのように需要の高い芸人たちは、これからもさまざまな場で活躍の機会を得ていくはずです。その一方で、彼らが安心して力を発揮できる「場としてのテレビ局」をどう再構築していくのか――。

中居正広氏とフジテレビをめぐる一連の騒動は、単なる一局・一タレントの問題を超え、日本のテレビ業界全体が抱える構造的な課題を浮かび上がらせています。今回の痛みを、どこまで未来への教訓につなげられるのか。その行方を、多くの視聴者が静かに見つめています。

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