朝ドラ「ばけばけ」ヘブンの元妻マーサ役に注目集まる ハーバード卒・日本語堪能の才女ミーシャ・ブルックスとは

NHK連続テレビ小説「ばけばけ」で、レフカダ・ヘブンの“元妻”として登場したマーサ役に、今大きな注目が集まっています。

第53回で描かれたヘブンのアメリカ時代の回想シーンに登場したマーサは、物語上もヘブンの人生を語るうえで欠かせない重要人物。そのマーサを演じているのが、ハーバード大学の機械工学科を卒業し、日本語も堪能な女優ミーシャ・ブルックス(Meisha Brooks)です。

制作陣も「才女」と絶賛する異色のキャリアの持ち主は、どのような人物なのでしょうか。また、ドラマの中で描かれたヘブンとマーサの関係、そして離婚の背景とは——。ここではニュースで話題になっているポイントを、やさしく整理してお伝えします。

「ばけばけ」とは?ヘブンとトキが生きる物語の舞台

まずは、マーサが登場するドラマ「ばけばけ」について、簡単に振り返ってみましょう。

「ばけばけ」は、NHKの連続テレビ小説第113作として放送されている作品です。舞台は明治時代の松江。没落士族の娘・松野トキと、外国人教師のレフカダ・ヘブンが出会い、心を通わせていく物語です。

物語では、日本が一気に西洋化へと向かう時代の中で、歴史からこぼれ落ちてしまいそうな人々の思いや、「怪談」に託された心の機微が描かれます。ヘブンのモデルは、作家小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)であり、彼の人生のエピソードも、物語の随所に色濃く投影されています。

そんな「ばけばけ」で、第53回から明かされたのが、ヘブンがアメリカ時代に黒人女性マーサと結婚していたという過去です。このエピソードが登場したことで、ヘブンという人物像に新たな奥行きが加わり、同時にマーサ役の女優にも関心が集まることになりました。

マーサ役は誰?ボストン出身の女優ミーシャ・ブルックス

ヘブンのアメリカ時代の妻・マーサを演じているのは、アメリカ・ボストン出身の女優ミーシャ・ブルックスさんです。日本国内ではまだ知る人ぞ知る存在でしたが、「ばけばけ」をきっかけに一気に名前が広がりました。

ミーシャさんは、黒人女性の俳優として、アメリカを拠点に国際的な作品にも出演してきました。ドラマ『Billions』などへの出演歴もあり、すでに海外では着実にキャリアを積んでいる実力派でもあります。

「ばけばけ」のマーサ役は、オーディションを経て選ばれました。制作統括の橋爪國臣氏によると、日本で活動する黒人女性俳優はまだ多くはなく、「日本で芝居がしたい」というアメリカの俳優を紹介してもらい、オーディションに参加してもらったことが起用のきっかけだったといいます。

橋爪氏は、ミーシャさんについて「お芝居の基礎も学ばれており、とても芝居力のある方」と語り、オーディションの時点でその表現力に強い手応えを感じていたことを明かしています。

ハーバード大機械工学科卒の「才女」 MITとの関わりも

ミーシャ・ブルックスさんが大きく注目された理由のひとつが、その驚くべき学歴です。

制作サイドのインタビューや各種メディアによると、ミーシャさんはハーバード大学・機械工学科の卒業生であり、「ハーバード卒の才女」と紹介されています。制作統括の橋爪氏も、「ハーバード大学の機械工学科を卒業した才女」と、その経歴をはっきりと語っています。

さらに、別の報道では、MIT(マサチューセッツ工科大学)との関わりにも触れられており、「ハーバード大学を卒業し、MITでも……」と、その理系エリートぶりが強調されています。細かな在籍形態や研究内容などは記事ごとに表現が異なりますが、「ハーバードで機械工学を学び、エンジニアとしての経験もある」という点でおおむね一致しています。

つまり、ミーシャさんは、もともとエンジニア出身という異色のバックグラウンドを持ちながら、そこから俳優業へと転身した人物なのです。理系の最難関と言われる分野から芸術の世界へ、という大きな方向転換は、多くの視聴者にとっても大きな驚きとなりました。

