ヨルシカが贈る“体験型文学”の新境地――書簡型小説『二人称』とは?

ヨルシカが2026年2月26日に発売する新作『二人称』は、現在大きな話題を集めている“書簡型小説”です。本作は、「封筒32通を一通ずつ開封しながら物語を読み進める」という、非常に新しい体験を提供してくれる作品として、出版・音楽業界のみならず幅広い層から注目されています

ヨルシカとn-bunaが生み出す“体験型文学”の世界

ヨルシカは「ウミユリ海底譚」や「メリュー」などで知られる音楽ユニット。その作詞・作曲を担うコンポーザーn-buna(ナブナ)が原案・執筆を手掛け、本作『二人称』を生み出しました。従来の小説や音楽作品とも異なる、まったく新しい「読書体験」へ挑戦しています。

  • 封筒32通、原稿用紙と便箋合わせて約170枚で構成
  • 読者は“詩を書く少年”と“文学を教える先生”の文通のやりとりを、実際に封筒を開封しながら追体験
  • 物語世界に没入し、文通を読むという身体的な体験が加わる
  • 講談社より刊行、330mm×330mmサイズの特装箱入りという特別仕様

物語の概要と“文通”という体験

『二人称』は、一通の手紙から始まります。詩を書く一人の少年が「先生」に宛てて自作の詩の添削を頼むところから、やがて二人の間で交わされるユニークで時には謎めいた文通が繰り広げられます

  • 先生は「君はこれから、途方もなく広い砂の海から、たった一粒の琥珀を見つけなければいけない」と語り、少年の詩作や人生を導く言葉を贈る
  • 手紙のやり取りを通じ、少年は徐々に自分や世界についての新たな視点を得ていく
  • しかし、手紙には「かすかな違和感」が潜み、二人の文通の先には思いもよらぬ真実が待ち受けている

読者は32通の封筒を一つずつ開封し、まるで自分自身が彼らの間に存在する“第三者”として、二人の内面や心の機微を追体験していくことになります。

なぜ“書簡型小説”なのか? 新たな読書体験の意義

通常の小説のようにページを順にめくるのではなく、実際に封筒を開封して一通ずつ読み進めることで、読者は能動的・体験的に物語と向き合います。このハンズオンな楽しみ方は、最近話題となった“謎解きブック”や“体験型ミステリー”の流れを受けつつ、より文学的・詩的な味わいを伴っています。

  • 封筒を開けるたびに感じるわくわくや緊張感、未知への期待感が、読書体験をより深く豊かに
  • 手紙文体ならではの親密さやリアリティが、登場人物の心情や時間の流れをより鮮やかに描き出す
  • 読者が“自分の手”で物理的に物語を進める――この“介在感”が、印刷物というメディアの持つ原初的な魅力を再発見させてくれる

ヨルシカの物語と音楽が交錯する“文学空間”

ヨルシカは、音楽作品でもしばしば“物語性”の強い楽曲やコンセプトアルバムを発表しています。今回の『二人称』は、それらで築いてきた物語世界詩的感性が、書籍という異なるメディアで結実したものといえます

  • ヨルシカらしい繊細な言葉選びや、現代性と普遍性が交錯する独自のテーマ性
  • “読む”ことでのみ発見できる音楽的なリズムや余白――まさに“文学を通したヨルシカ体験”
  • 作品世界への導入には、ティザー映像やYouTube動画も活用。音と物語の立体的な共鳴が味わえる

書簡型小説『二人称』の仕様と楽しみ方

商品は特別仕様となっており、手に取った瞬間からわくわくする文具箱のような外観も魅力です。セット内容や仕様は以下の通りです

  • 小封筒(32通)
  • 原稿用紙+便箋(計170枚程度)
  • 大封筒(1個)
  • 特装外箱(約315mm×315mmのスクエア型パッケージ)

このような“物語の開封”という体験は、従来の紙の本にはなかったユニークな価値を持ち、読む側の創造力や想像力を一層刺激します。一通の手紙を開き、そのたびに新たな謎や問い、感情と出会えるのは、本作ならではの醍醐味です。

ヨルシカを知らない人にも開かれた“物語”

『二人称』は、これまでヨルシカやn-bunaのファンだった方だけでなく、純粋に物語を楽しみたい全ての読者に向けて開かれています。文通というスタイルや詩的な表現を通じ、文学や音楽にあまり触れたことがなかった方にも、まったく新たな物語体験を届けてくれます

  • 現代の情報社会において希薄になりがちな“待つ時間”“手紙の温もり”を再発見
  • 読むことで、手紙を交わす当時の緊張感や距離感、そして言葉の力を実感
  • 読み終わった後も“心に残る手紙”になる、一生ものの読書体験へ

ヨルシカが切り拓く、これからの文学とメディアのかたち

『二人称』の発表は、単なる一冊の刊行ではありません。文学×体験×音楽という異分野の融合が、日本の出版業界・音楽業界双方にとって新たな地平を切り開く一歩となっています。
また、コロナ禍を経て“直接手に取る体験”や“リアルなコミュニケーション”の価値を再認識する中、手紙という非常に素朴で人間的なメディアが、現代的な物語として再発見されるきっかけになるかもしれません。

読み方も十人十色で、一気読みして謎解きを楽しむ人毎晩一通ずつ大切に味わう人など、その人なりのペースで物語を紐解くことができます。まさに“あなたの読書体験をあなた自身が創造できる文学”といえるでしょう。

まとめ

ヨルシカが書簡型小説『二人称』で目指したのは、受動的な読書から能動的な文学体験へという大胆な転換です。手紙を一通ずつ開き、“じぶんの手”で物語を進めることで、作品世界により深く浸ることができます。n-bunaをはじめとしたヨルシカの持つ音楽的感性詩的世界観が、文学という新たなフィールドでどのように展開されるのか、今後ますます目が離せません。

封筒を開封する“ドキドキ”と、二人の登場人物の想いに触れる“しみじみ”が重なる、まったく新しい“体験型文学”。これを機に、ぜひヨルシカの創り出す特別な物語空間を、じっくり味わってみてください。

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