映画「国宝」、日本映画界を揺るがす大ヒット――新たな伝統と革新の物語

はじめに

2025年、邦画界に衝撃と感動をもたらした作品が映画「国宝」です。
本作は伝統芸能である歌舞伎を題材とし、監督・李相日氏、そして吉沢亮・横浜流星ら豪華キャストが演じあげる壮大な人間ドラマが、老若男女を問わず観客の心を揺さぶっています。その影響力は興行収入110億円超、歴代邦画実写2位という記録にも現れており、まさに今年を代表する社会現象となりました。

話題の中心:映画「国宝」とは

原作は吉田修一氏の小説「国宝」。少年時代から歌舞伎の道に身を投じる2人の青年と周囲の人々の人生模様が描かれています。
監督は「悪人」「怒り」など数々の名作を手掛けてきた李相日氏。脚本は奥寺佐渡子氏が担当し、3時間にも及ぶ上映時間で繊細な人間関係と重厚な物語を丁寧に紡ぎ出しました。

大ヒットの理由――伝統×現代、世代を超えた共感

  • 歌舞伎ファンからの圧倒的な支持

    本作は、伝統芸能・歌舞伎の世界へ肉薄したリアリティと芸術性が核心。これまで映画館をあまり訪れなかった年配層の歌舞伎ファンが“震源地”となり、口コミで話題が拡散。若い世代にも新鮮な文化体験として受け入れられており、世代横断的な「歌舞伎ブーム」を巻き起こしています。
  • 圧倒的なキャスト・演技

    主演の吉沢亮、横浜流星をはじめ、渡辺謙や田中泯、森七菜ら実力派が集結。俳優陣は1年以上にわたる歌舞伎稽古を積み、所作や台詞回しに本物の風格をまとわせました。
  • エンターテインメント性と芸術性の両立

    人間国宝となる東一郎(吉沢亮)と半弥(横浜流星)、その師弟や家族、時代の荒波が描かれるストーリーは、単なる伝統芸能映画の枠を超えた“普遍的な成長と葛藤の物語”。「芸術への限りない情熱」や「嫉妬」「友情」「裏切り」「継承」といったテーマは、観る者への強い共感と感動を呼びました。

映画「国宝」への評価と各界の反響

  • 三谷幸喜氏(脚本家・監督)による絶賛

    2025年8月23日放送のTBS「情報7daysニュースキャスター」で三谷幸喜氏は「やっぱり素晴らしい」「面白かった」と絶賛。その上で「上映時間が短すぎる」と独自の視点を示し、「原作にはもっと面白いエピソードがたくさんある」「続編を是非!」と制作陣にエールを送りました。安住アナウンサーも思わず「すごい着地ww」と番組内で笑顔を見せています。

  • 観客の声

    SNSや映画レビューでは「映画自体が国宝かと」「映像化に感銘」「役者の成長譚に胸を打たれた」など、絶賛の声が相次ぎました。また、「歌舞伎という伝統芸能への敬意と、新しい表現の挑戦が両立している」と、新旧の価値観の融合を評価する声も目立ちます。

  • 興行的成功

    1週目は3億4600万円と控えめな滑り出しでしたが、2週目以降に口コミとリピーター効果で急上昇。公開13日間で15億円、17日間で21億円、最終的には110億円を突破し、実写邦画の歴代2位に登り詰めています。
    これは1983年の「南極物語」を抜いての快挙です。

歌舞伎映画化への挑戦――監督と俳優陣の舞台裏

歌舞伎の所作や精神性を現代映画で映像化する苦労は想像を絶するものがありました。特に、吉沢亮・横浜流星は1年以上に渡る実地稽古に励み、歌舞伎役者の所作・台詞・呼吸を徹底的に自分のものとしたことで、原作読者や伝統芸能ファンからも高く評価されています。

監督・李相日氏は「人間の継承と孤独、師弟の愛憎、時代と伝統の関わり」を軸に、3時間の中で壮大な物語の核心を抽出。脚本の奥寺佐渡子氏は、原作の膨大なエピソードを“削りに削る”編集作業に相当苦労したと語っています。

物語のあらすじ

あらすじは、歌舞伎役者・半次郎(渡辺謙)に預けられた喜久雄(少年時代:黒川想矢)が、半次郎の実子・俊介(越山敬達)と共に歌舞伎の世界に没頭していくことから始まります。
青年となった彼らは東一郎(吉沢亮)、半弥(横浜流星)を名乗り、「二人道成寺」で一躍人気の東半コンビとなりますが、過酷な舞台裏、師弟関係、家族にまつわる秘密、そして競演をきっかけに起こる失踪事件など、栄光と苦悩が交錯していきます。

作品テーマと時代性――“芸術は守り、攻め、継承せよ”

  • 芸術の継承と革新

    本作は「伝統を守る誇り」と「時代とともに進化する必要性」――その両方を等しく描いています。旧来型の興行・タニマチや、現代的な多様性社会への適応、芸術家の孤高と連帯といった課題を、リアルに、そして深く掘り下げました。
  • 普遍的な人間ドラマ

    栄光の舞台の裏で交錯する友情・嫉妬・裏切り・師弟愛など、映画ならではのカットや構成を通して描いた人間模様が、世代や文化背景を問わず強く支持されています。

今後の展望と社会的影響

映画「国宝」の大ヒットは、日本映画界に新たなモチベーションをもたらしただけでなく、伝統芸能の魅力再発見や、“本質的なエンターテインメント”追求への問いかけとしても一石を投じました。
三谷幸喜氏が語った「続編」や「未映像化エピソード」への期待も高まる中、今後ますます歌舞伎、そして日本の伝統文化が現代社会にどう受け継がれていくのか、多くの観客がその行方を見守ることになるでしょう。

おわりに

映画「国宝」は、まさに「国宝」の名に恥じない圧倒的な情熱とクオリティ、多層的な人間ドラマで観る者を魅了し続けています。伝統と革新、孤独と連帯、栄光と挫折――その全てが、美しい映像と演技に昇華された本作は、今後の日本映画、そして伝統芸能の未来を切り拓く「新たな伝説」となりました。

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