南こうせつ、高見沢俊彦・坂崎幸之助と語る「歌の記憶」と昭和〜平成のスーパースターたち

昭和のフォークブームを代表するシンガーソングライター南こうせつと、デビューから半世紀以上走り続けるロックバンドTHE ALFEE高見沢俊彦坂崎幸之助が、昭和から平成にかけての音楽とスターたちについて語り合う特別番組が放送されました。番組では「歌は記憶と時代を甦らせる」というテーマのもと、懐かしい映像とともに、多くのスーパースターたちの足跡を振り返っています。収録後に行われた3人へのインタビューでは、音楽の持つ“生命力”や、世代を超えた交流が語られ、今あらためて大きな反響を呼んでいます。

昭和〜平成の歌が呼び起こす「記憶」と「時代」

この特番は、昭和から平成にかけての歌謡界・フォーク・ポップスなどを彩ったスーパースターたちを、貴重な映像とエピソードで振り返る「アーカイブ番組」として制作されました。 画面に映るのは、石原裕次郎美空ひばりといった昭和を象徴する大スターから、平成を躍動したアーティストたちまで、まさに時代を代表する顔ぶれです。

高見沢俊彦は、インタビューの中で「歌は記憶と時代を甦らせる」と語り、ヒット曲を耳にした瞬間に、その曲が流れていた頃の街の風景や、自分自身の思い出が一気によみがえる感覚を話しています。 歌は単なる娯楽ではなく、それぞれの人生の「時間のしおり」のような役割を果たしてきた、とする視点が印象的です。

一方で坂崎幸之助も、「記憶に根付いているのが歌のすごいところ」だと同意し、この番組がまさに、視聴者の記憶を呼び起こすアーカイブとして機能していることに触れています。 きれいで高画質な現代映像と比べると、昔の少し荒い映像には独特の「時代の空気」が宿っており、それ自体が懐かしさや温かさを感じさせるのだと語りました。

南こうせつが語る、昭和のスーパースターたちの存在感

南こうせつは、今回の番組を「思い出をたどっていった時間」だったと振り返ります。 番組冒頭から取り上げられる石原裕次郎美空ひばりといった昭和のスターたちは、南にとっても子どもの頃からあこがれ、そして同じ時代を生きてきた“象徴”のような存在でした。

裕次郎のダンディズム、美空ひばりの圧倒的な歌唱力とカリスマ性。それらは単に音楽の世界にとどまらず、日本人の生活や価値観、そして時代のムードそのものを形作ってきました。南は、そうしたスターたちの姿を振り返りながら、自身もまた昭和のフォークシーンの只中で歌い続けてきた一人として、深い感慨をにじませています。

インタビューの中では、高見沢が「こうせつさんとアルフィーの間にはジェネレーションギャップがある」と冗談めかして語る一幕もありました。昭和20年代前半生まれと後半生まれで、微妙に見てきた風景が違う、という軽妙なやりとりに、南は「どうして一緒にしてくれない」と笑いながら応じ、世代をまたいだ友情の温かさを感じさせる場面となりました。

加山雄三、吉田拓郎…時代を変えたスターたちとの記憶

番組とインタビューでは、南こうせつとTHE ALFEEの2人にとって大きな存在である加山雄三、そして吉田拓郎の名前も、何度も登場します。

加山雄三について、高見沢は「やっぱり加山雄三さんは大きい」と語り、その存在感の大きさを強調します。 加山のデビュー50周年を記念して結成されたユニット「ザ・ヤンチャーズ」には、高見沢、さだまさし、森山良子、谷村新司といった豪華メンバーが参加しており、その活動は今も鮮烈な記憶として残っているといいます。 坂崎もまた、リハーサルから一切手を抜かない加山の姿勢に触れ、「2時間のステージなら2時間、すべて本気でリハをする」と、そのプロフェッショナリズムに心からの敬意を表しています。

また、フォークの歴史を語る上で欠かせない吉田拓郎については、3人ともに「時代を変えたスター」「時代を変えた張本人」と表現し、その影響力の大きさをあらためて語りました。 2022年に音楽活動の引退を表明した拓郎ですが、南と坂崎は「拓郎の“金輪際”は信用できない」と笑いながら、「きっとまたどこかで歌うはずだ」と、友人としての期待と愛情をにじませます。

南は、「拓郎は音楽が好きだし、まだまだ元気」だと述べ、完全な別れを信じていないと話しています。 長年ともに音楽界を歩んできたからこそ言える、少し照れくさく、しかし温かなメッセージだと言えるでしょう。

