第83回ゴールデングローブ賞ノミネーション発表 映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』が躍進、『ホワイト・ロータス』はテレビ部門を席巻
映画賞シーズンの幕開けを告げる第83回ゴールデングローブ賞(2026年)のノミネーションが発表され、映画・テレビの両部門で“意外”と“順当”が入り混じる結果となりました。特に映画部門では『ワン・バトル・アフター・アナザー』が最多クラスのノミネートを獲得し、テレビ部門では『ホワイト・ロータス』がキャスト陣の演技賞を中心に存在感を示しています。
一方で、注目作『ウィキッド 永遠の約束(原題:Wicked: For Good)』は主要部門の一部を逃す“スナブ(冷遇)”として話題に。 こうしたサプライズと波乱をめぐり、今年のゴールデングローブ賞は早くも大きな注目を集めています。
映画部門:『ワン・バトル・アフター・アナザー』が主役級の躍進
映画部門でひときわ目立つのが、レオナルド・ディカプリオ主演の『ワン・バトル・アフター・アナザー』です。作品賞(ミュージカル/コメディ部門)をはじめ、主演・助演の演技部門など多くのカテゴリーで名前が挙がり、今季賞レースの本命候補として一気に浮上しました。
演技部門では、
- レオナルド・ディカプリオ(主演男優賞候補)
- ベニシオ・デル・トロ(助演男優賞候補)
- ショーン・ペン(助演男優賞候補)
- チェイス・インフィニティ(ミュージカル/コメディ主演女優賞候補)
といった顔ぶれが並び、作品としてもキャストとしても高い評価を獲得していることがうかがえます。
また、全体のノミネート数の集計でも、『ワン・バトル・アフター・アナザー』は9ノミネートというトップクラスの数字を記録し、作品賞レースだけでなく技術・演技の両面で存在感を発揮しています。
『フランケンシュタイン』『ウィキッド 永遠の約束』など有力作が続々候補入り
『ワン・バトル・アフター・アナザー』に続く形で、
- 『フランケンシュタイン』
- 『ウィキッド 永遠の約束』
といった話題作も5ノミネートを獲得し、作品賞から演技賞まで幅広く候補入りしています。
『フランケンシュタイン』では、主演男優賞(ドラマ部門)にオスカー・アイザックが名を連ね、 物語性と演技力が両立した“賞向き”の作品として期待されています。一方、『ウィキッド 永遠の約束』は、
- シンシア・エリヴォ(主演女優賞候補)
- アリアナ・グランデ(助演女優賞候補)
など音楽映画らしい華やかなキャスティングが評価されました。
さらに、
- 『It Was Just an Accident』(4ノミネート)
- 『Bugonia』(3ノミネート)
- 『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』(3ノミネート)
- 『しあわせな選択』(3ノミネート)
- 『The Secret Agent』(3ノミネート)
など、中堅クラスの作品も満遍なく候補に挙がり、今年の映画部門は作品の多様性が際立つラインナップとなっています。
インディペンデント系のNEON作品が躍進
今季の特徴として見逃せないのが、インディペンデント系配給会社NEONの台頭です。『It Was Just an Accident』『The Secret Agent』『センチメンタル・バリュー』『しあわせな選択』など、複数の作品が主要部門に食い込んでいます。
中でも、
- 『センチメンタル・バリュー』では、エル・ファニングやインガ・イブスドッテル・リッレオースが助演女優賞にノミネート。
- 『しあわせな選択』では、イ・ビョンホンが演技賞候補入り。
と、若手からベテランまで幅広い俳優陣が評価されています。NEONは近年、オスカーや各国映画祭でも存在感を増しており、今回のゴールデングローブでその流れがさらに加速した形です。
日本勢・アニメーションも健闘
日本からは、アニメーション作品『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』が長編アニメーション部門でノミネートされました。 世界的な人気シリーズとして、アカデミー賞への足がかりとなるかにも注目が集まります。
また、アニメーション部門では『ズートピア2』などディズニー作品も候補入りし、大手スタジオと日本アニメの対決という構図も見どころです。
テレビ部門:『ホワイト・ロータス』が演技賞を席巻
テレビ部門では、近年話題を集めているシリーズ『ホワイト・ロータス』が重要な役割を果たしました。キャスト陣が演技賞部門で多数ノミネートされており、
