ホロライブ「魔法少女ホロウィッチ!」完結と天音かなた卒業――ファンを揺らす発表とカバー株価急落の背景
VTuberグループ「ホロライブ」を運営するカバー株式会社が展開してきたメディアミックスプロジェクト「魔法少女ホロウィッチ!」が、公式漫画第23話の公開をもって完結することが発表されました。本プロジェクトは、ホロライブ所属タレントたちが魔法少女として活躍する世界観で、多くのファンに親しまれてきましたが、その物語が一区切りを迎えることになります。
同時期に、ホロライブ4期生の人気VTuber天音かなたさんが2025年12月27日をもってホロライブを卒業することを明らかにしており、この2つの発表はファンコミュニティに大きな衝撃を与えています。
「魔法少女ホロウィッチ!」とは? プロジェクトの歩み
「魔法少女ホロウィッチ!」は、ホロライブ所属タレントをモチーフとした魔法少女企画で、配信やイラスト、グッズ展開、そして公式漫画など、いわゆるメディアミックス形式で展開されてきたプロジェクトです。ホロライブならではのキャラクター性と世界観が組み合わさり、ライブ配信とはまた違った物語を楽しめるコンテンツとして人気を集めてきました。
今回、カバーはこの「魔法少女ホロウィッチ!」について、2026年1月14日に公開予定の公式漫画第23話をもって完結すると発表しました。運営チーム一同からも「これまで応援してくださった皆さまへの感謝」と「最後まで楽しんでほしい」というメッセージが寄せられており、ファンにとっては寂しさと同時に、物語の結末を見届ける期待が高まっています。
プロジェクト完結の理由について、現時点で公表されている範囲では、具体的な事情や内部の判断について詳細は語られていません。しかし、ホロライブ全体として新たな企画や3Dライブ、海外展開など多方面に事業が広がる中で、一つの大型プロジェクトが物語として「区切り」を迎えることは、コンテンツの整理や新展開へのステップと見ることもできます。
天音かなた卒業発表 6周年の日にホロライブを去る決断
天音かなたさんは、ホロライブ4期生として2019年12月27日にデビューしたVTuberで、歌唱力の高さや明るいキャラクター、他メンバーとのコラボ配信などを通して多くのファンに愛されてきました。 その彼女が、デビューからちょうど6周年となる2025年12月27日をもってホロライブ卒業という節目を迎えることになりました。
カバー公式サイトのお知らせでは、卒業日や今後の配信スケジュール、グッズやボイスの販売などについて案内されており、「これまでの貢献に深く感謝するとともに、今後の活躍を応援する」という趣旨のメッセージが添えられています。 公式ショップでも、天音かなたさん関連商品の取り扱いについて、卒業に伴う案内が別途掲載されています。
天音かなたさん本人は、SNSや配信を通して卒業の報告と心境をファンに直接伝えています。YouTubeコミュニティでの投稿でも、「2025年12月27日をもちまして、ホロライブを卒業します」とあらためて報告し、これまでの応援への感謝と、最後まで見届けてほしいという想いを語っています。
卒業理由に語られた「業務外タスク」と負荷の集中
今回の卒業にあたり、天音かなたさんはその理由について、かなり具体的な説明を行っています。報道によると、卒業理由として挙げられたのは、次のようなポイントです。
- 「当初想定された領域を大きく超える業務外のタスクが何度も発生したこと」
- 「その結果、自分の活動が回らないほど負荷が集中する期間が続いたこと」
- 「仕事の負荷による心身の状態から、活動の継続が難しいと感じるようになったこと」
これらの言葉からは、配信活動以外にもさまざまな仕事が重なり、その負担が心身に影響を与えていたことがうかがえます。VTuber業界全体が拡大する中で、イベント出演、コラボ企画、広告案件、海外向けの活動など、タレントに求められる業務は年々増え続けています。 ファンの間では以前から「多忙すぎるのでは」「休む時間はあるのか」といった声が上がっていましたが、今回の卒業理由の説明により、改めて労働環境や業務の適正配分が大きな課題として浮かび上がっています。
一部では「真面目で優しい天音かなたさんが、断りきれずに仕事を抱え込みすぎたのでは」といった憶測も出ましたが、本人は配信の中で、納得できない業務には「おかしいでしょって言えます」「僕、断ります」とはっきり主張してきたことを明かし、そうしたイメージをきっぱりと否定しています。 そのうえで、組織としてのルールや体制の中での葛藤があったことにも言及しており、大規模な事務所だからこその難しさがにじみ出る内容となりました。
「相談できない孤独」 NDAと情報管理の厳格さ
天音かなたさんは、卒業発表後の配信において、ホロライブでの活動に関わる秘密保持契約(NDA)の厳格さについても言及しています。 特に印象的だったのは、「活動の進退や卒業に関することを、他メンバーに相談することが難しい」という点です。
