井上和、「乃木坂46のオールナイトニッポン」3代目パーソナリティ就任 緊張と決意の“初回放送”に密着

人気アイドルグループ・乃木坂46の5期生・井上和さんが、ニッポン放送「乃木坂46のオールナイトニッポン」(以下「乃木坂ANN」)の3代目パーソナリティとして初回放送を迎えました。先輩である久保史緒里さんの卒業回を見届けた直後ということもあり、スタジオには大きなプレッシャーと、それ以上の期待が入り混じった独特の空気が流れていました。

番組冒頭から井上さんは、「どうしよう、手の震えが止まらない」と率直に打ち明けるほどの緊張ぶり。それでも一つひとつ言葉を選びながら、自分の声で2時間の生放送を走り抜けようとする姿は、リスナーに新しい時代の幕開けを感じさせるものでした。

久保史緒里の“卒業回”を回顧 「来るのが怖かった」胸の内

今回の就任にあたって避けて通れないのが、先代パーソナリティ・久保史緒里さんの存在です。久保さんは約3年9カ月にわたり「乃木坂ANN」を担当し、野球トークや深夜ならではの赤裸々な語りで、多くのリスナーから愛される“深夜の居場所”を作り上げてきました。

そんな久保さんの卒業回は、ファンにとってもメンバーにとっても特別な放送回でしたが、井上さんにとっては「来るのが怖かった」ほど重みのある時間だったといいます。尊敬する先輩が築いた番組の歴史を目の当たりにしながら、「この場所を引き継ぐのは自分なのだ」と実感せざるを得ない、嬉しさと不安が入り混じる瞬間だったのでしょう。

卒業回を振り返るトークでは、久保さんへの感謝や、これまでリスナーとして聴いていた番組への愛情が、ゆっくりとかみしめるような言葉で語られました。単なる引き継ぎではなく、「大切なバトン」を受け取ったのだという空気が、放送全体から伝わってきます。

「どうしよう、手の震えが止まらない」 初回放送で見せた素顔

3代目パーソナリティとして迎えた初回放送のオープニングで、井上さんは「カフ上げました。しゃべります」と少しぎこちない第一声を発しました。スタジオのマイクのスイッチである“カフ”を自分の手で操作しながら話し始めるという、ラジオならではの生々しい光景が、音を通してリスナーにも伝わります。

続けて思わずこぼれたのが、「どうしよう、手の震えが止まらない。これ流れているんですよね?」という言葉。全国のネット局に自分の声がリアルタイムで流れているという事実を前に、普段クールな印象のある井上さんが、年相応の等身大の姿を見せる場面となりました。

しかしその一方で、「しゃべるのは結構好き」と語り、「赤裸々にいろんなことを話していけたら」と前向きな決意も表明。緊張を抱えつつも、自分の言葉でリスナーと向き合おうとする姿勢が、放送開始数分のうちからはっきりと浮かび上がっていました。

「初回で終わる」最悪の事態も想像 それでもマイクの前に立つ理由

今回の就任にあたって、井上さんはネガティブな想像もしていたと明かしています。それが、「初回で終わる」という、パーソナリティにとっては何よりも恐ろしい“最悪の事態”でした。

ラジオ番組の新パーソナリティに抜擢されるということは、期待の裏返しとして大きなプレッシャーも付きまといます。「もしつまらなかったらどうしよう」「自分のトークで2時間持つのだろうか」と、不安を数え上げればきりがありません。それでも井上さんは、「絶対にそうならないように、しっかりと2時間話していきます」と、放送の中で強く言い切りました。

その言葉どおり、初回放送では、自己紹介から自身のルーツ、乃木坂46としての活動、さらには趣味の話まで、さまざまなトピックを丁寧につなぎながら番組を進行。緊張しながらも、「この時間を守りたい」という強い覚悟が感じられる内容となりました。

“野球の話をしない女の子”宣言 久保イズムとの違いも率直に

番組開始から数分が経ったところで、井上さんは「ここまで聴いていて、『いつも水曜日に聴いていた女の子の声と違う』『野球の話をしないな』と思った方もいるかもしれません」と、リスナーの心の声を代弁するような一言を添えました。

これはもちろん、長く「野球トーク」で親しまれてきた久保さんのスタイルを意識したもの。自分は野球に詳しいわけではないけれど、「分からないなりに、今夏の甲子園決勝を見て泣いた」というエピソードも紹介しつつ、「これから野球ファンになりたい」と、少し照れながら宣言しました。

こうしたトークからは、「前任者と同じことをしようと無理をするのではなく、自分らしく番組に向き合いたい」という井上さんのスタンスが伝わってきます。同時に、久保さんが築いた“野球とともにある乃木坂ANN”の歴史を大切にしながら、自分なりの色を重ねていこうとする真摯さも感じられました。