- ウォルトン・ゴギンズ(リミテッド・シリーズ/テレビ映画部門・男優賞候補)
- ジェイソン・アイザックス(同部門候補)
- パーカー・ポージー(助演女優賞候補)
- エイミー・ルー・ウッド(助演女優賞候補)
と、多方向から評価されています。皮肉とブラックユーモアを交えた群像劇スタイルが、依然として高い人気と批評家からの支持を得ている形です。
そのほか、テレビ部門では、
- 『一流シェフのファミリーレストラン(The Bear)』のジェレミー・アレン・ホワイトが主演男優賞候補。
- 『セヴェランス』からはブリット・ローワーとトラメル・ティルマンがノミネート。
- 『ディプロマット』のケリ・ラッセルも主演女優賞候補として名を連ねています。
人気シリーズと新作がバランスよく並び、ストリーミング全盛時代の“群雄割拠”ぶりをそのまま反映した形となりました。
Netflix・ディズニーなど配信プラットフォームの強さ
配信プラットフォームの勢いは依然として強く、特にNetflixはテレビ部門だけで34ノミネートを獲得し、その存在感を改めて証明しました。
さらに、ディズニー傘下の配信サービスやテレビ作品も合計15部門でノミネートされており、 従来のテレビ局とストリーミングサービスとの境界がますます曖昧になっていることがわかります。
“スナブとサプライズ”:『ウィキッド 永遠の約束』が主要賞を逃す
今回のノミネーションで大きな話題となったのが、ミュージカル大作『ウィキッド 永遠の約束(Wicked: For Good)』の扱いです。作品としては複数部門にノミネートされ、
- シンシア・エリヴォが主演女優賞候補
- アリアナ・グランデが助演女優賞候補
と、キャストの評価は高いものの、期待されていた一部の主要部門(特に作品賞クラス)でのノミネートを逃したことが“スナブ”として報じられています。
公開前から話題を集めていた大作だけに、「思ったほどノミネーション数が伸びなかった」という見方もあり、視聴者やファンのあいだで様々な意見が交わされています。
その一方での“うれしい驚き”
一方、専門家の事前予想では“ダークホース”と見られていた作品が、想像以上の健闘を見せたケースもあります。
- インディペンデント系のNEON作品が、主要部門に複数食い込んだこと
- 日本アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』がアニメーション部門で候補入りしたこと
- テレビ部門で『ホワイト・ロータス』のキャスト陣が広く演技賞を席巻したこと
こうした“サプライズ”によって、ゴールデングローブ賞は単なる人気投票ではなく、批評性や多様性を重視する場であることが、改めて浮き彫りになりました。
今年のゴールデングローブが映し出す潮流
今回のノミネーション全体を眺めると、いくつかの大きな潮流が見えてきます。
- スタジオ映画とインディペンデント映画の共存
『ワン・バトル・アフター・アナザー』や『ウィキッド 永遠の約束』といった大作に加え、NEON作品や国際色豊かなキャストが並び、規模や予算にとらわれない評価が進んでいます。 - ストリーミング時代のドラマの多様化
『ホワイト・ロータス』『セヴェランス』『一流シェフのファミリーレストラン』『ディプロマット』など、多様なトーンとジャンルのドラマが同時に評価されており、視聴環境の変化が作品の方向性にも現れています。 - 国際色の強まり
日本の『鬼滅の刃』や韓国俳優イ・ビョンホンのノミネートなど、アジア勢の存在感も増しており、ゴールデングローブ賞が“ハリウッドの賞”から“グローバルな映像コンテンツの賞”へと変化しつつあることが感じられます。
授賞式に向けて:受賞の行方は?
今回のノミネーション発表を受けて、今後は映画批評家や業界メディアによる予想合戦が本格化していきます。
- 映画部門では『ワン・バトル・アフター・アナザー』が最有力候補として先頭を走る一方、 『フランケンシュタイン』や『ウィキッド 永遠の約束』がどこまで食い込むかが注目ポイントです。
- テレビ部門では『ホワイト・ロータス』が演技賞でどの程度受賞を重ねるのか、そして『セヴェランス』『一流シェフのファミリーレストラン』といった人気シリーズがどの部門を制するのかが焦点になります。
ゴールデングローブ賞は、アカデミー賞をはじめとするその後の映画賞レースの“前哨戦”としても位置づけられています。今回ノミネートされた作品や俳優たちが、ここからどのように勢いを伸ばしていくのか、今後の動向から目が離せません。


