NHK大河ドラマ「べらぼう」最終回、視聴率は9.5% 脚本・森下佳子作品の評価と課題
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」が12月14日に最終回を迎え、その視聴率と作品内容、そして脚本を手がけた森下佳子さんへの評価が大きな話題となっています。今回は、視聴率データとドラマの内容、出演者の反響、そして“初代蔦屋”こと蔦屋重三郎という人物像までを、やさしい言葉で丁寧に整理してお伝えします。
「べらぼう」最終回は世帯9.5% 期間平均も9.5%で歴代ワースト2位
ビデオリサーチの調べによると、2025年大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」最終回(第48回)の平均世帯視聴率は、関東地区で9.5%でした。個人視聴率は5.3%で、放送を通じて大きな数字の伸びは見られなかったものの、安定した推移だったことがうかがえます。
さらに、初回から最終回までの期間平均視聴率も世帯9.5%にとどまり、NHK大河ドラマ全体の歴代で見ると、2019年の「いだてん~東京オリムピック噺~」の8.2%に次ぐワースト2位の数字となりました。前作「光る君へ」の期間平均10.7%(個人6.2%)と比べても、1.2ポイント下回る結果です。
番組最高視聴率を記録したのは初回放送で、世帯12.6%、個人7.3%でした。初回に対する関心は高く、その後は一桁台後半から9%台前半で推移し、最後まで大きな浮き沈みなく終わった印象です。
視聴率が伸び悩んだ背景――テーマと作風の難しさ
「べらぼう」は、戦国武将や幕末の志士といった“王道の英雄”ではなく、18世紀後半から江戸の町で活躍した出版人蔦屋重三郎、通称“蔦重”の生涯を描いた作品です。同作は64作目の大河ドラマとして、江戸の出版文化、ポップカルチャーの源流ともいえる世界を真正面から取り上げました。
この大胆な題材選びと、華やかでどこか風変わりな人間ドラマ、それらを支えたのが脚本家森下佳子さんです。森下さんは、NHKドラマ10「大奥」などで知られ、複雑な歴史背景と心理描写を、エンターテインメントとしてまとめ上げる力に定評があります。今回の「べらぼう」でも、史実をベースにしながら、軽妙な会話と痛快な展開を織り込み、独自の大河世界を作り上げました。
しかし、視聴率という数字だけを見ると、挑戦的なテーマと作風が必ずしも“多くの層に広く届いた”とは言い難い面もあります。武将の合戦や政変を描く従来型の大河と比べると、出版業や絵草紙、浮世絵といった題材は、どうしても取っつきにくく感じる視聴者もいたと考えられます。また、江戸の町人文化に焦点を当てた作品は、人物関係や時代背景を理解するのに少し予備知識が必要になる側面もあります。
それでも、「べらぼう」には“視聴率では計れない魅力”があった、という声も多く聞かれました。SNS上では、最終回をはじめとして、粋で余韻のあるラストシーンなどが繰り返し話題となっています。
脚本・森下佳子が描いた「蔦重」の最期と余韻のあるラスト
最終回「蔦重栄華乃夢噺」では、再び店を開いた蔦重が、浮世絵師・写楽の作品を世に出し続け、さらに和学の分野にまで事業を広げるなど、精力的に本屋として活動する姿が描かれました。しかし、そんな中で蔦重は脚気に倒れ、体は衰弱していきます。
彼を支えるのは、妻のてい(橋本愛さん)、絵師の喜多川歌麿(染谷将太さん)、狂歌師の大田南畝(桐谷健太さん)、そして長年の仲間たちです。病に侵されながらも、蔦重は彼らとともに作品を作り続け、「書を以って世を耕す」という志を最後まで貫こうとします。
やがて蔦重は、不思議な夢を見ます。夢の中に現れたのは、巫女姿に化けた九郎助稲荷(綾瀬はるかさん)で、その存在から「死期」と「お迎えの合図」が“拍子木”であることを告げられます。自らの残り時間を悟った蔦重は、店の行く末について妻・ていと相談し、自分の残すものをしっかりと託していきます。
最期の場面では、屁踊りをする大勢の仲間に囲まれながら、蔦重は命の灯をゆっくりと手放していきます。悲壮感よりも、「笑い」と「祭り」のような賑やかさをまとった別れ方は、まさに森下佳子作品らしい、明るさと切なさが同居した演出と言えるでしょう。
また、物語のラストには、蔦重の過去の因縁や、“瀬川”というキーとなる人物をめぐる粋な見せ方もあり、SNSでは「名前も顔も出さないのが粋」「蔦重の表情だけで全部伝わる」「余白のある名シーンだった」といった感想が相次ぎました。はっきり言葉にしすぎない、視聴者の想像に委ねる終わり方は、賛否を呼びつつも、“大河として新しい余韻”として評価されています。
