吉沢亮主演「国宝」──カンヌ国際映画祭から日本全国へ、現象となった映画の感動と熱狂
はじめに:世界を揺るがせた「国宝」現象
2025年6月6日、全国356館で華々しく公開された映画「国宝」は、公開と同時に日本国内外で大きな話題となりました。主演を務める吉沢亮さんや共演の横浜流星さんの熱演、豪華スタッフ・キャスト陣、そして原作ファンや新たな観客層を巻き込んだ「国宝」現象は、これまでの日本映画のあり方や海外展開にも一石を投じる結果となっています。特に、カンヌ国際映画祭での6分間ものスタンディングオベーションは、現地とSNSで大きな波紋を広げました。
物語と魅力:歌舞伎に生きる男たちの50年
映画「国宝」は、吉田修一原作の同名小説(朝日文庫/朝日新聞出版刊)を、映画『怒り』で知られる李相日監督が映像化した壮大なヒューマンドラマです。あらすじはこうです。抗争によって父を亡くした主人公・喜久雄が、上方歌舞伎の名門・花井半二郎のもとに引き取られ、血縁も境遇も異なる御曹司・俊介と出会い、ライバルとして互いに切磋琢磨しながら芸道に人生を捧げる50年の軌跡が描かれています。
- 出演者:吉沢亮(喜久雄役)、横浜流星(俊介役)、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、三浦貴大、見上愛、黒川想矢、越山敬達、永瀬正敏、嶋田久作、宮澤エマ、田中泯、渡辺謙、ほか。
- 配給:東宝
- 公開日:2025年6月6日
カンヌでの熱狂と国際的評価
第78回カンヌ国際映画祭(2025年5月13日~24日)では、監督週間で『国宝』が公式上映され、上映後には約6分間ものスタンディングオベーションが沸き起こりました。観客は「とても美しく印象的だった」「歌舞伎について何も知らなかったが、多くを学ぶことができた」「映画のテンポに引き込まれ、私も歌舞伎役者になった気持ちで3時間を過ごした」などと絶賛し、伝統芸能という日本的テーマが高い評価を受けました。
- フランスのみならずヨーロッパやアジア各国での配給もすでに決定し、「国宝」は日本映画の海外進出への道筋を示す一例にもなりました。
- カンヌ映画祭で日本映画がこれほど注目されたのは久々で、日本映画界にとって2025年は“当たり年”となったといえます。
「国宝」製作秘話──吉沢亮が挑んだ歌舞伎役者という新境地
主演の吉沢亮さんと横浜流星さんは、公開1年以上前から本格的な歌舞伎の稽古に打ち込みました。吉沢さんは「役に人生を預けた」と語り、観る者が彼らの芝居に引き込まれる理由がうかがえます。初日の舞台挨拶で吉沢さんは「自分の人生の大きな節目になった」と感無量の表情で語り、「多くのスタッフと共演者、観客すべての人に心から感謝しています」と感謝の言葉を述べました。
現地・SNS・レビューで広がる余波
カンヌ映画祭での熱気は、全世界の映画ファンや日本国内のSNSに瞬く間に拡大。「#国宝」「#吉沢亮」という関連ハッシュタグがトレンド入りし、多数の鑑賞レビューや感想が寄せられました。実際に観た人からは「美しさと切なさが融合した未体験の日本映画」といった声、「音声ガイドや日本語字幕によるバリアフリー上映も素晴らしい」といった多様な評価が並びました。
- 多くの観客が「作品世界に深く引き込まれた」「伝統と革新、親と子、名誉と愛、そのすべてが映画で体感できた」と感動を表現していました。
- バリアフリー対応(HELLO MOVIEアプリによる音声ガイド、日本語字幕対応、専用メガネ機器貸出など)により、高齢者や視覚障害のある方など、より幅広い観客が劇場体験を楽しめるよう配慮されています。
興行100億円突破まで──脚本家・現場スタッフの葛藤
「国宝」は誰もが予想しなかったほどの大ヒットとなり、興行収入は100億円を突破しました。関係者によれば、脚本家らスタッフは「原作の重厚さをどう2時間半~3時間の映画に収めるのか」「単純な対立や成長物語として描いてよいのか」と大きな葛藤と責任感のなかで脚本・演出を進めたといいます。特に、伝統芸能としての歌舞伎と、現代映画ファンの嗜好、その両者を満たすことへの難しさと向き合い続けたそうです。
映画史に刻まれる「国宝」現象──日本映画の新たな可能性
「国宝」の成功は一本の映画作品としてだけでなく、日本映画の海外進出へのモデルケースとしても映し出されています。大手配給会社・東宝が近年本腰を入れている海外市場展開の流れと、カンヌ映画祭との相性の良さ、日本的な伝統と現代性を融合させた作劇──。こうした戦略とチャレンジの融合が「国宝」現象を生み出しました。
- 2023年のカンヌ脚本賞受賞作「怪物」、2024年アカデミー視覚効果賞の「ゴジラ-1.0」、長編アニメーション映画賞の「君たちはどう生きるか」に続く、海外評価の流れを作り出した作品です。
- 国内外での大ヒットと同時に、「多様な観客に触れる機会を提供する」という新たな興行戦略も強く評価されています。
- アジア、ヨーロッパ、北米などで「国宝」旋風が巻き起こりつつあります。
観客の感想とレビュー:物語の力、人間ドラマ、そして美意識
映画レビューサイトやSNSには、多数の高評価が投稿されています。「シンプルな物語に見えるが、人生の複雑な側面や芸道の奥深さが生々しく描かれている」「キャスト一人一人に人生が感じられ、特に吉沢亮の表情や動きが生き生きとしていた」「映像が美しく、監督・李相日の緻密な演出に敬意を表したい」「こんなに泣いた映画は久しぶり」といった声が溢れています。
- 「国宝」は歌舞伎や日本文化に馴染みがない観客にも響き、エンターテイメントと芸術性の両立が称賛されています。
- 一方で、「どこか物足りなさもあった」という指摘もありましたが、その理由としては“もっと長く彼らの人生を見たかった”“あまりに完成度が高く没入したため現実に戻るのが惜しかった”といった肯定的なニュアンスを含むものが多いようです。
おわりに:「国宝」が切り拓く未来
カンヌ国際映画祭での熱狂と世界への広がり、興行的大成功、SNSでの口コミ拡大、バリアフリー上映の推進、そして「観た人の人生にも何かを残す」──。映画「国宝」は2025年、吉沢亮という俳優の新たな代表作となり、同時に日本映画史に新しい1ページを加えました。彼の役者人生、原作や歌舞伎の伝統、そして映画を取り巻く多くの「人々」の情熱と挑戦が描かれた本作が、今後の日本映画の未来をどのように導くかに期待が高まります。