ドラゴンボールテーマパーク論争再燃――サウジ計画に込められた期待と懸念

サウジアラビアで発表された“世界初のドラゴンボールテーマパーク”とは

2024年春、サウジアラビアのリヤド郊外「キディヤ・シティ」にて、世界初の『ドラゴンボール』テーマパーク建設計画が公式発表されました。公共投資基金(PIF)の子会社Qiddiya Investment Company(QIC)と東映アニメーションが長期的な戦略的パートナーシップを締結し、壮大なプロジェクトが始動。
テーマパークの敷地は50万平方メートル超(約東京ドーム10個分以上)に及び、「カメハウス」「カプセルコーポレーション」「ビルスの星」など、作中の名所を忠実に再現する計画が進行しています。
30以上のアトラクション、5つの大型ライド、さらにはパーク中央には全高約70メートルの神龍を設置。神龍はジェットコースターと一体化したランドマークとして、来場者がその内部を通り抜けられるという驚きのアイデアも発表されています。

  • 7つのエリア:作品ごとの世界観を再現したゾーン構成
  • ホテル・レストラン:1日中楽しめる複合施設として計画
  • ナイトショー:神龍を描く壮大な演出も予定

さらに、ドラゴンボール公式サイトでも「孫悟空たちとともに作品世界を冒険できる体験」として、ファンのみならず初めてドラゴンボールに触れる人々も楽しめる施設になることが強調されています。

プロジェクト推進の背景――サウジアラビアの国家戦略「ビジョン2030」とエンタメ政策

今回のドラゴンボールテーマパーク建設は、サウジアラビアの国家戦略「ビジョン2030」の一環です。原油依存からの脱却を掲げる同政策は、観光・エンタメ分野への積極投資による多角化を目的としています。キディヤ・シティ自体が“遊びに特化した大型都市”で、2030年までに最大1000万人の観光客誘致を目標とした「ギガプロジェクト」の象徴的存在です。

日本アニメの人気とグローバルな知名度を利用し、サウジアラビアが新しい観光・エンタメ産業の中心都市を目指すという国家的な意思も、ドラゴンボールテーマパークの誕生に大きく関わっています。

賛否高まるテーマパーク計画――元編集者・鳥嶋和彦氏の反論と論争の背景

テーマパーク発表後、日本国内でも大きな話題となりましたが、その一方で論争も再燃しています。特に「ドラゴンボール」元担当編集者である鳥嶋和彦氏がネット記事などを通じて「読者置き去りのビジネス」と苦言を呈したことが、議論の火種となっています。

  • 鳥嶋氏の主張:
    長年ジャンプ編集長として漫画界を牽引した鳥嶋氏は「物語と読者の絆を軽視し、巨大なビジネスに主眼を置いたテーマパーク事業は本来のドラゴンボールらしさから逸脱している」と指摘。また「企画段階でクリエイターや読者の声も十分に反映されるべき」との考えを表明しています。
  • ネット上の議論:
    SNSや一部業界メディアでも、「本当にファンのための施設なのか」「グローバルエンタメ化による原作の希薄化」など、多様な意見が交錯しています。
  • 賛成派:
    「グローバル展開こそが作品の命を伸ばし、多くの人を笑顔にする」「新しい世代がドラゴンボールを知るきっかけになる」「サウジアラビアがクリエイティブ産業で世界をリードする一歩」など、期待の声も多く寄せられています。

これに対し、東映アニメーションやサウジ側の公式リリースでは「世界中のファンに平等に作品世界を体験できる場ができる意義」と「日本のクリエイティブ産業発信力の強化」を強調。鳥嶋氏自身も編集者として「原作の精神」が守られることへの期待と、不安の両面を語っています。

ドラゴンボールパーク建設がもたらす多様な影響とグローバル展開の意味

今回のプロジェクトは、ドラゴンボールだけでなく、日本カルチャーとグローバルビジネスの“接点”として歴史的な意味を持ちます。パーク来場者や投資規模の増加は、日本のクリエイティブ産業や観光・サービス業、関連技術への波及効果も見込まれており、以下のような変化が期待されています。

  • 日本アニメの国際的なブランディング強化や市場拡大
  • 現地の雇用創出とインフラ整備
  • サウジアラビアの“未来都市”構想を牽引する新たな観光資源
  • ファンコミュニティの国際化とクロスカルチャー体験の進化

一方で、文化的アイコンの商業化によるジレンマ、原作の哲学や物語性の希薄化への懸念もぬぐえません。こうした議論は、ドラゴンボールという「みんなの物語」をどのように守り、新しく伝えていくかという大きな問いを社会にも突きつけています。

パーク完成・公開時期と今後の行方

パークの完成時期については、「2030年オープン予定」が目安ですが、最終的な完成は2035年ごろまでに及ぶ可能性も報じられています。投資額やオープン日等の詳細は未公表ですが、世界中から注目が集まり、事前予約や周辺都市の観光インフラにも大きな変化がもたらされる見通しです。

  • 初期段階から国内外の企業・旅行業界も参入を始めており、公開前のプレイベントや現地ツアーの動きも活発化
  • 大阪・関西万博やリヤド万博など国際イベントとの相乗効果も期待されています

今、改めて“ドラゴンボール”とは何か――原作者たちからファンへ

世代や国境を超えた人気の背後には、「ドラゴンボール」が描いてきた仲間との絆や冒険心、努力と成長といった普遍的なテーマがあります。パーク計画を巡る論争は、単なる商品展開に留まらず、「みんなの物語」をどのように未来へ伝えていくかという問いにつながっています。

鳥嶋氏をはじめ、原作者・関係者の思いは「ビジネス化」一辺倒ではなく、「ファンと作品のつながり、その感動や記憶を守り活かすべきだ」という情熱に根差しています。サウジアラビアで生まれる新たな“冒険の舞台”は、商業の枠を超えて、世界が共有できる感動と体験を届けられるか――その行方に、多くのファンが注目を続けています。

まとめ――国境を超えて育つ「みんなのドラゴンボール」

サウジアラビアのドラゴンボールテーマパーク誕生計画は、国家プロジェクト・グローバルビジネス・ファンの思い・クリエイターの哲学が交錯する一大イベントです。
論争も含め、世界でドラゴンボールが「みんなの物語」としてどのように受け入れられていくのか、その姿を私たちは見つめていく必要があるでしょう。

参考元