横浜流星と“妻”役の橋本愛、クランクアップの「夫婦ショット」に反響
主人公・蔦屋重三郎を演じたのは俳優の横浜流星さん。若くして江戸のメディア王と呼ばれるほどのやり手でありながら、仲間思いで、どこか不器用な情熱家でもある蔦重を、繊細さと力強さを併せ持った演技で体現しました。
撮影のクランクアップでは、横浜さんがドラマの中で“妻”となるてい役の橋本愛さんと並んだオフショットが公開され、「愛情たっぷりな素敵なご夫婦」といった声が寄せられ、大きな反響を呼びました。二人が支え合いながら長い撮影期間を走り抜けてきた空気感が写真からも伝わり、「作品からにじみ出ていた夫婦の絆は、現場の信頼関係そのものだったのだろう」と感じる視聴者も多かったようです。
ドラマの中では、蔦重が度重なる挑戦と失敗を繰り返し、そのたびに店や家計は危機に瀕します。そんな状況でも、ていは夫を責めるよりも、現実的な感覚と温かさで支え続ける存在として描かれました。この関係性は、「破天荒な夢追い人」と「地に足のついたパートナー」という形で、多くの視聴者の共感を集めました。
「誰も“初代蔦屋”を超えられなかった」蔦屋重三郎という人物
ドラマのモチーフとなった蔦屋重三郎は、現代にも名を残す“蔦屋”ブランドの原点ともいえる人物で、48歳でこの世を去ったとされています。その死の直前、蔦重が誰を後継者に選んだのか、そしてなぜ「誰も初代を超えられなかった」と言われるのか――こうした視点も、今あらためて注目されています。
史実としての蔦屋重三郎は、単に本を売るだけの商人ではなく、時代の文化や流行を読み取り、新しいコンテンツを積極的に世に送り出した“プロデューサー”のような存在でした。喜多川歌麿や東洲斎写楽といった、今なお世界的に知られる絵師たちの才能を世に出した功績も大きく、その編集・企画センスは「江戸のメディア王」と呼ばれるにふさわしいものです。
ドラマ「べらぼう」でも、この側面が丁寧に描かれました。蔦重は、単に売れそうなものを並べるのではなく、世の中の空気や庶民の欲求を敏感に嗅ぎ取り、「誰も見たことのない面白さ」をかたちにしていきます。その姿は現代のクリエイターや編集者にも重なる部分が大きく、「今の時代だからこそ響く大河だった」という感想も見られました。
一方で、「結局、誰も初代蔦屋を超えられなかった」という見方は、蔦重の死後、同じようなスケールで文化を動かす人物が出なかったことへの評価でもあります。後継者が誰であれ、“初代”という存在の大きさと、時代との幸福な巡り合わせを再現することは難しかったのでしょう。
だからこそ、森下佳子さんは「べらぼう」の中で、蔦重を“唯一無二の夢追い人”として描きつつも、最後には彼の思いを仲間たちに託し、「人は死んでも、志は残る」という形で物語を締めくくりました。この構図は、視聴率の良し悪しとは別に、多くの視聴者の記憶に残るラストとも言えます。
視聴率ワースト2位でも「記憶に残る大河」になり得るか
数字としてはワースト2位という厳しい結果になった「べらぼう」ですが、その意欲的な題材と、森下佳子さんによる緻密な脚本、横浜流星さんをはじめとする俳優陣の熱演により、「通好みの大河」「あとから再評価されるタイプの作品」という評価も少なくありません。
近年の大河ドラマは、配信や見逃しサービスの普及により、「リアルタイムの視聴率だけで作品の価値を測るのは難しい」とも言われています。特に「べらぼう」のように、江戸文化や出版の世界を描いた作品は、歴史に興味を持つ学生や、クリエイティブ業界の人々など、特定の層に長く愛されていく可能性もあります。
また、森下佳子さんは「大奥」に続き、歴史ドラマを通して現代社会の問題意識を描き出す姿勢が高く評価されている脚本家です。「べらぼう」でも、身分や性別、貧富の差といった壁を越えて、才能ある者に機会を与え、共に新しい文化を作っていこうとする蔦重の姿が、メッセージとして物語の芯に据えられていました。
視聴率の数字は一つの指標ですが、それだけで語り尽くせない魅力があるのもまた事実です。「べらぼう」は、「初代蔦屋重三郎」の生きざまを通じて、今を生きる私たちに“何を残して生きるのか”を問いかける大河ドラマでした。その問いは、放送が終わったあとも、静かに視聴者の心に残り続けていきそうです。