その理由として、もし卒業をめぐる相談内容が広がった場合、「共犯」と見なされてしまったり、内部情報の漏えいにつながるリスクがあることを挙げています。 また、卒業を控えたメンバーの様子から「誰かが卒業する」と察した人が、外部へリークする可能性があることにも触れ、「リーク問題」がタレントや運営にとって大きな不安要因になっている現状が語られました。
さらに、卒業グッズの制作に関して、自身のキャラクターデザインを担当するイラストレーター(通称「ママ」)に依頼する際でさえ、「卒業するから」という本当の理由を伝えるために、情報解禁ギリギリまで慎重な調整が必要だったというエピソードも明かしています。 ここからも、情報管理が徹底されている一方で、当人にとっては誰にも本音を打ち明けにくい孤独さが生まれやすい環境であることがうかがえます。
天音かなたさんは、そうした状況を踏まえつつも、「悲しむタレントを見たくない」「キャパオーバーによる孤立などはなくなってほしい」と、今後の体制改善への願いを言葉にしています。 このメッセージは、単に個人の卒業にとどまらず、ホロライブ全体、ひいてはVTuber業界の働き方を見直すきっかけとして、多くのファンの心に届いています。
カバー株価が急落 今年の最高値から「半分以下」に
天音かなたさんの卒業発表は、ファンコミュニティだけでなく、株式市場にも大きな影響を与えました。ホロライブプロダクションを運営するカバー株式会社の株価は、2025年12月3日に急落したと報じられています。
報道によると、前日終値1,580円だった株価は、天音かなたさんの卒業発表翌日に1,504円を記録。 これは、同社株が今年2月に記録した最高値3,420円と比較すると、半分以下の水準となっています。 卒業発表以降の株価推移を見ると、「タレントの卒業や活動終了のニュース」と「株価変動」が密接に関連している状況が続いており、市場がタレントの在籍状況を非常に重視していることがうかがえます。
実際、今年4月には、YouTubeチャンネル登録者数世界1位として知られるホロライブEN所属の「がうる・ぐら」さんに卒業の噂が出た際、カバー株が一時的に約10%急落したことも報じられています。 このように、同社株は人気タレントの動向や卒業情報に敏感に反応する傾向があり、今回の天音かなたさん卒業も、その一因と見られています。
また、カバーが公表している「2026年3月期第2四半期 決算資料」においても、「タレント数の減少・VTuberの脱退による売上影響」についての質疑応答が取り上げられており、投資家からもタレント離脱リスクへの関心が高まっていることが分かります。 人気タレントを多数抱えるホロライブの強みは、そのまま「卒業・脱退が続いた場合の不安材料」にもなり得るため、今後の人材マネジメントや体制づくりが、事業面・株価面の両方で重要なテーマとなりそうです。
ホロライブとカバーが向き合うべき「次のステージ」
2025年は、ホロライブにとって卒業や活動終了のニュースが相次いだ年でもあります。 天音かなたさんの前にも、沙花叉クロヱさん、紫咲シオンさん、火威青さん、湊あくあさんなど、人気メンバーが卒業や事務所との契約終了を発表しており、ファンの間では「今年は別れが多すぎる」といった声も少なくありません。
VTuber業界全体が拡大し、多様なプロジェクトや外部コラボ、海外展開が進む一方で、タレント一人ひとりにかかる負担は確実に増えています。 今回明らかになった「当初想定を超える業務外タスク」「情報管理の厳格さゆえの孤独」「タレント数減少への市場の不安」といった要素は、どれも今後の業界運営にとって避けては通れない重要なテーマです。
一方で、ファンからは「卒業するメンバーを責めたいわけではない」「カバー会社への一方的な批判だけでなく、改善につながる形で声を届けたい」といった、冷静かつ建設的な意見も多く見られます。 天音かなたさん自身も、卒業をもって運営や他メンバーを否定するのではなく、「今後、同じようなキャパオーバーで苦しむ人が出ないようにしてほしい」という願いを語っており、その姿勢に共感するコメントが数多く寄せられています。
「魔法少女ホロウィッチ!」の完結、天音かなたさんの卒業、そして株価急落という市場からのメッセージ。これらは別々のニュースでありながら、ホロライブおよびカバー株式会社が、次のステージに進むために向き合うべき課題を象徴している出来事とも言えます。
ファンにとっては、長く親しまれてきたプロジェクトやタレントとの別れは、どうしても寂しさが伴うものです。それでも、多くの人が願っているのは、「関わるすべての人が健康で笑顔でいられる形で、楽しいコンテンツが続いていくこと」でしょう。 天音かなたさんが残した言葉と、「魔法少女ホロウィッチ!」が紡いできた物語は、これからのホロライブの在り方を考えるうえで、ファンと運営の双方にとって大切な指針となりそうです。


