進撃の巨人と日本マンガIP戦略の現在 - IMART2025基調講演と最新動向レポート
はじめに:国内外で続く『進撃の巨人』旋風
近年、世界中で大きな反響を呼んできた『進撃の巨人』。そのアニメ最終シーズン放映後も、その影響力は拡大し続けています。2025年11月にはアニメやマンガ産業に関わる多くの関係者が集う国際カンファレンス「IMART2025」が開催され、ここでも『進撃の巨人』の話題は中心の一つとなりました。本記事では、最新ニュースとイベント、さらに講演で語られた「IP(知的財産)戦略」の現場から、今の「進撃の巨人」関連ビジネスの実像に迫ります。
IMART2025基調講演:「赤字見込み」だったアニメ化の裏側
2025年11月12日に開催された「IMART2025」では、講談社ライツ担当取締役の角田真敏氏、グッドスマイルカンパニー代表取締役社長の岩佐厳太郎氏、講談社ライツ・メディアビジネス本部の伊藤洋平氏らが登壇し、「マンガIPのこれまでとこれから」を語りました。その中で一際注目されたのが、「アニメ『進撃の巨人』は赤字見込みでスタートした」という事実です。
角田氏によれば、『進撃の巨人』は原作コミックスが飛び抜けてヒットした一方、アニメ化の際は大きな制作費に対し、当初は黒字が見込みづらい状況だったとのこと。ただし、そのリスクを冒してでもメディアミックス展開に踏み切った結果、アニメ版の成功がグッズや海外展開など多方面でのヒットに繋がり、結果的に巨大なビジネスへと発展したのです。
- 講談社:『進撃の巨人』などのヒットも、アニメ化時には大胆な投資が必要だった。
- グッドスマイルカンパニー:フィギュアなどの物販を通じてIP価値を高める手法が語られた。
このエピソードは、「今や当たり前」と思われる大ヒットIPでも、最初から確実な成功が約束されているわけではないことを物語っています。
『進撃の巨人』グッズ展開と海外戦略の深化
『進撃の巨人』は連載終了後も、その世界観とキャラクター性によるグッズ展開や海外市場での人気が続いています。企業タイアップやオンラインくじ、フィギュア商品化など、幅広い戦略が語られました。
- アニメイトなど専門店を活用したイベントやグッズ販売
- 海外出版や現地のイベント出展によるグローバルなファン獲得
- 著名企業とのコラボキャンペーン・限定商品化による新規顧客開拓
講演では「フィギュア等の物販戦略が、IP全体の価値向上に寄与する」という視点が特に強調されました。グッドスマイルカンパニーの岩佐氏からは、フィギュアを通じたファンとの双方向的な関係づくり、そして国際市場でのチャレンジについて言及がありました。これにより、マンガやTVアニメの枠を超えて、世界的コンテンツへと成長したのです。
最新イベントと販売動向:「初回比2倍」への挑戦
2025年11月20日には、『進撃の巨人』の関連新イベントがスタート。主催者発表によると開催初日から盛況を博しており、前回イベントの初回売上のおよそ2倍を目指すプロジェクトとして注目を集めています。
- 会場には原作コミックスの歴代表紙展示や、大型フィギュアのフォトスポットを設置。
- グッズコーナーでは限定の新商品が即完売するなどファン心理を刺激。
- オンライン連動企画も展開され、海外ファンからの参加も急増中。
運営側は「グローバルファン層への訴求なくして、今後のIP展開は成り立たない」とし、もはや国内外の壁は低くなったとしています。リアルイベントとオンラインとの両軸展開が新たな収益モデルになる点が強調されました。
キャラ福くじONLINE:ファン参加型ビジネスの広がり
もう一つの新たな話題は、キャラ福くじONLINEでの「進撃の巨人」発売開始です。オンラインで気軽に参加できる福引は、デジタル時代ならではのファンコミュニケーションの在り方として新しい注目を集めています。リアルイベントだけでなく、ネット上でキャラクターグッズが楽しめる仕組みとして、家族や若年層からも支持を拡大しています。
- 「はずれなし」で楽しめる豪華賞品ラインナップが好評。
- 複数回引くファンが続出するなど、熱狂的な盛り上がり。
- オンライン販売ゆえに、日本全国・海外からも気軽に参加可能。
このように、リアルとオンラインが融合した販売・プロモーション戦略は「進撃の巨人」IPの新たな生命線となりつつあります。
IMART2025が示すマンガ産業の未来展望
基調講演では「IPマーケットのグローバル化」と「企業連携による市場拡大」が繰り返し語られました。すなわち、日本マンガ・アニメの人気は、もはや国境を超えた現象であり、出版社や商品化企業、イベント主催者すべてが世界基準で戦略を調整しているのです。
まとめると――
- 『進撃の巨人』の大成功も、はじめは慎重な投資とリスクで始まっていた。
- アニメ化によるヒットで、「グッズ」「イベント」「オンライン」を含めた多方面への展開が加速。
- 世界的なファン層拡大により、持続・発展する日本IPビジネスの好例となっている。
今後も『進撃の巨人』のような強力なIPが、どのようなビジネスモデルを創出し、どのようなグローバル展開・ファン体験を実現していくのか、IMART2025で語られた知見は多くの業界人・ファンにとって非常に重要なヒントとなりました。進撃の巨人現象――それは今もなお、国内外のコンテンツ界を牽引し続けているのです。