令和の時代における「スター性」と音楽の“入口”

インタビューでは、時代が令和へと移り変わった今、どのようなアーティストにスター性を感じるかという話題にも及びました。 高見沢は、「やっぱり売れている人にはスター性を感じる」と語り、常に新しい才能が古いものを乗り越えていく世界だからこそ、「今いちばん売れている人が、いちばん輝いている」と話しています。 この意見に対し、南も「その通りだね。やっぱり新しいものの輝きはすごい」と賛同しました。

同時に、3人は「自分たちの名を後世に残したいか?」という質問にも率直に答えています。 南は「全然ない」、高見沢も「ないですね」、坂崎も「意識したこともない」と、3人とも口をそろえて「名を残すこと」を目標にしてこなかったと話しました。 南は「自分が楽しいこと、今何ができるかだけを考えてきた」とし、「名が残るかどうかは、自分たちではなく“運命”が決めること」と静かに言葉を添えています。

一方で、現代ならではの変化として、高見沢は「YouTubeなどに若い頃から今の自分まで、すでに映像がたくさん残っている」ことを指摘し、「これ以上あえて“全盛期”を残す必要はない」と語ります。 昔のように、限られた映像しか残らなかった時代とは違い、インターネット上には膨大なライブ映像やテレビ出演時の動画が、すでに“アーカイブ”として存在しているというわけです。

また坂崎は、そうしたネット時代の特徴として「お笑いトリオだと思って見ていた人が、『歌も歌うんだ』と興味を持ってくれる」ケースが増えていることを明かします。 バラエティ番組やネット上の「面白い」切り抜き動画からアルフィーを知り、そこから音楽にハマっていく若い世代も少なくないといいます。 南も「アルフィーに『面白い』から入る人もいるんだ」と笑いつつ、時代とともに変化する“音楽への入口”を興味深く受け止めていました。

南こうせつとTHE ALFEE、世代を超えた“仲間”として

今回の番組とインタビューで際立っているのは、南こうせつとTHE ALFEEの深い信頼関係です。明治学院大学の先輩・後輩という縁もありつつ、長年ライブやイベントで共演を重ねてきた3人は、互いを“気心の知れた仲間”として見ていることが伝わってきます。

高見沢は、「こうせつさんの顔を見るとほっとする」と語り、「また一緒に音楽をやりましょう」とインタビューの最後を締めくくりました。 そこには、競い合うライバルとしてではなく、同じ時代を歌で駆け抜けてきた同志同士の、揺るぎない友情が感じられます。

南自身も、すでに70代となった今、「残りの人生は楽しく過ごすことだけを考えている」と話し、名誉や評価ではなく、自分と周囲が笑顔でいられる時間を大切にしたいという思いを率直に語っています。 それは同時に、半世紀以上音楽に向き合ってきたからこそたどり着いた、ひとつの境地とも言えるでしょう。

「あの年この歌」だからこそ味わえる、歌とスターの“生命力”

今回の特番について、高見沢は「これまでは曲とその時代背景を語ることが多かったが、今回は“スター”そのものにスポットを当てている」と説明します。 昭和、平成という大きな時間の流れの中で、その時代を象徴するスターたちがどのように登場し、どのように人々の心をつかんできたのか。その足跡をたどることで、視聴者それぞれの記憶も自然と呼び起こされていきます。

番組には、荻野目洋子ヒャダインといったゲストも参加し、世代ごとに異なる「スター観」や「ヒット曲の思い出」を語り合っています。 それによって、単なる懐古ではなく、昭和・平成・令和をつなぐ“音楽の時間旅行”のような雰囲気が生まれていました。

南こうせつは、「ときどきこういう番組があると楽しいね」と笑顔でコメントし、坂崎は冗談交じりに「僕は以下同文で」と締めくくっています。 しかしその言葉の裏には、歌と映像が持つアーカイブとしての力、そしてそれを共有できる場が、今の時代においてますます貴重になっているという実感がにじんでいるようにも感じられます。

昭和のフォークから始まり、平成のポップス、令和の多様な音楽シーンへとつながる大きな流れの中で、南こうせつTHE ALFEEの2人は、今もなお「歌の力」を信じ続けています。「歌は記憶と時代を甦らせる」という高見沢の言葉の通り、一曲一曲が、それぞれの時代に生きた人々の人生と感情を静かに照らし続けているのです。

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