自己紹介で見せた“等身大の20歳” リスナーに届けたメッセージ

初回放送では、改めて自分自身を知ってもらうためのロング自己紹介の時間も設けられました。名前の由来について、「昭和の『和』、令和の『和』で『なぎ』と読みます」と説明しつつ、自身が平成生まれ・横浜出身の20歳であることも紹介しています。

さらに、「成人式を終えたばかり」「来年には21歳になる」といった、人生の節目にいることも明かされました。そのうえで、「年配の方は、娘さんや孫のように大目に見てくれたらうれしい」と、少し甘えるような、しかしどこかユーモラスなメッセージも添えられました。

この自己紹介パートは、10代から大人まで幅広い層が聴いている「オールナイトニッポン」という番組の特性を意識したものでもあります。若さゆえの拙さを自覚しつつ、だからこそ成長していく過程を一緒に見守ってほしいという、井上さんらしい素直なお願いが込められていました。

高校時代の弓道部エピソードと横浜トーク 日常の“素の姿”も披露

番組中盤では、高校時代の弓道部での思い出や、地元・横浜でのエピソードもたっぷり語られました。部活動で培った集中力や礼儀作法、的に向き合う静かな時間などが、今のパフォーマンスやラジオでの落ち着いた話し方につながっている部分も感じられます。

また、横浜にまつわる話題では、学生時代に友人と歩いた場所や、お気に入りの景色、街の雰囲気など、ファンにも少しだけプライベートが垣間見えるトークが披露されました。「乃木坂46の井上和」ではなく、「どこにでもいる一人の女の子」としての素顔が見えることで、リスナーとの距離もぐっと縮まった印象です。

こうしたパーソナルな話題は、深夜ラジオならではの親密さを象徴するもの。これから回数を重ねるごとに、さらにいろいろな一面が語られていくのではないかと期待させる内容となりました。

新コーナー「二次元喫茶店<おいてけぼり>」始動 『ユーリ!!! on ICE』を熱弁

初回放送でもう一つ大きな話題となったのが、新コーナー「二次元喫茶店<おいてけぼり>」のスタートです。ここでは、井上さんが大好きなマンガやアニメについて、時間を忘れて語りつくすスタイルが取られています。

記念すべき初回のテーマに選ばれたのが、フィギュアスケートを題材にした人気アニメ『ユーリ!!! on ICE』。作品の魅力やお気に入りのキャラクター、印象的なシーンなどを、思わず早口になってしまうほど熱量たっぷりに語る姿は、“オタクな一面”をそのまま出した、非常に微笑ましい場面でした。

タイトルに「<おいてけぼり>」とあるように、専門用語やマニアックな話もあえて止めずにしゃべり切ることで、「分からない人は分からないなりに楽しんでね」というスタンスも感じられます。自分の“好き”を隠さず発信することで、新たなリスナー層を巻き込んでいく可能性も十分にありそうです。

3代目パーソナリティ就任の背景 なぜ井上和だったのか

「乃木坂46のオールナイトニッポン」は、これまで新内眞衣さん久保史緒里さんと、グループ内でもトーク力や表現力に長けたメンバーがバトンをつないできた番組です。その3代目に井上さんが選ばれたことは、乃木坂46の未来を見据えた大きなメッセージといえるでしょう。

デビュー当初からフロントメンバーとして注目され、ビジュアル面だけでなく表現力の高さでも評価されてきた井上さん。ステージでのしなやかなパフォーマンスや、真っ直ぐなまなざしに加え、番組やインタビューでの落ち着いた受け答えも印象的でした。今回の就任は、そうしたこれまでの活動の積み重ねが評価された結果とも考えられます。

さらに、5期生としては比較的早い段階で、単独ラジオの看板を任されることになったことで、「次世代エース」としての期待がよりいっそう高まる形となりました。深夜ラジオというじっくり向き合える表現の場を得たことで、アイドルとして、そして一人の表現者としての新たな一面が引き出されていきそうです。

「乃木坂ANN」新時代へ リスナーとともに育つ番組に

久保史緒里さんが3年9カ月かけて築いた「乃木坂ANN」の空気感は、深夜ラジオファンにとってかけがえのないものでした。その後を受け継ぐ形でスタートした井上和さんの「乃木坂ANN」は、決して同じものをなぞるのではなく、“3代目の色”を少しずつ見せ始めています。

初回放送では、緊張に揺れる声、時折こぼれる弱音、そしてそれを上書きするような前向きな宣言が、2時間の中にぎゅっと詰め込まれていました。完璧ではないけれど、一つひとつの言葉に誠実さが宿っていることこそが、新しいパーソナリティの最大の魅力といえるかもしれません。

「乃木坂46のオールナイトニッポン」は、これからも毎週水曜日の深夜、リスナーとともに時間を重ねていきます。3代目パーソナリティ・井上和さんが、どのように番組とともに成長し、自分だけの“深夜の居場所”を作り上げていくのか。これからの放送にも、ますます注目が集まりそうです。

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