奈良への留学経験で日本語ペラペラに

ミーシャさんが「ばけばけ」に抜擢されたもう一つの大きな理由が、その日本語力です。

制作統括の橋爪氏によれば、ミーシャさんは過去に日本へ留学した経験があり、奈良県でホームステイをしていたとのことです。このときの経験から日本語をしっかりと学び、いまでは共演しているヘブン役のトミー・バストウさんよりも日本語が堪能だとまで評されています。

実際、「日本語が堪能な黒人女性俳優」という点は、制作サイドにとってもキャスティング上の大きな決め手になったとされています。台詞だけでなく、日本的な感情表現や間合いを理解できる点でも、高く評価されているようです。

また、ミーシャさんは、お芝居の基礎も専門的に学んでおり、エンジニア×俳優×バイリンガルという、非常にユニークな組み合わせを持つ俳優でもあります。こうしたバックグラウンドが、マーサという複雑な役どころに立体感を与えていると言えるでしょう。

第53回で描かれた「ヘブンとマーサ」の結婚と別れ

つづいて、話題の中心となっている第53回のストーリーを整理してみましょう。

この回では、ヘブンが自身の過去の結婚歴を初めて打ち明ける場面が描かれました。きっかけとなるのは、県知事の娘・江藤リヨが、ヘブンにプロポーズをするという出来事です。

リヨの気持ちを知り、トキはなぜか落ち着かない様子になります。その一方で、快気祝いのパーティーの場では、リヨがついにヘブンへ想いを告げるシーンが展開されます。その場で返事を求められたヘブンは、答えを出す前に、自分の過去——アメリカ・オハイオ州での出来事を語り始めます。

そこで明かされたのが、ヘブンがかつて黒人女性マーサと出会い、愛し、結婚していたという事実です。舞台は1800年代後半のオハイオ州シンシナティ。新聞記者として働いていたヘブンは、肌の色が異なるマーサと心を通わせ、やがて夫婦となります。

回想シーンでは、マーサの優しく品のある風貌、そしてそんな彼女を見つめるヘブンの穏やかな眼差しが印象的に描かれています。二人の出会いから結婚に至るまでの過程は、決して派手ではないものの、静かな幸福と深い愛情に満ちたものとして表現され、視聴者の心を強く打ちました。

なぜヘブンとマーサは離婚したのか

多くの視聴者が気になったのは、「なぜヘブンはマーサと離婚することになったのか」という点です。

作中で描かれるヘブンのアメリカ時代のエピソードは、彼のモデルである小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の実際の人生とも深く結びついています。ハーンは、アメリカ滞在中に黒人のルーツを持つ女性と結婚していたとされ、当時のオハイオ州では異人種間の結婚が法的に認められていなかったため、大きな社会的圧力や差別と向き合わざるを得ませんでした。

その結果、ハーンは新聞社を解雇されるなどの困難に直面し、その後ニューオーリンズへ移ることになります。このような史実が、「ばけばけ」のヘブンとマーサの関係にも重ねられています。

ドラマ内でも、ヘブンとマーサの結婚は周囲からの理解を得られにくく、人種差別や社会的な障壁が二人の前に立ちはだかります。その中で、互いを思いやりながらも、やがて別々の道を歩まざるをえない葛藤が描かれていきます。

詳細な離婚の経緯やその後のマーサの人生については、今後の放送や補足解説で徐々に明かされていく部分もありますが、「ヘブンの心の中には、今もマーサという存在が深く刻まれている」ということが、第53回以降の描写からは強く伝わってきます。

その後も続くヘブンとマーサの“心のつながり”

物語の時間軸では、すでにヘブンとマーサは離婚し、ヘブンは日本・松江に渡っています。しかし、二人の関係は完全に途切れたわけではないという点も、「ばけばけ」では丁寧に描かれています。

ヘブンがリヨのプロポーズに向き合おうとするとき、彼の胸に真っ先によみがえったのは、マーサとの日々でした。それは、過去の結婚が「失敗」だったからではなく、今もなお大切な一部として心に残っているからこそです。

また、ヘブンが松江でトキや周囲の人々に見せる、差別に対する敏感さや、弱い立場の人々への深い共感といった姿勢も、アメリカ時代にマーサと共に経験した苦難があったからこそ育まれたものだと解釈できます。

マーサは、画面に登場する時間こそ決して長くはありませんが、ヘブンの人生観や価値観を形づくる重要な「土台」として存在していると言えるでしょう。その意味で、マーサは単なる“元妻”ではなく、「ばけばけ」という物語そのものに深みを与える、大切なキャラクターなのです。

