夜ドラ『ひらやすみ』――やさしく心に触れる平屋物語、その人物と舞台裏に迫る
原作『ひらやすみ』とNHK夜ドラ化までの歩み
『ひらやすみ』は漫画家・真造圭伍氏が描く、阿佐ヶ谷の平屋一戸建てを舞台にした温かい日常の物語です。週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で現在も連載中の本作は、2023年には「手塚治虫文化賞」マンガ大賞へノミネート、2024年にはイタリアの〈ルッカコミックス&ゲームズ〉で最優秀連載コミック賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ています。
この大ヒット原作がついにNHK総合の「夜ドラ」枠(月曜~木曜22:45~23:00)で2025年11月3日から放送スタート。脚本は米内山陽子さん、ナレーションを小林聡美さんが務め、岡山天音さんと森七菜さんによる初の共演が実現しました。
人物相関図と主要キャスト
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生田ヒロト(岡山天音)
29歳の元俳優で、今は定職も恋人もいないフリーター。「人柄の良さ」で近所の高齢女性・はなえと仲良くなり、一戸建ての平屋を譲り受けて暮らしています。のんびり屋で自然体、その存在感だけで周囲の人を優しく和ませる大きな魅力を持っています。 -
小林なつみ(森七菜)
ヒロトの年の離れたいとこ、山形から美術大学入学のために上京してきた18歳。負けず嫌いで芯が強く、不器用な優しさとまっすぐな心を持つ少女です。「なつみのムスッとした表情を怖がらずに演じた」と森さん自身が語っており、役柄の奥行きが期待されています。 -
立花よもぎ(吉岡里帆)
ヒロトと偶然出会う不動産会社勤務の女性。仕事に一生懸命ですが、日々の生活には余裕がなく、内面に小さな悩みも抱えています。 -
和田はなえ(根岸季衣)
ヒロトの人柄を気に入り、平屋を譲ることになる心優しい近所のおばあちゃん。 -
その他の登場人物
吉村界人さん、光嶌なづなさんなど多彩な実力派キャストも参加して、ヒロトと関わる町の人々それぞれの暮らしや思いが丁寧に描かれます。
ストーリーのあらすじ(第2週放送分を中心に)
阿佐ヶ谷の古い平屋で始まる新しい共同生活。人生に将来の不安や焦りをさほど感じていないヒロトは、気楽な日々を楽しんでいました。そこへ山形から上京し、新しい夢に一歩踏み出そうとするなつみが同居を始めます。
春――町に新しい季節が訪れる中で、ヒロトの周りにも「生きづらさ」や「悩み」を抱えた人たちが自然と集まってくるのです。温かい人間関係や優しさ、失敗や挫折、そして日常の小さな幸せを感じさせるドラマが展開します。
記者会見・現場での印象と制作の裏側
2025年10月1日に都内で取材会が行われ、主演の岡山天音さん、共演の森七菜さん、制作統括の坂部康二さんが登壇しました。
- 岡山天音さんは、原作と原作者のファンだったことから出演決定に「幸福と同時に大きなプレッシャーも感じた」とコメント。ヒロトという人物については「生きる天才。日常の中にある宝石に自然と気付ける人」と分析し、「一つも取りこぼさずに演じたい」と強い意気込みを表明しています。
- 森七菜さんも「なっちゃんの若さゆえの生意気さ、でも愛らしさ」を丁寧に表現しながら、「怖がらずに、ふっとした瞬間に良い部分が出せた」と役づくりの工夫を語りました。
- 丘山さんは森さんについて、「森七菜パワーをすごく感じる。唯一無二の存在」と絶賛。森さんも岡山さんを「芸能界の先輩俳優の中で一番お話がしやすい方」と評し、初共演ながらも和やかな現場の雰囲気が垣間見えました。
- ロケ地の平屋については、「居心地が良すぎて帰りたくなくなった」と森さん。岡山さんも「時間との付き合い方が変わった」と語るなど、ドラマと現実が重なる体験があったようです。
“現実とファンタジーのハイブリッド”としての『ひらやすみ』
主演・岡山天音さんは、「自分が経験した感情をアウトプットできる場所があることはすごくいいこと」と語っています。リアルな日常の延長線上で、少しだけ“ファンタジー”の風も感じられるのが本作の特徴です。阿佐ヶ谷という実際の町並みや、古い平屋の温もり。そこに人々の小さな奇跡や、さり気ない優しさが重なる世界観は「現実とファンタジーのハイブリッド」と呼ぶにふさわしいものでしょう。
登場人物たちはそれぞれ悩みや孤独を抱えながらも、小さな気遣いや思いやり、時には失敗や冗談を交えたやりとはりで互いを支えていきます。「ドラマ『ひらやすみ』の世界の人たちの息遣いや暮らしぶりが、みなさんの心にどうタッチするのか今から楽しみです」と森七菜さんも期待を膨らませています。
『ひらやすみ』のメッセージ――生きることへの肯定とささやかな幸せ
『ひらやすみ』には華やかな事件も劇的な展開もありません。それでも、誰しもが抱える「生きづらさ」や「不安」といった感情を否定せず、ただ静かに寄り添う登場人物たちの姿があります。「ここにいてもいいんだ」「焦らなくて良いんだ」と、優しい気持ちになれるこの物語に、多くの人が共感と癒しを感じてきました。
「唯一無二の存在でありたい、けれどみんな同じような悩みや喜びを抱きながら生きている」――そんなメッセージが、本作の舞台である阿佐ヶ谷の小さな平屋から発信され続けるのです。
家庭の温かさ、町の人々のつながり、ささやかな失敗や新しい挑戦。『ひらやすみ』は、現代を生きる私たちの「日常へのまなざし」や「やさしさ」を呼び覚ましてくれます。視聴者それぞれが、“自分と重なる誰か”をきっとドラマの中に見つけられることでしょう。
今後の放送予定と番組情報
- 放送局: NHK総合
- 放送日時: 2025年11月3日(月)スタート、毎週月曜~木曜 22:45〜23:00
- キャスト: 岡山天音、森七菜、吉岡里帆、吉村界人、光嶌なづな、根岸季衣ほか
- 原作: 真造圭伍
- 脚本: 米内山陽子
- ナレーション: 小林聡美
見終えたあと、「自分の日常にも優しいドラマは流れている」と、そっと再確認できるひとときを『ひらやすみ』で感じてみてはいかがでしょうか。