史実とのつながり:小泉八雲の“最初の妻”とマーサ

「ばけばけ」の魅力のひとつは、フィクションでありながら、小泉八雲の史実を巧みに取り入れている点にあります。

小泉八雲は、ギリシャ生まれ・アイルランド育ちの新聞記者であり、のちに日本に渡って多くの怪談や随筆を残したことで知られています。そのアメリカ時代には、黒人女性(白人と黒人の混血女性)と結婚関係にあったとされる記録が残されています。

一方、「ばけばけ」に登場するマーサのモデルについては、公式には明言されていませんが、研究者やファンのあいだでは、ハーンの最初の妻とされる女性との共通点が指摘されています。物語の設定や時代背景、人種をめぐる状況など、重なる部分が多く、史実をベースにしたフィクションとして描かれている可能性が高いと見られています。

ドラマの中では、あくまでも「ヘブンとマーサ」の物語として展開されていますが、その背後には、実際の歴史に存在した人々の苦悩や愛情が静かに息づいているのです。

外国人キャストとしての存在感 トミー・バストウとの対比

「ばけばけ」では、ヘブン役のトミー・バストウさんをはじめ、複数の外国人キャストが物語を支えています。その中で、ミーシャ・ブルックスさんの存在は、とりわけ印象的です。

ヘブン役のトミーさんはイングランド出身で、日本語を熱心に学びながら役に臨んでいます。一方、ミーシャさんは奈良でのホームステイ経験もあり、すでに日常会話レベル以上の日本語力を身につけていると言われています。

制作統括の橋爪氏は、「日本語に関しては、トミーさんよりもミーシャさんの方が堪能」と語っており、日本語のセリフ回し微妙なニュアンスの理解においても、ミーシャさんが大きな武器を持っていることがうかがえます。

また、ミーシャさんは、黒人女性として日本のドラマに出演するという点でも、まだ前例の少ないポジションに立っています。その意味で、彼女の起用は、「ばけばけ」が掲げる多様性や国際性の象徴であると同時に、日本のドラマ界にとっても新たな一歩と言えるでしょう。

制作サイドが語るミーシャ・ブルックスの魅力

最後に、制作サイドが語るミーシャ・ブルックスさんの魅力を、いくつかのポイントに整理してみます。

  • ハーバード大学機械工学科卒の才女であり、理系出身のエンジニアという異色の経歴を持つ
  • 奈良県でのホームステイ経験を通じて日本語を習得し、日本文化への理解も深い
  • 芝居の基礎をしっかり学んだ俳優であり、国際的な作品にも出演してきた実績がある
  • 黒人女性俳優としての希少性と、複雑な役柄を繊細に表現できる演技力を兼ね備えている

制作統括の橋爪氏は、オーディションを振り返りながら、ミーシャさんを「とても芝居力のある方」と評しています。ヘブンの最初の妻・マーサという役どころは、出番こそ限定されるものの、物語全体の厚みを支える非常に重要なキャラクターです。その重責を託すに足る俳優として、ミーシャさんが選ばれたことが、制作陣のコメントからも伝わってきます。

今後の「ばけばけ」で注目したいポイント

第53回を境に、ヘブンの過去と心の傷が少しずつ明らかになったことで、物語は新たな局面を迎えています。

  • ヘブンがマーサとの結婚と別れを経て、どのように現在の価値観を形づくってきたのか
  • トキやリヨとの関係の中で、ヘブンが過去とどう向き合い、どのような選択をしていくのか
  • マーサとの記憶が、今後のストーリーにどのような形で影響を与え続けるのか

そして何より、ミーシャ・ブルックスさんが演じるマーサが、今後の回想やエピソードの中でどのように再び姿を見せるのかも、大きな見どころです。彼女の静かな強さと温かさは、ヘブンの物語だけでなく、「ばけばけ」という作品全体に、深いぬくもりと重層的な意味を与えています。

ハーバード卒のエンジニアから、日本語堪能な俳優として朝ドラの重要キャストへ——。ミーシャ・ブルックスさんの歩んできた道そのものが、まるでドラマのようです。「ばけばけ」をきっかけに、日本での活動の場もさらに広がっていくかもしれません。

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